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ものぐさ生活史 2024年1月26日~30日

1月26日


今日はめちゃくちゃ寒い。寒すぎる。
駅のホームに人が震えてた。寒さに震える人を見るのは久しぶりだな。

こういう時に雪山で遭難したらこんな感じなんかなって想像する。痩せてる奴から死んでいくんだろうな。熱計算のジュールってやつを昔、理科の時間で覚えさせられたっけ。人間も生き物だから熱を身体に保ってないといけないんだ。恒温動物の宿命。変温動物だったら寒いのとかへっちゃらなんかな。ヘビとか。ヘビが震えてるって全然想像できないもんな。

家までの帰り道。寒い中、マフラーに顔を埋めて歩く。夜中の道は誰もいない。空を見上げる。
あり得ないくらいにくっきりと星たちが光ってる。

痛いほどの寒さの中だからこそ見れる美しさがある。

27日

ジョン・キーツの詩集を読んだ。
詩を読むことは、結局のところ自己満足。何の役にも立たない。だからといって、読むことも止めはしない。

映画『パーフェクトデイズ』の平山のような生き方、あれはフィクション。
あんな生き方をしていると、多分、常に寂しさが、いや、むなしさがあるんじゃないかな。

だから、生活を詩にする事は、理想的であると、同時に、危険なことでもある。


28日

まるちゃんと神保町で待ち合わせ。
合流して、焼肉屋キンタンでお昼を食べた。うまい。焼肉って久しぶり。

せっかく神保町に来たから古本屋を覗いた。
春日武彦『奇妙な情熱にかられて』を200円で購入。著者は産婦人科医を6年務めて精神科医に転身した人。奇妙な情熱がある人なんだろうな。相当な変わり者だ。帰りの電車のお供としてポケットに忍び込ませる。

渋谷までまるちゃんと歩いてカフェへ。
ラーメン一杯分くらいするホットチョコレートを飲む。くそうまい。

女の子といるときだけしか飲まない飲み物ってのが男にはある。
男は保守的だから食の好みが広がらないんだ(持論)
色んな食べ物に挑戦ができない。
メニュー表の一番左上を必ず頼むのはほとんど男だろう。

保守に革新をもたらすホットチョコレート。うまい。

29日

ちっちゃな頃から主体性がない。
小学生から習い事をしたいとかはなかった。野球をやれと親から言われたからとりあえずやってみただけ。意外と続いたけど。自分からしようと思ったわけじゃない。

食べるのは好きだけど、これが食べたい、という意欲もない。
行列のできる店を調べて行くとかもない。適当に入ってうまいなって感じ。
だけどなんでもいいわけじゃない。味には文句をつける。
めんどくさいやつだな。

30日

ふと死んだ叔父さんのことを思い出す。
年に一度会うか会わないかくらいの人だった。おばちゃんが先に死んじゃったんだけど、叔父さんはずっと、おばちゃんの遺影を自分の布団の中にしまって一緒に寝てた。
それを見た親戚はみんな気の毒になって誰も何も言えなかった。

あれを見た時息を飲んだ。異様なんだけど、人に言葉を無くさせるような、時を止めてしまうよな、人の想いがあった。
そんな感じで叔父ちゃんは日々を過ごしてたけど、その後、すぐに病気になって入院した。
それでボケて、呼吸もできなくなって、意識も朦朧としてた。
病院で面会したら少し笑ってたけど、「人が死ぬ時はこんな感じなんかな」って、高校生くらいの俺はその時に思った。そんで、そのあとすぐに死んじゃった。

あの叔父ちゃんは奥さんのこと、おばちゃんのことが大好きだったんだな。死んでも一緒に寝たい、と思って写真を抱いてた。
なんか、そういう気持ちが最近、少しだけわかるようになってきた。
ああいう人生もある。
残された方はつらいよな。ほんとに。

でも、おばちゃんにそういう辛い思いをさせないでいたんだから、叔父ちゃんはいい男だったと思う。女がいないと生きていけなかったおじちゃん。
またいつか会えるのかな。

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