腰痛持ちの虫嫌いが、農家で働いてみた
3回目のおてつたび。
旅館と農家の募集が多いおてつたび。旅館は下田でやったから、今度は農家。
体力には自信があるから、向いてるかな?
↓おてつたびとは?
↓当時の日記
7月19日
朝3:40 フェリーで函館に到着。今年だけで函館来るの4回目。
集合の17時まで13時間20分ある。バスだと2000円するし、歩くか。
歩きスタート。恵山の方から日が昇り始める。
7:45 10km地点。道が真っ直ぐ過ぎて、ちょっと辛くなってきた。あと42km。間に合うか?
9:30 工事現場を通過。徒歩が来るとは思ってなかったらしく、「歩行者1名いくけど、大丈夫かな?」と無線でやり取りしてるのが聞こえる。ごめんなさい。
謝ると、「こちらこそご協力ありがとうございます!」「お気を付けて!」と丁寧に対応してくれる。
10時、20km地点。雨が降り始める。
10:30 一台の車が隣で止まる。「どこまで行くの?よかったら乗る?」と聞かれる。お言葉に甘えることに。無警戒すぎる。
75歳の方で、生まれも育ちもこれから行く厚沢部町。北海道の訛り初めて聞いたな。高校卒業後、メークインを作っていたけど、儲からないから函館で建築の勉強をしたらしい。5年前までは夏でもエアコン要らなかったのに、今は夜でも20℃超えると嘆いていた。夜に20℃超えるのは当たり前ちゃうんか。
待ち合わせ場所のバス停に到着。まさか乗せてくれると思わなくて、集合の6時間前に到着。公園のベンチで時間を潰す。
17時、もう1人のおてつたびの人が降りてくる。集合時間になってもおてつたび先の人が来ない。連絡しようか迷っていると、10分後に来た。謝罪の言葉がないけど、海外の感覚か?
もう1人の彼は、群馬の館林から来たらしい。宿に到着。既に2人住んでいて挨拶。1人はフィリピン人の男性。もう1人は香港人の女性。今日から4人でシェアハウス生活。おもろそうやん。
7月20日
いきなり休日。「世界一大きいコロッケを作る祭りあるから行ってくれば?」と、昨日言われた。
宿の4人で行くことに。
せっかくなので江差に観光へ。
宿のメンバーを紹介。
Oさん...同じおてつたびの人。27歳。國學院大学で神主資格を取るも、教授に「若いうちにしかできないことやりな」と言われ、4年自衛官を務める。
Tさん...ワーホリで日本に来てる香港人女性。29歳。香港には農家がなく、日本で体験中。
Cさん...フィリピン人男性。31歳。ジャスティンビーバー似のイケメン。うさぎ肉会社のCEOとして、リモートで働きながら北海道で農業。
7月21日
仕事初日。朝7時に現地集合。
今日からずっとお世話になるママさんに「こんな感じでカボチャのツルを広げて欲しい!無理しないで、楽しんでね!」と言われる。優しい。
2時間やって30分休憩、このルーティンの繰り返し。最初の2時間は余裕。休憩で色々お話し。ママさんは生まれも育ちも函館らしく、やはり東北に似た訛りで喋る。「タクシーやってたのってどっち!?」と聞かれ、自分ですと言うと、めっちゃ質問される。やっぱどこ全国行ってもウケるなぁ。あの経験は無駄じゃなかった。
