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障害のある方が働くために、子ども時代に身につけておきたいこと

大人の就労支援に携わってきて、たびたび疑問に思うことがありました。
それは、大きく分けて下の2つです。

◆スキルが高いのに就労できない(継続できない)方が一定数いる
◆同じようなスキルなのに、仕事が続く人とそうでない人がいる

関わっていく中で、これはどうやら、子ども時代に経験できなかったこと、身についていないことがあるんだな、と分かってきました。

大人になってからでも突破できる課題ではあるのですが、もしできることなら、子ども時代からやっていくほうが早く良い結果につながると思います。

それから、これは障害の有無に限らないお話だと思いますが…
今回は、障害者就労支援に携わった立場として感じたことをまとめていきますね。


仕事が続けられない人の特徴

▶️不安になりやすい

・仕事を任された途端に怖くなる
・間違えることが怖くて仕方がない
・周囲になんと思われているか心配

▶️不満を持ちやすい

・なんでこんな仕事をしないといけないのかと思う
・自分はもっとできるのに認められていないと感じる
・最初は褒められて良かったけど、数ヶ月で当たり前と言われ不満

▶️モチベーションが保てない

・お給料をもらっても満たされない
・なんのために仕事をしているのか分からなくなる
・仕事がつまらない

▶️苦手な人への拒否が強い

・上司の異動などで急にメンタル不調になる
・嫌いな人には返事も挨拶もできない

▶️やり方は知っているが、応用力がない

・資格を持っているのに資料が作れない
・自分の学んだやり方しか受け入れられない

お仕事が続かないのは上記のような人ばかりではありませんが、本当に多いなと感じた内容を記載しています。

すでにお気付きかもしれませんが…
ほとんどが、感情・情緒に関することなんです。
 

感情・情緒が育つのは子ども時代

働く事なのに、なんで子ども時代が関係あるの?と思われてしまいそうですが、実は物凄く大事なことです。

人が「いま起きていること」を自分なりに捉えて結論づけるには、自分の経験値を総動員して考えているはずです。ここで大事なのは、自分なりにであること。事実かどうかではなく、自分にとってどうなのか?なのです。

もし、子ども時代に怒られる体験が多かったら、どう思うでしょう。ずっと抱えていた恐怖が心の隅に残っていると、大人になった時にも無意識に「怒られたくない!!」と強く恐れてしまう事は多いです。

また、認められない経験が強いと自己肯定感が得られず、不安になりやすかったり、攻撃的になりやすかったりします。

障害があるからこそ

障害のある方は、先天的でも疾病によるものでも、ストレス耐性が下がってしまうことが多くあります。そのため、より一層不安を感じやすく、不安が強烈で残りやすいのです。

また、自分が抱えている感情をうまく表現できずにいるかたが非常に多いです。その理由は様々で、

「自分の感情を認識できていない」
「モヤモヤするが何なのか分からない」
「わかってはいるけれど言葉を知らない」
「言葉は知っているけど、合っているかどうか分からなくて結局言えない」
「言ったら怒られるかもしれないから言えない(言わない)」
「こんなことで不安になる自分がおかしいと自責する」

個別に対応していくと、もっともっと多様な理由が聞かれます。そして、理由をよく聞いて遡っていくと、子ども時代に得られなかったことが浮き彫りになってきます。

理由がわかれば、大人になってからでも、情緒的な安定感を身につけることはできます(安心してくださいね)。ただ、根気よく諦めずに取り組んでいく必要があるので、支援者とじっくり関われる環境(利用期限のない事業所である、面談時間を確保してもらえる、など)で取り組むことをお勧めします。

子ども時代に身につけておきたいこと

①様々な気持ちを受け止めてもらえた、という経験値

嫌な感情も良い感情も全て「そうなんだね、そういう気持ちなんだね」と言ってもらえたことがあるかないか。その頻度が、すごく重要だと思います。

受け止めてもらえず否定され続けると、発信することがなくなります。
発信しなくなることで、自分の中で勝手に決めてしまったり、落ち込んで鬱傾向になることも。周囲に見えにくいため、困難な状況になりがちです。

