譲れない、私の三角地帯
朝のラッシュ時。
争奪戦は、ホームに並ぶときから始まっている。
先頭に立つのはなんとなく嫌なので、誰かが立ったらすぐに2番目に並ぶ。
3番目や4番目では争奪戦に勝てないから、注意しなければならない。
やがて電車が到着する時間になり、ホームに入ってくる。
おっと、見逃すな!
あんこの鋭い視線が、車両の向こう側のドア付近を捉える。
座席側の壁とドア側の壁が交差する場所、そこが私の三角地帯。
角に体を預ければ、どんなに揺れても大丈夫。
立ったままでも居眠りできる聖域…。
そこは誰にも譲れない。
よし、今日は空いてるぞ。
チャンスだ。
まもなく電車が止まり、ドアが開く。
緊張の瞬間。
いや、焦るな!
降りる人が先だ。
最後の人が降りるのを見届けたら、さあ、あんこ、迷わず乗り込め!
わき目もふらず、三角地帯を目指すのだ!
ああっ、前の女子高生に取られるか!?
…いや、別の場所に行ってくれた。
ありがとよ、かわいこちゃん。
あんこ、すかさず三角地帯に収まる。
…ホッ…。
あんこを乗せた電車が、今日も動き出す。
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