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第四次ゴキブリ戦争

3月27日、そのときは突然訪れた。
魚をさばいたせいで若干生臭いと注意はしていたが、
この速度で来るとは。天気が悪かったせいもあるだろう。
朝、冷蔵庫のうしろにやつの姿を見つけた。

冷静に目を切らさずに距離を取り、身支度を整える。
戦闘準備もその間に同時進行していく。
スプレーよし。バブルよし。お湯よし。

冷蔵庫のまわりに空間を作りながら、静かにうしろへ回り込む。
そこに奴の姿はすでになかった。
いったいどこへ消えたのか。一瞬のすきに別の場所へ逃げたか。
冷蔵庫のうしろは囲まれており見ていれば気が付いたはずだ。
そもそも奴はおれの殺気を感じたのだろうか。
アホな政治家に見習ってもらいたい危機管理能力だ。

考えられるとしたら冷蔵庫の下か。
おれは冷蔵庫の周りにバブルトラップをまきながら、
冷蔵庫の下へスプレーを吹く。
冷蔵庫の位置をずらしながら奴が現れる瞬間を待つ。
しかしなんの音沙汰がない。奴はどこへ消えたのだ。

それなりに大きさがあった。壁つたいに行けばすぐに分かったはずだ。
たしかに100%見ていたわけではないが、奴が逃げる隙はなかったはずだ。
距離をあけてみても何も起きず。冷戦状態が続く。
おれにも出かける時間が迫っている。

他に気を散らす余裕はない。冷蔵庫の下に集中だ。
お湯を冷蔵庫の下へ流してみる。冷蔵庫を揺らしてみる。
最後の攻撃も不発に終わった。奴は姿を消し、粘り勝った。
負けじとバブルトラップを追加し、俺は家を出た。

奴はライバルと呼べる存在なのかもしれない。
わずかな殺気を読み取り、一瞬のうちに姿をくらました。
波状攻撃にも耐え、慌てることなく対処した。
こんな強敵は身近にはいない。

家に帰るとバブルトラップに絡まり、
息絶え絶えの奴の姿がそこにあった。
やはり冷蔵庫の下に潜んでいたのだろう。
トラップは消失していたから、
出かけて割と早いうちに出てきたのだろう。
奴の隙を盗む癖が裏目にでた瞬間だった。
この勝負は俺の勝ちだ。

いったいどれだけの時間苦しんだのだろう。
スプレーを一吹きし、完全に息の根を止めた。
もの寂しい気持ちとともに外へその亡骸を捨てる。
やはり奴は好敵手と書いて、ライバルと読むのだ。
次の戦いに向けて、スプレーを軽く空へ吹いた。

P.S. 今日ブラックキャップを買った。
    会いたくないライバルもいるもんだ。

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