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別世界では別職種だった件 ホンダ編 第4話

第4話 覚醒と別れ
 
「もう少しでオッパイ触れるんだけどねー」
 満面の笑顔を浮かべながらメイが言葉を発した。エスパーギルドの初依頼を受けてから約1週間、メイが簡単に倒した格闘家に勝てなかったというホンダの戦闘指導をしているのである。戦い方として、遠距離から飛び道具を打ってもある程度の戦闘技術がある人には避けられてしまうので、加速能力で接近し、相手に密着した状態からサイコショットを打つという戦術が有効だと判断する。その訓練方法として、メイが自分のオッパイを触るように指示しているのである。ホンダは加速能力であるダブルブーストを利用して、メイのオッパイを触ろうとするが、倍速で動いてもスピードが全然かなわないようだ。
「もっと速く動けないんだっけ?」
 そう言われてホンダはもう一段階ギアを上げることにする。正直ダブルブースト以上にすると疲労感が半端ないが、このまま引き下がるのは癪に触る。
「トリプルブースト」
 ホンダはこう呟き、全速力でメイへと近づく。そのスピードに嬉しそうな表情を浮かべて迎え打つ。
「ちょ、ホンダ、速い。やばい、オッパイ、触られる」
 伸びてくる手を防ぎながら、楽しそうに防御をしている。数分後、ホンダが限界になり、動きを止める。
「スピードは今ので充分ね。後は格闘センスがもう少しあれば触られてたかも」
 息を切らしているホンダを笑顔で見つめながら冷静に分析をする。呼吸を整えながら、ホンダは思考を巡らす。正直トリプルブーストを使えば触れる自信はあったが、全て防がれた。別にそこまで触りたいわけではないが、ここまで来たら触らないで終わるわけには行かない。
「ん?」
 何か変な雰囲気を感じたメイがホンダに視線を集中する。
「クアッドブースト」
 その瞬間、多少姿勢をかがめたホンダが目の前に現れ、右手が右胸に触っていた。クアッドブーストを使用したホンダは体の負担が限界になっており、そのまま動くことができず、メイもオッパイを触られているショックでしばらく固まってしまった。オッパイを触られている状態で数秒時間が過ぎ、メイは顔を真っ赤にして膝から崩れ落ちる。
「触られた、とみたん以外の男にオッパイ触られた」
 そう言いながら軽く涙を浮かべている。何とか体が動くようになったホンダはそのまま倒れるように地面に座り、メイを見つめる。触れと言ったのは自分だろうと突っ込もうとしたが、息が切れて言葉が出ない。
「ホンダにオッパイ揉みしだかれたなんて言ったらとみたん激怒する。ホンダ共々殺される」
 半べそをかきながらこのように話しているが、揉みしだいてはいないし、殺されるほどのことでもないだろう。でもトミタの機嫌が悪くなるのは勘弁してほしい。そのようなことを考えていると、メイの表情が急にイタズラっぽい笑顔に変わる。
「なーんて、冗談よ冗談。オッパイ触られるぐらい何とも無いわよ。触りたかったら触っていいよ」
 そう言ってそう大きくはない胸を目の前に突き出されたが、別に特段触りたくはない。それよりも大丈夫だったことに安心し、大きく息をはく。
「触らないんだー。じゃあ私は帰るわね。また明日ー」
 そう言ってメイは飛び立って行った。まだ疲労感が回復していないので、もう少し体を休めてから帰ることにする。家に着くと、あまりに疲れたのでそのまま眠り、目が覚めたのは翌日の昼ぐらいである。昼過ぎぐらいに家を出て、ランチを食べた後でギルドへと向かう。今日の夜はみんなで飲み会となっており、サキアも一緒に行くことになっている。夜まで特にすることもなかったので、リンドやサキアが行っている仕事を無駄話をしながら手伝った。そうこうしているうちに夕方過ぎの時間になったので、サキアと一緒にいつもの店へと向かう。店に入ると珍しくもう全員揃っていた。
「おー本田来た来た。これで全員かな」
 ハラダがそう言いながら、椅子に座ったホンダとサキアにコップを渡し、酒を注ぐ。
「じゃあ、富田何か大事な話があるって言ってたよね。ついでに乾杯もよろしく」
 そう言われてトミタはコップを持って席を立つ。
「えーっと、実はこの度マルタ王国を出て、カルティーブフに行くことになりました」
 それを聞いてサクヤ以外の全員が驚きの表情を浮かべる。
「なので、しばらくは皆さんとはお別れになりますが、いずれ帰ってくる予定ですので、それまでお互い元気でいましょう。カンパーイ」
 そういって乾杯を行ったが、全員が何とも言えない表情を浮かべている。
「いやまあ、ちょっと大きい仕事というか、そういうのがあって、サクヤと一緒に行ってきます」
 仕事と言われたらそうなのかと納得するしかない。もう決まったことだろうし、深く詮索するのはやめておくことにする。その後はいつものように楽しい飲み会を行なっていたが、思い出したようにハラダが口を開く。
「そういえばめいちゃんとも会えなくなるんだ。富田めいちゃん出せる?」
「寝てるんですよね。機嫌悪いかもですが、呼び出してみます」
 そう言ってトミタが呼び出すと、出現はしたが、地面に座り込みボーッとした顔をしている。
「本当に寝てたみたいですね」
「しばらくこのままなので、そっとしておいてあげてください」
 サキアの言葉に続けて、トミタは気にしないで飲み会を続けて欲しい旨を説明する。全員気にはなるが、なるべく気にしないようにする。しばらく時間が経ち、メイがか細い声で言葉を漏らす。
「とみたん。お腹空いた」
 言葉が聞こえたので、全員メイを見るが、状況は特に変わっていない。相変わらずボーっとした表情を浮かべている。
「おいで」
 トミタがそう呟いたので、メイはゆっくりと立ち上がり、膝の上に座る。そして、抱きつき唇を重ねる。結構ディープ感溢れるキスにホンダとサキアは驚きの表情を浮かべるが、他の3人は特に気にしていない。おそらく今までに見たことがあるのであろう。ある程度時間が経ち、唇を離すと、膝の上からおり、大きく背伸びをする。
「うーん。目が覚めた。皆さんご機嫌よう」
 すっきりした表情でメイが全員に挨拶をし、各々お酒を持ち上げてそれに応える。
「とみたん。そう言えば言い忘れてたけど、ホンダにオッパイ触られたよ」
「ゲホ、ゲホ」
 メイの言葉を聞いてホンダがむせて咳をする。それを見て横に座っているサキアが何やら不機嫌な表情になる。
「そっかそっか。触れたんだ。じゃあもう俺たちいなくても安心やな」
 オッパイを触ったという事実が、ホンダの実力がメイレベルになっていることを理解して、トミタは満足げな表情を浮かべている。
「でも1回触れたから、触りたかったらもっと触っていいよって言ったけど断られたよ。やっぱり私より大きいサキアのオッパイをいつも揉んでるから興味なかったみたい」
「ゲホ、ゲホ」
「そんな・・・いつもでは・・・ないです・・・」
 またむせたホンダの横で顔を真っ赤にしながらサキアが弁解する。いつもという訳では無いらしい。それを見て全員が爆笑し、その日は遅くまで飲み続け、日時が変わる少し前にお開きとなった。

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