地方自立の農業国


日本は農業国か工業国か
飯舘村は,食料/エネルギー/超高齢化という21世紀3大課題を解決する最前線にいます。原発事故からの復興もままならず「いずれ森の中に沈むんでしょう」と考えている人は大勢います。しかし,人間と自然が共生できる生活や生業を残していくことは、飯舘村だけでなく日本・世界の課題です。
自然と人間の関係性の回復こそ,全ての基礎です。1980年代の高度成長期以来、日本は欧米を追い越して世界一の先進工業国になるという共同幻想を追い続けてきました。自然と共生する農林漁業・畜産業などを基盤にする社会が本来の日本列島の姿です。その原点を基に社会構造を改革していかなければなりません。工業はこの社会構造を支える技術であって、工業製品の輸出で得た金で食料・飼料などを輸入すればいいという考えは、この列島を衰退させるでしょう。

真の地方自立創成が急務
私は、現在の中央集権型近代国家幻想を乗り越えて、日本列島の自然循環に内包された農林漁業・畜産業とそれを支える最適工業技術・自然エネルギー技術を大切にする地方創成主体(現在の県市町村)を地域に確立するべきだと思います。それらを調整する機能のみを中央に置けばよいでしょう。
このモデルに近い考え方のヒントがスイスにあると、元スイス大使が私に教えてくれました。スイスは永世中立国で国民皆武装が知られていますが、実は各地方がそれぞれ課税・予算の執行権や教育権など自己決定権を持っているのです。中央政府は、外交、軍事、地方間の紛争調整、市民の権利と通商の自由の保証、等に権限が限定されています。財政権も州や市町村に権限があり、中央が30%強、州が40%、市町村が30%弱という比率のようです。国連やEUへの加盟を中央政府が推進しようとしても、地方の大多数が、国連総会やEUの決議に必ずしも同調したくないという理由で反対し、近年まで加盟できなかったぐらいです。

地域再生拠点「図図倉庫」の創出
NPO法人ふくしま再生の会は、2011年原発事故後から飯舘村に入り、破壊された自然環境・生活環境を再生する試みを持続してきました。現在、村民と専門家・地元企業・村内外の若手グループが旧コメリ跡の空間に集まり、地元資源を利用した農業・エネルギー・食・アートなどの実験的取り組みを継続しています。一度お立ち寄りください。


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