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コミュニティグレイ

世の中に不満を持っていない人はいないのではないか。
どんな立場にいても、少なからず不満はあるだろう。

都内、練馬に近い住宅街、近年では高齢化が加速して空き家・空き地が増加する中、マンションの人気が高まり戸建て販売は伸び悩んでいた。

裕二は不動産販売会社で働く入社四年目の中堅社員。
業務成績は良く、今年は念願のマイホームを手に入れ妻と長男の三人で転居、新生活が始まった。

賃貸マンションで暮らしていたが、自社が販売する戸建て物件をローンで購入し、そこに5月から居住し始めた。
しばらく空き地や廃墟と化した住宅が取り壊され、建売住宅となったのだった。
居住者共有の通路があり、通路を中心にコの字型に戸建て七宅が新築された。
交通の弁も、子供の学校やスーパー・コンビニなども充実する、告知通りの地域性で誰もが住みたいと思う場所だった。

裕二家族は2棟が売約された頃、遊びに来ていた妻の両親と子供を連れ立ち、物件の内見に赴いた。

物件は全て二階建ての3LDK、駐車場一台分のスペース、駐車場・玄関の南西、家の壁に沿って約1メートルくらいの土地があった。
駐車場は7軒全てが玄関の左側に配ており、壁と壁がすぐ近くに隣り合ってはいない。
ただ、物件左入口の家の片隅にゴミ置き場が設けられていて、ここを内見する家族は少なかった。

正面奥の真ん中と入り口左側ニ軒目が売約済みで、裕二家族は右二軒目の物件を購入する事に決めた。

1ヶ月半後、段取りが整い、引越し当日を迎えた。
この頃には販売されていた全棟が完売となっていた。

朝から夫婦の友人と妻の両親が手伝いに訪れ、引越しの手伝いをしてくれて夕方には全ての家具を配置し終えた。
後は、食器や調理器具、衣類など細かいものを片付けるだけ。
皆んなで食事に出掛け、解散となった。
翌日はマンションの最終確認と近所への挨拶を終え、午前中には住み慣れた家を後にした。

新居に着き、先に引越しを済ませていた二軒と他の近隣へ、引越しの挨拶にまわった。

建売の二軒の住人は夫婦の顔を見るや寄ってきて「引越してから日が浅く、同じ区域の建売を買ったので堅苦しい挨拶は無しにしよう」と言ってきた。
裕二夫婦も同調して、言葉だけの軽い挨拶で解散した。

その後、一ヶ月もしないうちに残りの物件も完売し、それぞれが新生活をスタートしていた。

これから七家族の新しいドラマが始まる🏠

つづく


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