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別世界では別職種だった件 ホンダ編 第6話

第6話 盗品回収②
 
「敵の情報が全くない状況での作戦は危険だと思われます」
 すぐにでもジャンヌ山に討伐に行きたいと考えているハルキシスに対して、アーチャーのロビンスが意見を述べる。前回の討伐から2日経っており、今後の討伐をどうするかを昨日今日と話し合っているのだ。ロビンスとファイターのケインは討伐に慎重な姿勢を見せている。
「情報についてはいま諜報員を潜り込ませているので今日中にはある程度の情報が手に入る見込みだ。なのでそれを明日検討して明日にも討伐を行いたいというのが俺の希望だ」
 現在絶賛情報入手中であることを説明し、なるべく早く討伐を行いたい旨を説明する。
「とりあえず、情報が来てそれを見てからの判断になると思うんですよね。情報確認して討伐可能であると判断すれば行けばいいし、困難と判断するのであれば一旦検討すべきだと考えます」
 諜報員がどれほどの情報を集めてこれるのかがわからない以上、現在決定できるのは今ホンダが述べたことぐらいであろう。この意見に場は賛同し、一旦明日の朝に再度集合し、情報の精査を行うことに決めた。
「いったんギルドに寄ろうかね。先にランチ行く?」
 この言葉にリンドとサキアは賛成したので、途中にある食堂に立ち寄り、ランチを食する。ランチを食した後はギルドに戻り、それぞれ分かれてその日の業務を行い、その後帰路に着く。特に何も起こることなく翌日となり、ギルドに集合した3人は今日もリリー邸へと向かう。リリー邸に着くとすでに情報を元に作戦会議が始まっている。諜報員が手に入れた情報によると、盗賊団は30名程度で、その内実力者が5名。内訳は団長がクルセイダー、その他にアーチャー、ナイト、エスパーがおり、もう1人は現在アジトにおらず、情報がないとのことである。
「何ということはないだろう。すぐに出発するぞ」
 戦闘準備万端のハルキシスは今にも出発したい気持ちを前面に押し出している。それを見てロビンスとケインは少し呆れているが、確かに先ほどの情報内容だけを見ると、討伐に反対する理由はあまりないようだ。仕方なく2人は討伐に了承することをハルキシスに伝え、討伐に向けての準備に入る。ホンダとサキア、リンドは特に準備することもないので、椅子に座って、準備の様子をのんびり眺めながら、気持ちの整理をすることにする。気を利かせて、サキアがコーヒーを淹れてきてくれたので、案外気持ちを落ち着かせることが出来た。討伐の準備に結構時間がかかったが、完了したとのことで、討伐部隊と一緒にここを出発することにする。場所は前回よりも多少遠い様で途中休憩を挟みながら進んでいく。程なく目的地が近づいてくるが、特に怪しい人物に出くわす等のイベントはまだ起きていない。この後は案外簡単に物事が進んでいく。敵のアジトに到着し、雑魚どもを制圧しつつ、作戦会議にも上がっていた4名を何とか制圧することができ、目的の宝物も回収した。思っている以上に上手く行っていたのだが、問題はここから発生した。アジトにいないという話だった人物が帰ってきて、その人物が思った以上に危険な人物だったのである。
「あれ、もしかして、君たちアジト襲撃したー?僕がいないうちにー?」
 帰りしなに遭遇したその男性はその様に言葉を発した。ホンダは特にその男性に違和感はかんじなかったが、ハルキシス、ロビンス、ケインは恐怖のあまり、我を忘れている。
「ホンダ、いざとなったら私が盾になるので絶対に生き延びてください」
 隣に立っているサキアからそのような言葉を投げかけられたが、ホンダはまだ状況が理解できていない。ここでホンダは思い出したかのようにその男性の額を確認してみる。するとそこにはアルファベットではなく“⭐︎”の模様が存在していた。
「サキア、あいつは」
「この世界の外の存在です。私たちが叶う相手ではありません」
 その言葉を聞いて、ホンダはこの状況をようやく理解できる。ハルキシスもロビンスもケインもそのことを理解しているのだ。
「どうするー?一方的にアジトをやられた以上僕もこのまま帰すわけにはいかないんだよねー。戦うなら相手になるよー」
 その男は不適な笑みを浮かべてこちらに意思を尋ねてくる。だが、この状況でこちらの行動を判断できるものはいない。いるとすれば選択肢は逃げる一択ということだけであろう。
「僕も気が長い方じゃないから、早く決めてほしいなー。もし戦いたくないというのなら、そうだなその女の子をくれるなら許してあげるよー」
 そう言ってその男はサキアを見つめて笑顔を浮かべている。それを聞いて、ホンダの中で何かの感情が湧き上がり、その男に向かって歩いていく。
「俺が相手になってやる」
 それを聞いて、その男は不適な笑みを浮かべる。その瞬間ホンダは自分の体が分散していくのを感じる。
「あ、俺はもうやられたんだ、もう死ぬんだ、いや、これは死ぬどころではない。俺の存在ごと消滅させら・れ・・る・・・」


「あれ、まだ俺生きてるのか。あ、誰か膝枕してくれている。この太ももはいつものリンドの感触だ」
 多少記憶が混乱しているがまだ自分が生きていることを認識し、ホンダは思考を巡らす。ゆっくり目を開くとそこにはいつものリンドの優しい笑顔があった。
「ホンダ、無事で良かった。本当に」
 リンドはそう言って涙ながらに笑顔を浮かべる。無事で良かったというのはホンダも同じ気持ちであるが、何よりリンドも一緒に無事だったことに安心する。
「どうなったの」
 ホンダは今の状況をリンドに尋ねる。するとリンドも詳しい状況はわからず、額が⭐︎の男に会った後の記憶が混乱している様である。それを聞いたホンダは別にどうでも良い気分になっている。リンドと一緒に無事に依頼を終えることができたことを喜ぶべきなのだ。この後、ホンダの回復を待って、帰還することにする。無事に家宝は取り戻しており、今回のミッションは成功したということになる。この後、ホンダとリンドはギルドに状況を報告した後、祝勝会としていつもの飲み屋へと向かったのである

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