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修行時代の話。~外伝~

こんにちわ。
アマランサス店主の天野です。
いつも読んで頂いてる皆様におかれましては大変ありがとうございます。
お店や催事場で『note見てます』なんてお声がけ頂くお客様も増えまして承認欲求が爆上がりしております。
ただそう言う時にこそ何かが起こるものでして、調子に乗っていらん事書かないように気をつけようと気を引き締めつつ、嬉しい気持ちも大切にし、酒のツマミに昇華させて頂く事にいたします。

今日は、修行時代の話の~外伝~  おもしろい後輩の逃亡劇をお送り致します。
彼は自分が入った時、既に4年目だったので本当は先輩なのだけれども、何故かめっちゃ後輩でありまして(これの仕組みはわからないし、感覚的にも現実的にもそうなってしまったのでツッコミは差し控えて頂いて)、その職場を退職するまで9年間も働いたある意味傑物でございます。
とても不器用な彼の凄く可哀想なのに、とっても可笑しなお話をハートウォーミングに仕立てました。
長文駄文ではございますが、お時間ございます方は是非目を通して見て下さい。
それではどうぞ。


ある日、東京修行時代の後輩に忘れちゃったレシピを聞こうと電話をしたところ信じられないくらい晴れやかな声で

後『僕もそのレシピ忘れちゃったんですよね~』

天『どーしたん、なんか気分良さそうじゃん』

後『僕、いま伊豆にいるんですよ~』

天『おぉ~やっと逃げ切ったんだねーおめでとー!楽しくやってる?』

後『はい、すごく充実してます!』

やっと逃げ切った(?)かー、本当によかったなぁ。と、皆様にとっては『?』な感情を抱いたのですが、それには理由があります。

彼は9年間務めているものの、入社から4年目の間に3度の逃亡に失敗しており、私と共に働いているうちはその心はへし折られ、クソ安月給で朝の9時から深夜まで働かされ(まぁ料理人なんてこんなもんすけど)時には新品のCONVERSE ALLSTARで往復ビンタされながら壁に追い詰められたり、まるで江戸時代の拷問のようなスタイルで(手を後ろに縛られ正座。そのスネの下にはめん棒、膝の上には油の一斗缶が乗っかる状態)お説教をされていたり(何したらそんな事されるん。※私はされた事ありません)。と、今思い出して書いてたらおもろすぎて笑けて来ております。(今イベント出店中です。)

『石抱(いしだき)』という江戸時代の拷問

かくいう私も、毎日のように殴られる事に慣れるにつれて『これはなんとかならんもんか』などと対策を考え、ボクシングで良く使われる技術である『スリッピングアウェー』なる技術を名作少年漫画“はじめの一歩“で知り、試して日々研鑽を積むことで習得したものです。
※この技術を使っている事がバレて以降は壁に張り付けにされて殴られる事になりました。シェフも私も日々切磋琢磨してると言う話です。

スリッピングアウェー

話が逸れましたので戻りますと、そんな彼の逃亡がどの様な形で失敗していたのかを書き綴って参ります。


我々の働いていたお店は良く逃亡者が出るもので、その際はマネージャーが必ず自宅訪問をするのですが、大体の皆様は家ごとスッカラカンになって後を追えずじまいで終了が定番となっております。
ですが、ちょっとオツムの弱い彼は逃亡をキメ込むものの自宅に逃げ帰り居留守で事なきを得ようとしておりました。(家の電気つけんなよ)
逃亡者に対しての対応が百戦錬磨のマネージャーを前にそんなもの通用するわけがなく。
彼の住む小さなワンルームの玄関の郵便受けをそっと開けると『スーーーーー…』と何か吹き込みました。
はい、キンチョールです。
夏の蚊対策に使われるキンチョールって人にも使うのね。
1本使い切ったところではまだ彼も耐えておりましたが、2本、3本とマネージャー。
彼も観念?したようで、ゴホゴホと咳をしながら裏から逃げ出そうとしたところを先輩が確保。
そんなら完璧なコンビネーションを前に居留守程度で無事に逃げ切れる訳もなく。
マネ『帰るぞ。』
後『すいません。』
1度目失敗。やるなら本気でやれよな。

