報酬を2回に分けて支払ってもらったらお得?
【質問】
源泉徴収の必要がある報酬を支払ってもらう場合、1回に支払ってもらう報酬が100万円以下の場合は10.21%、100万円を超える場合には超えた分は20.42%の源泉徴収税額がかかると思います。
ということは、例えば120万円の報酬を支払ってもらう場合には、60万円ずつの請求書を2枚送った方が、源泉徴収税額が少なくなってお得になりますか?
【回答】
理論上は可能だと思いますが、お得になるわけではありません。
【理由】
所得税法や所得税法基本通達には、必要な源泉徴収税額を算定するに際して報酬が100万円を超えるかどうかについては…
原則として「1回に支払われるべき金額」で判断する
例外的に「現実に1回に支払われる金額」で判断してもOK
との旨が規定されています。
ではこの「1回に支払われるべき金額」とは何か…ということになりますが、、これは少し判断が難しいかと思うのですが、例えばこの120万円の報酬が、1つの契約に基づく1つの仕事の報酬であった場合、これは120万円が「1回に支払われるべき金額」となると考えられます。
ですので、その場合には120万円を60万円ずつ2枚の請求書に分けたとしても「1回に支払われるべき金額」は120万円のままですので、100万円を超える部分については源泉徴収税額を20.42%で計算する必要があると考えられます。
例外規定があるじゃないか!となると思いますが、そもそも例外規定は実務上簡便な処理を認めるというのが趣旨かと思いますので、意図的に請求書を2枚に分けて…というのは規定の趣旨を逸脱するもので、認められるかどうかは微妙でしょう。
一方で、この120万円の報酬が、例えば60万円ずつの別々の契約に基づく別々の仕事の納品がたまたま同じ月に重なった結果の場合には、「1回に支払われるべき金額」を60万円と考えて源泉徴収税額を10.21%で計算することになると考えられます。
最後に、お得かどうか…ですが、
仮に請求書を分けて60万円ずつ支払ってもらうことができたとします。その場合、源泉徴収税額は10.21%で計算されることになりますので、手取りが増えて確かにお得になるような気もします。が、結局最後は確定申告の際に調整されてしまいますので、請求書を分けても分けなくても最終の納税額は変わらず、どちらがお得!いうことはありません。