垂水文弥「Dear my planet」 角川俳句賞2020
Dear my planet
久女忌の橋は飛び立ちたいのです
彗星の色の特急なれば凍つ
潮騒の染みついてゐる父の布団
春浅しチキンカレーの山吹色
多喜二忌の雪が市街を沈めてゆく
千客万来石鹸玉石鹸玉
客なくて客間もなくてヒヤシンス
風光るホルンの管の大彎曲
大試験美食のごとく紙置かれ
花影に入る遷化とはこんなもの
落第を姉に知られぬやうにする
野遊の子は太陽を父として
月光や溺るるごとく蝶まぐはふ
ふかぶかと蜂を宿して伯父の花
その中にせせらぎを