午後から腰がキツくなる。カボチャがまだ小さいということで14時半に終了。助かった...。待って、農業こんなにきついの?まだ初日なのに。
宿に帰り、Oさんと2人で近場の温泉へ。自衛官の話を聞く。
1年目は新潟、2年目からずっと松本駐屯地にいたらしい。施設課にいて陣地を作ったり、地雷を埋めたり、先頭で障害物を除き最後は殿を務めるような、1番損耗率が高い(死者が多い)部隊だったようだ。
狙撃が得意だったので、最後は朝霞駐屯地に異動。オリンピックの射撃にあと一歩で出る予定だったみたい。
また面白い人と出会えたなぁ。
7月23日
仕事がキツすぎて書いてなかった。
仕事は、
・ママさん
・我々宿の4人
・マレーシアからの出稼ぎ女子3人
・社員のおじさん(この人も元自衛官)
の計9人が基本。
休憩中、マレーシアの3人に向かって、
ママさんが「梅酒の作り方教えようか?」と言う。半年〜1年熟成させたくらいが1番美味しいらしい。「お酒飲み過ぎ!」で笑いが起きてた。酒飲みが笑われるのは世界共通なんだね。
夜、夕飯を作っていると網戸越しに話しかけられる。びっくりすると、隣の家の人で、お裾分けを持って来てくれた。
贅沢だけど、この日から野菜の消費に追われる日々が始まった。
7月25日
今日もカボチャのツル直し。5日連続。絶望。毎日腰が悲鳴を上げてる。
虫は大嫌いだけど、慣れてきた。作業中ずーーーっとアブの羽音を聞き、本州じゃ見ない大きめの虫もいっぱい。でもこっちに危害を加えてくる訳じゃなくて、みんな逃げるから見つけても、「まぁ、いっか」となる。でもカエルだけは飛ぶからやっぱ無理。ほんとキツイ。
仕事終わり。ストレスMAX。
宿の前をランニング。
腰に激痛を感じつつ、気分はスッキリ。
7月26日
ついに、ついに!キャベツの収穫。
Oさんと、「ツル直しで2週間終わるんですかね...」と話していたので、少しテンション上がる。
1人ずつ包丁を渡され、根本から切っていく。カボチャの時もそうだけど、周りのスピードが早すぎる。作業自体は簡単だし、体力には自信あるんだけどなぁ。体も悲鳴を上げてるけど、毎日足引っ張ってばかりなのも精神的に辛い。
休憩中雑談。ここ厚沢部の1年分のキャベツが、群馬の嬬恋村だと1日で取れるらしい。そんな。キャベツだけで生活してる嬬恋はすごい、と社長が褒めてた。
今日も今日とてストレスMAX。
普段よりタイムがめっちゃ落ちてる訳じゃないから、体力が原因で遅れを取ってる訳じゃなさそうなんだよな。シンプルに慣れ?なんでこんなに周りと差がつくんだろうか、早い人を観察しても分からない。
Oさんに「考え方とか体力とか、junさん自衛官向いてますよ」と言われる。無理だと思ったけど、経歴は面白くなりそうだな。
7月27日
この頃からやっと、「ここの農園、休みが申請制なんだ」とOさんと察する。何も言われてないから、もう8連勤目。体が終わるのも納得。
朝6時集合で、今日からとうもろこしの収穫。
収穫だ!!と楽しみにしていたのも束の間、地獄を見る。
土砂降りの中、両足に3kgの重り(=泥)を付け、片手で20kgの袋を持ちながら片手で収穫していく。
なんの訓練?
