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別れの記憶として残っている『ボヘミアン・ラプソディ』

素晴らしい映画には、不思議なくらいその映画を観た時の思い出が一緒に残っている。『ボヘミアン・ラプソディ』もその一つだ。

『ボヘミアン・ラプソディ』は、ブライアン・シンガー監督の2018年の作品で、イギリスのロックバンドQueenのボーカルであったフレディ・マーキュリーに焦点が当てられている。1970年のクイーン結成から1985年のチャリティコンサート「ライブエイド」までが描かれている。

フレディ・マーキュリーの音楽的才能、Queenの名曲誕生の瞬間など、音楽史に残る伝説的な出来事が再現されている。特に映画に収録されている「ライブエンド」は何度観ても鳥肌が立つ。

この『ボヘミアン・ラプソディ』、私の中では、別れの思い出として残っている。前のパートナーと最後に一緒に観た映画だからである。その時の記憶は鮮明に残っている。この映画を観る直前に喧嘩をしてしまい、全く会話がないまま映画館に向かい席についた。こんなに落ち込んだ気持ちで映画を観たのは、後にも先にもこの一度きりである。辛い気持ちで映画を観始めたが、すぐに映画の世界に引き込まれていった。所々で流れるQueenの名曲が、体の中を駆け巡り、染みわたっていくようであった。

映画の終盤、「ライブエンド」でのパフォーマンスは圧巻であった。フレディ・マーキュリーとQueenの魂が伝わってくる。自然と涙が溢れていた。心の底から感動した。

残念ながら映画が終わった後もパートナーとの会話はほとんどなかった。そしてしばらくして別々の道を歩むことになった。『ボヘミアン・ラプソディ』について語り合うことはなかった。パートナーはあの映画で、何を感じていたのだろうか。今となっては分からない。

映画を初めて観てから6年程が経ち、改めて『ボヘミアン・ラプソディ』を観た。やっぱりいい映画は何度観ても楽しい。Queenの曲は何度聴いても感動する。今回も「ライブエンド」のシーンでは涙が出てきた。映画を観終わって、ふと、一緒に映画を観た前のパートナーは元気だろうかという気持ちが湧いてきた。別々の道を歩むことになったが、元気で、幸せな人生を歩んでいてくれたらいいなと思う。別れの悲しみが、少しだけ和らいでいた。

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