2度目は頭をちょっと使ったのか、家には居なかったそう
天『どこで捕まえたんですか?』
マネ『最寄りの駅にいたよ。いっちょ前に荷物まとめてやがった。』
彼は今回、事前に荷物をまとめ実家へ逃亡キメ込むことにしたようですが、マネージャー曰く『家に居なかったら駅行きゃ大体みつかるんだよね』だそうで、またもやマネージャーを上回れず敗退。これが2回目の失敗。

3回目はしっかりと実家まで逃げ切りましたがそこはマネージャー。彼の両親には何かある度に連絡や贈り物をしていたそうで実家まで出向き両親と彼を説得。そして3回目もしっかり失敗。
ここまで来ると結構可愛がられていたんじゃないかと思いましたがマネージャーの『可愛がる』と『可愛がり』をバランス良く行来する塩梅が絶妙だったのでしょう。
マネージャーの肝の座りっぷりにはいつも尊敬していたし、本当に勉強させて貰ってました。ちゃんと狂っているものの一本筋が通った考え方をなさっていて、経営者になって何か(マネージャーに比べれば小さな事ですが)問題が起こった時にはいつもあの姿勢を思い出して踏ん張っております。
そんなの傑物を相手に毎回部屋も引き払わずに逃亡してまんまと同じ部屋に戻される程度の覚悟ヤツに勝ち目なんて無いのです。やるならちゃんとやり切れよ。逃げる方にも覚悟と矜恃ってもんがあんだろ。

と、4回目の逃亡では絵に書いた夜逃げのように、しっかりと次の就職先も決め、家ももぬけの殻にし、仕事が終わった後にいつも通り帰宅しそのまま華麗に逃亡し成功。
まぁ、時間もないしお金もないだろうし、箱庭化されたお店の中で外部とのコミュニケーションを封じられたらなかなか難しいのかもしれないから、ちゃんと逃亡成功して安心した気持ちを抱いたのを覚えております。

人の逃亡劇ばかりですが、かくなる私も2度ほど逃亡をしておりまして、ざっくり書きますとこんな感じ。

1回目。
朝からずっと『お前みたいなやつ帰れ!やる気あんのか!』と、言われ続け帰る。
すぐに帰るとマネージャーが迎えにくるので、かねてから訪問をしたいと思っていた国会図書館へ。古のシャルキュトリーのレシピ本(絶版)を140ページあまりをカラーコピー後に、吉野家でご飯を済ませ自宅待機(鍵はあけたまま。マネージャー迎えに来るから)。マネージャー到着。
マネ『帰るぞ』
天『すんませんでした』
店に戻ると顔を真っ赤にしたシェフ。
めっちゃ怒ってんなぁ~と思いきやベロベロなだけ。一緒にたのしく酒を飲みました。

2回目。
怒涛のクリスマスが無事終了し(この時深夜3時)、次の日からは年末のギフトBOXの詰め作業で営業はお休み。片付けも終わり、帰ろうとするとシェフ登場『お前ら、なに勝手に帰ろうとしてんだ!』と、謎の激おこ(ベロベロ)。そこから何故かやらなくて良い仕込み風をやったり掃除風をやってみたりの茶番をくり広げる羽目に。
どーせ覚えてねぇんだろ、バカバカしいと帰宅。
翌日。普通に出勤。何事も無かったかのように始業。

と、自分の事もちゃんと晒しつつ、締めくくりのご挨拶に変えさせて頂きます。

みんなも辛かったら逃げて良いと思います。
逃げたとて世界線が変わるだけで、進んだ道の結果が良いものになるようまた励めば良いだけと思います。

以上、修行時代の話。~外伝~  でした。ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。
また何か思い出したら修行時代の話。シリーズを書こうと思います。
これから夏本番。アマランサスも忙しさ本番となっております。体調に気をつけ適度にサボりながらしっかりと駆け抜けようと思います。
皆様も体調に気をつけてクソ暑い日本の夏をやり過ごされますよう願っております。
おつかれっしたー。



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