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あの空は

あの空は 茜色
ボルサリーノを 追いかけて
麦わらリボンと 喧嘩した
風のない 吹抜け天井
車とばして ヨコハマ
星が尾をひき 地平線に隠れるまで
うたかたの 泡のような夢をみた 



あの空は ベルベット
欺くように 着飾って
愛するものを 傷つけた
途切れた会話 鳴らない電話
鳴らさなかったのは わたしのほう
一方通行の 因果応報
その言葉が 嫌いになった
泣いてくれたら よかったのに
泣いていたのは わたしだった
泣いても貰えない 自分を知ってから
誰かのために 泣くことを知った
それが 救いになることもある 
誰かを傷つけたことにすら
気がつけないのかも知れないから
温かい涙くらい 持たせて欲しい
泣くことも 許されない拘束衣
たまには 泣きたいときもある
泣かせてあげたい ときもある
ひとり背負う覚悟は 生きること
だから 傷つけと言われたら
すべて 差しだし傷つこう



あの空は ミントキャンディ
宝箱が ひらいたときに
優しく溶ける まどろみのよう
そこにいると 金色の粉が降ってきて
ここではない どこかへと
わたしを ゆっくり拐ってゆく
ゆきたいところは ここではない
そう つぶやくと 
一瞬 強い風が吹いてきて
わたしを遠くへ 舞いあげる



あの空は 白い波
桜が はらはら舞いました
雪のような はなびらが
溶けることなく 降り積もる
彼と 一緒に見上げてた
二人だけの 春でした


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