【WSJ記事】円安でソニーに追い風、今のところは
7-9月期の業績は予想外に好調だったが、投資家が注目すべきは来たるホリデーシーズン
ソニーの7-9月期は円安のおかげで、本来であれば残念な業績となるはずだったものがかさ上げされた形だPHOTO: ISSEI KATO/REUTERS
By Jacky Wong
2022 年 11 月 2 日 09:18 JST
――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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円安が巨大テクノロジー企業ソニーの利益を押し上げている。それでも世界経済に漂う暗雲はソニー株に重しとなるだろう。投資家が本当に注目すべきは来たるホリデーシーズンである。
ソニーが1日発表した7-9月期決算は、売上高が前年同期比16%増、営業利益が8%増だった。売上高はアナリスト予想を下回ったものの、営業利益は予想を上回った。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスがまとめたアナリスト予想では、営業利益は減少すると見られていた。ソニーは、3カ月前に下方修正したばかりの2023年3月期通期の営業利益見通しを上方修正した。
主因は円安だ。対ドル円相場は年初来22%下落しており、本来であれば残念な業績となるはずだったものがかさ上げされた形だ。為替レートが変わらなければ、売上高は前年同期比1%増にとどまっていたはずだ。ソニーは円建てで決算報告をしているが、同社の売上高と利益のほとんどは海外からもたらされている。
ソニーの営業利益(四半期別)
2018'19'20'21'220100200300400¥500(単位:10億円)
特にイメージセンサー事業は、製造工場がほとんど日本にあることから円安の恩恵を受けた。同事業の営業利益の半分以上は為替の影響によるものだ。為替差益がなければ、同事業は減益となるところだった。米アップルの新型iPhone(アイフォーン)の売れ行きは好調だが、イメージセンサーの主な需要源であるスマートフォン市場全体は急速に減速している。業界調査会社IDCによると、前四半期の世界のスマートフォン出荷台数は前年同期比9.7%減(5四半期連続の減少)となった。
ソニーの中核事業であるゲームセグメントも、新型コロナウイルスの流行下でもたらされたブームの後遺症にまだ苦しんでいる。ゲーム事業はコストの多くが日本国外で発生するため、円安による押し上げ効果は得られない。同事業の営業利益は前年同期比49%減となった。一因は、ソニーが米ビデオゲーム開発会社バンジーを36億ドル(約5300億円)で買収したことに伴う関連費用だ。だが、この買収費用が計上されなかったとしても、ゲーム事業の営業利益は減少していた。
明るいニュースは、ソニーが来たるホリデーシーズンの需要に見合うだけの「プレイステーション5(PS5)」を生産できるはずだということである。サプライチェーン(供給網)の不全は緩和し始めている。現時点で問題となるのは、消費者が財布のひもを締め、ゲームへの支出を切り詰めるかどうかだ。
ソニーは7-9月期に円安で思いがけない「パワーアップ」を獲得したが、この先のレベルは、かなり難しいものになりそうだ。
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