また、この経験値が高い方は、同時に素直な反応をされる方が多いです。
会社は、スキルが高い方よりも素直で接しやすい方を採用する傾向にあるので、就職面接にも就職してからも絶対に役立つ経験値です。

②助けを求める習慣と、その方法

①の経験値が高まると、「助けを求めてもいいのだ」と自然と思えるようになります。マイナスなことを言ったとしても否定されないので、安心して躊躇なく発信ができる、ということです。

何でもかんでも、助けを求めればいいってもんじゃないのでは?
と思われるかもしれません。確かにそれはそうなのです。ただ、身につけるためには順番があるということ。

助けを求めたことがない人が、ちょうどよく助けを求めることは不可能です。初めてボールを持った人に、なんでストライク投げれないんだ!と叱りつけるくらいの感じで、理不尽だと思います。

まずは投げてみること。次に、ボールをキャッチャーまで届かせること。
ちょっとズレていても、キャッチャーが取ってくれることでホッとできる。そんな試みがあって初めて、ストライクを狙えるというものです。

子ども時代に習慣づけていると、大人になって急に「仕事場」という未知の世界に行っても順応できますし、負担が少なくすみます。

また、発信の仕方は必ずしも「言葉」だけではありません。
何らかの形で、どんな場面でも使いやすそうなルールや仕組みを作っておくと良いです。障害者雇用の現場では、本人にとって必要な配慮は「合理的配慮」と呼ばれ、きちんと対応してもらえます。

③選ぶ力

最後におすすめしたいのは「選ぶ力」を身につけることです。
難しくいうと「決断力」ともいうのですが、そんな張り切った感じでなくても大丈夫です。

何かを選ぶと、必ず結果がついてきますね。
当たり付きのアイスを買ったら、当たりかハズレのどちらかの結果があるように。初めは「何で当たりじゃないの〜〜〜〜〜〜!」と怒ってしまったり、「もう私には、あてる運なんてないんだ…」と落ち込んでしまったりすると思うのですが、それは、しょうがないのです。

大事なのは、「選択すると何か結果が出るというルール」を知っていて、受け入れられるようになる事です。

普段から選択→結果の流れを自分で経験して慣れておくことも大事たと思いますし、納得のいかない結果だった時、大人と一緒に気持ちの落とし所を探す練習をしていると、大なり小なり自分でもできるようになってきます。

選ぶ力が付いていないと、そもそも自分で選択できないのに不満に思ってしまったり、うまくいかない時に人や環境のせいにしてしまうことがあります。

職場では、どんなに些細な仕事でも、自分の意思で実行しないといけません。そこにはちょっとした失敗は付きものです。何とか取り組んでみたものの、不安が募ってしまい離職につながるケースは本当に多いです。

まとめ

障害がある方が働くために、子ども時代に身につけておくと良いこと。
それは、3つの習慣です。

▶️様々な気持ちを受け止めてもらえた、という経験値
▶️助けを求める習慣と、その方法
▶️選ぶ力

この3つの習慣は、どんな状況の時でも感情と情緒を支えてくれます。
喜怒哀楽を自由に表現することができて初めて、自分の気持ちに気づくことができます。

また、状態が良くない時があっても、「何とかなる」と知っていて「助けてほしい」と言うことができれば、乗り越えることができます。

この土台が整っていれば、仕事をしながらでもスキルアップはできますし、障害があっても任せてもらえる仕事は増えていき、自然とやりがいを感じられるようにもなっていきます。とても楽しみですよね!

そして私たち支援者は、大人になった皆さんを温かく迎え入れ、
責任を持ってサポートしていきたいものだな、と改めて思います。

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