自治医科大学に入学する前に知っておいて欲しいこと

自治医大は僻地の医療を支える医師を養成するために設立された大学である。栃木県下野市に位置する大学であり、創立50年を超える。

昨今、地域枠や自治医大卒業生の卒業後のキャリア上のデメリット等について各種メディアやSNSで情報が拡散されているが、当記事では自治医大卒業生として中立的に事実を記載させていただく。

自治医大は各都道府県から2-3人が選抜され入学し、1学年およそ110-120人程度である。栃木県に位置するため、栃木県枠のみ5人程度と多い。
卒業後9年目まで出身県内の医師少数地域で働くことを条件(義務年限という)に、学費が免除される。
生活資金の貸与もあるが、これに関しては義務年限を全うしても返還義務がある。
もちろん防衛医大と違って給料はでない。つまり学費の免除のみである。



合格発表

合格者には各県庁担当者から電話連絡があり、その際に入学する意思があるかどうかを聞かれる。
年によっては合格者すべてが辞退し、繰り上げ合格ばかりとなる場合もある。

入学する意思がある場合には、国公立大学の前期日程と後期日程の日に県庁に行く必要がある。
→つまり国公立の受験ができないので、合否を待ってから入学するかどうかを決めることはできない。県庁の担当者がわざわざ休日に手続きを行ってくださるので、大変ありがたい。

18歳の高校生から国公立大学受験の機会を奪い、医師少数地域での勤務を約束させるのは酷と思われる。しかも国公立を受験できないことが、多くの場合受験者に広くは知らされていない(受験要項のホームページに入学手続日との項目で記載はあるが、国公立の試験日とは受験者側が気付く必要がある)。
ちなみに自治医大不合格者が国公立に合格することも多い。

修学資金の貸与

年額およそ400万円弱(授業料、実験実習費、施設設備費)の修学資金の貸与が行われる。
自治医大では貸与を受けた年数の1.5倍の期間を県知事の指定する医療機関で勤務することで修学資金の返還が免除される。
つまり留年せずに卒業した場合、9年間の義務年限となる。
留年した場合には、1回留年で10.5年、1回留年で12年の義務年限となる。

400万円×6年間で総額2400万円であるが、年率10%の利率がかかる。
もちろん知事指定の医療機関で勤務する場合には返済が免除されるが、契約破棄・離脱する場合には研修医修了時点で3500万円程度の返還義務が生じる。

防衛医大では途中離脱した場合に勤務した年月に応じて返済額が減額される。
しかしながら自治医大では途中離脱する場合には、むしろ多額の返済義務が生じる

そのため自治医大の義務を離脱する場合には、なるべく早い方が良い。
僻地勤務数年後に返済する場合には、さらに多額の返済義務が生じる。

修学資金を借りない選択肢はあるか

ここから先は

3,379字 / 2画像

¥ 1,000

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?