腐るから収穫はどんな天気でもしなきゃいけないらしい。農家、大変だ。
7月28日
再び土砂降りの中のとうもろこし収穫。辛すぎる。自分も必死にやってるのに、周りとどんどん差がついていく。収穫中「こんなに頑張ってるのに...!」と幼稚な考えが頭に浮かんでしまう。
今夜は大沼公園で祭りがある。
仕事終わりにOさんとTさんと3人で行ってみることに。久々の娯楽。
宿に帰ると、新しい住人が。昔ここの農家でバイトしたことがあり、再訪した休学中の大阪出身の大学生。あと3日で帰るタイミングでお互い自己紹介。 農業は今の時期人手不足だから、色んな人が来る。
前の山形のおてつたびでもいたけど、休学してる大学生多いな。休学=停滞ってイメージが学生時代にはあったけど、自由でいいなぁ。自分は休学して好きなことするって選択肢知らなかったよ。ストレートに就職するのが良いと思い込んでた。
7月29日
あと2日!これだけが希望。
今日も地獄のとうもろこし収穫をして、終わり。
宿にはジャガイモ、ズッキーニ、インゲン、アスパラ、ナス、キュウリ、とうもろこし、キャベツが貯まってる。
社長が「時間経っても色変わらんスーパーの千切りキャベツなんて、体に良い訳ないべ。」と。そうなんだけどたまに買っちゃうんだよなぁ。今の食事はすごい恵まれてるんだよな。野菜ってこんなに美味しいんだって、山形も合わせてこの1ヶ月驚かされてる。
7月30日
とうもろこし収穫最終日。地獄の終わり。毎日採れたてのとうもろこしを貰える。
大阪の彼に、明後日大阪行くんですよね、と言うとお店をオススメしてくれた。こうやって旅人は全国に詳しくなっていく。noteで泉大津の人と会うというと、「あ、コテコテだと思いますよ」と言われる。楽しみ。農家終わりのご褒美計画しといてよかった。
7月31日
仕事最終日。結局11連勤。最終日はキャベツ畑の草取り。
休憩中、農業の話。冬のカボチャはほぼニュージーランド産。社長はこれを国産にするために研究をしてる。ハロウィンと冬至が1番売れて、その後3月まで貯蔵したいけど、貯蔵方法がめちゃくちゃ難しいとのこと。食料自給率という問題を身近に感じた。
今日は仕事終わりにOさん、Tさん、大阪の彼と4人で温泉。
大阪の彼が話をしてくれる。なんと、過去にここにお手伝いに来て、夜逃げした人が何人かいるらしい。ある女性は、初日北海道の環境に感動して「私はここに来る運命だったんだ!」と言ったが、翌日にキツすぎて帰ったらしい。
自分はおかしくなかったんだ。やっぱ大変だよな。Oさんもキツイって言ってたし。自衛官が体力的にキツイって言う仕事なんだよ。逃げずにここまでやった自分を褒めたい。
全身虫刺されの体を癒してくれる。満身創痍。たまに体のどこかからか血が出る。
温泉帰りに絶景。この2週間雨が降らない日が無かったから、最終日に晴れてくれて良かった。しばらくみんなで眺めた。
8月1日
帰る日。振り返ると、キツかったけど充実してた。
本来は、社長がバス停まで送ってくれてそこで解散。バスに1時間乗って函館駅から帰るというルートなのだが。
自分は最近趣味のヒッチハイク、Oさんは徒歩で帰ることに。
Oさんとはここでお別れ。自衛官とか神主の話とか、ずっと楽しませてもらった。ありがとう。
10分で乗せてもらい、函館駅へ。
ヒッチハイク4回目で、全部10分以内なのすごくない??特技かな。
終わり。
・・・
感想
農家がこんなに体力的にキツイとは思わなかった。それでも、綺麗事なしの農業が体験できてよかった。
これだけ大変な仕事を11連勤出来たのは、人に恵まれたからだ。
休憩中明るい笑顔で場を明るくしてくれたママさん
よく周りを見て遅れを取ってる自分を何度も手助けしてくれたフィリピン人Cさん
共同作業をすることが多く、友達になれた香港人Tさん
そして強烈なバックグラウンドと体力で、話に全く飽きなかったOさん。
仕事終わりに泥だらけになってみんなで水を掛け合う時間、差し入れのとうもろこしを食べる時間、メークインをもらい、夕飯全員カレー被りして笑った時間、函館らしくラッキーピエロを食べに行った時間。
年齢の近い4人のシェアハウス生活がほんとうに楽しかった。たった2週間とは思えないほど濃くて、キツイ良い夏休みになった。
自分以外の3人はみんな農業に興味あり、これからも各地で農家のお手伝いをやるらしい。野菜を食べるたびに、彼らの必死な、でもやりがいを感じてる顔を思い出す。
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