見出し画像

愛着がもてるモノとウェブサイト、ロングライフデザイン

はて、愛着がもてるというのも大雑把な話だけど、愛着がもてるモノとそうでないものとの違いはなんだろうと考えていた。愛着がもてる。たとえば何気なく何年・何十年と使っていて馴染みがいいとか、一生懸命調べたりいろいろ比較してみたりして見つけたモノだとか?はたまた大切な人にもらった贈り物とか、誰かとのお揃い。たとえば僕は、学生の頃に「ずっと使うぞ」と思って買ったぺんてるのケリーのシャーペンとか、毎日触っているiPhone、最近また使い出したローライにも愛着を感じる。

なんとなく「時間」は愛着に関係がありそうだ。同じ時間を過ごせば過ごすほど愛着は深まっていく。逆に、誰かからもらったとかどうやって買ったとかは、考えてみると愛着とはちょっと違うかもしれない。あまり使われなかったとして、けれど大切に仕舞われているそれは、「大切なもの」とかに分類されるかもしれない。時間が大切ということは、長い時間使うに耐えるつくりをしているということでもある。毎日使うと1年で使えなくなってしまうというのは、愛着をもたれにくい。

あとはなんとなく「かたち」。手にしてみると持ちやすかったり、ついつい触ってしまう素材だったりして憎めない。定義はできないけど、愛着のあるかたちはなんとなくあると思う。

デジタルではあるけれど作る仕事をしている僕は、愛されるウェブサイトを作りたいとずっと思っている。いま考えた愛着のもてるモノに照らし合わせると、愛着のもてるウェブサイトは「技術の流行り廃りに流されないつくり」「なんとなく憎めないデザイン」あたりが考えられる。それは、なんか合っているような気がする。よく見ていたサイトがなくなってしまうのは寂しいし、チカチカしているサイトはあんまり見ようと思わない。

でも、ウェブサイトは自分の所有物ではないし、何より情報を伝えるものだ。そもそも愛着を感じてもらう必要もないけれど、いややはりそれを超えたいと思うのが人間の心だろう。ただ情報を伝えるだけの機械的なものではなくて、そこに情緒が必要だ。それだけは譲れない。

じゃあウェブサイトを見る人に情緒や愛着を感じてもらうにはどうすればいいだろう。僕はテキストが大事だと思う。しかも熱量のあるテキスト。デザインやつくりも必要だけど、毎回訪れてくれる人とのコミュニケーションを行うのはそこに書かれているテキストだ。何をどうコミュニケーションしたいのかがはっきりしていて、熱量があって、見る人にプラスの影響を与えるもの。そのようにテキストがデザインできていなければ、デザインがよくたってつくりがよくたって愛着も何もないような気がする。

僕はD&DEPARTMENTが掲げる「ロングライフデザイン」が好きで、こういうことを考え始めた。長く愛されるウェブサイトとはどんなものか。次から次へと生み出されていくウェブサイトやウェブページ。一時的にしか使われない広告的なものに命を削ったり、一生懸命作ったものが数年でなくなっちゃうなんて嫌だ。そもそもウェブサイトは人や事業に依るのだから変わることは仕方ない。でもその人や事業が長く続いていくために、少しだけ手を貸すことはできるだろうと思う。そういった願いを込めながらこれからの制作をしていきたいと、ほのかに思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?