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あの選択をしたから感謝が生まれる

僕はずっと疑問だった。

オリンピックの表彰台に登った人が一番最初に言うセリフ

「皆さんのおかげでこの表彰台に登ることができました!」

正直、建前だと思っていた。

いやいや、
「周りのおかげではなく、あなたが頑張ったんだろ?」
「あなたが血の滲むような努力をしたから表彰台に登れたんだよ」

これが当時18歳の僕の本音だった。


しかし、これがある出来事をきっかけに間違っていたという確信に変わる。


それは自衛隊に入って、4ヶ月の教育隊の課程を修了した時だった。


僕は海上自衛隊に入隊してパイロットになりたかった。

しかし、パイロットの試験は身体検査で引っかかってしまい不合格。

パイロットの道は絶たれたが、搭乗員(機内で任務を遂行する人)にはなりたいと思い、海上自衛隊中でも約2割(それ以外は船)と言われている航空部隊配属の希望を出していた。


教育隊での生活は、野球をやっていた頃とは全く別のキツさがあり、毎日地獄のような日々を送っていた。

教育隊には優等賞という賞があり、全体で10人くらいしか選ばれないが、それいかんで出世の道が決まると言われてた。

だから僕はその優等賞が欲しくて、地獄の中でも必死でもがいていた。

そんな中、分隊長と面談があった。


その面談は、教育隊が終わったあと、どの部隊に配属されるかといった、いわば将来の進路の面談といったところだ。


第6希望まで職種を希望できるのだが、僕はその全てを航空部隊の希望にして面談に臨んだ。

ワクワクとドキドキでいっぱいの中、分隊長から言われた一言は痛烈に覚えている。

「君はパイロットの適性がないから航空部隊はない。船の職種を探せ。」


「!?!?」


「船!?ですか????」

頭が真っ白になった。

なぜパイロットの適性がないと航空部隊に行けないんだ!?

聞いてない。


いや、海上自衛隊なんだから黙って船に乗れよ。
とツッコミが飛んできそうだが、当時の僕の頭は航空部隊のことでいっぱいだったのだ。


すっかり打ちひしがれて面談室を出ると、甲板班長(ものすごく愛があるがめっちゃ怖い教官)が立っていた。


すると、


「航空部隊に行きたいか?」


「ん???今なんて??」

僕は一瞬、何を言われているかわからなかったが、すぐに

「行きたいです!!!!!!!!!!!」

と答えた。すると、

「まだ可能性はある。がんばれ。」

とだけ言って去っていった。


「ぬおーーーーーー!!!!!!!!(心の声)」


そのあとは必死だった。

ただでさえ必死だったが、僕はまたギアを一段と上げてがむしゃらに頑張った。


その甲斐あってか、最後の日の前日に見事、僕は航空部隊への配属が決まった。

それと同時に優等賞にも選ばれた。

まさかまさかの結果に嬉しさが止まらなかった。


この時に僕は思った。

努力は報われないと思っていた高校時代だったが、努力を見てくれる人はいる。

そして、その人がいるから僕は頑張れたんだと。


人は自分のためにどんなに努力してもいつか限界を迎える。

しかし、それが限界に達しても、周りの人の支えがあればそれを乗り越えられるのだ。


その時、初めて感謝という意味を知った。


高校の時の私はこの感謝を知らなかった。

だからうまくいかなかった。

表彰台に登る人はこの意味をわかっているから、最初の一言に感謝の言葉が出るのだ。

僕は努力不足だったのかもしれない。



僕の人生で大きな選択をしたのは、高校を選んだ時。

その高校はあまり野球が強くなかったが、
ふと「自分が強くすればいい」
といった感情が芽生え、この高校にした。


結果は散々。

けがに苦しみ、周りに抜かれ、最後の大会はとうとう出場できずに終わってしまった。

自惚れていた。

この一言に尽きる。

全く感謝がなかった。

野球ができるのは誰のおかげなのか。
学校に行けるのは誰のおかげなのか。
健康な生活を送れているのは誰のおかげなのか。

そんなこと考えたこともなかった。



その後、僕は自衛隊を辞めて教員を目指すことになる。

その時の決断も勇気がいった。


せっかく国家公務員になれた。
今の生活は楽しい。

しかし、仕事のやりがいはない。
本当にやりたいことはなんなのか。

自衛隊の生活を経て学んだことはたくさんあった。

感謝の大切さ。
人に寄り添うこと。
自分を認め他人を認めること。


それらを教員として伝えるんだ!
高校の時の挫折はこのためにあったんだ!

それが僕の使命のような気がした。


休暇で実家に帰り、初めて父親と兄とお酒を飲んだ。

酔っ払った勢いで父に伝えた。

「自衛隊辞めるわ!」


その時の父の返事を鮮明に覚えている


「はっはっはっは!辞めなさい。」


この言葉が僕の背中を強烈に押した。


受け入れてくれた。

しかもこんなに優しく。


それからも僕の人生は選択の連続である。

大学受験。
就職。
結婚。

そして、今、教員を辞めた。

ここからがまたスタートである。


今は形もなければ実績もない。
これからとんでもない試練が待っているかもしれない。

でも僕には強力な武器がある。

感謝。

これを忘れてしまった時が終わりだ。


選択をするたび感謝が生まれる。

人は一人では生きていけない。

そこには必ず手を差し出してくれる味方がいる。
一緒に笑ってくれる味方がいる。

どんな困難も、そこに感謝があれば困難とも思わずに乗り越えられる気がする。

努力はきつくてきつくて苦しいもの。

ひょっとしたら、そうではないのかもしれない。


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