OBJのプログラムに参加して ①
今回から、何回かに分けて僕が2022年の8月に参加したOutward Bound Japan(以下OBJ)が主催するプログラムについて書こうと思います。1回目の今回は、OBJの母体であるOBS(Outward Bound School)というものがどういう団体なのか?について書きます!また、最後には僕がOBSに参加をした動機も書いています。次の記事にもつながってくる内容になっていると思います。
OBSとは、何か
OBSは、世界最大の冒険教育機関とされている教育機関です。現在では、世界33か国にその拠点は存在しています。日本の拠点は、長野県小谷村にあります。主な活動内容としては、登山・野営・ロッククライミング・カヌー・バックカントリー。沢登りなどの野外活動です。OBSの手法は、様々な形で派生しています。そして歴史をたどると僕が学んでいるProject Adventure(アドベンチャー教育と訳します)とも直接的に関わりがある団体です。
OBSの歴史
OBSは、ドイツ出身のユダヤ人の教育学者クルト・ハーンによって1941年に設立されました。(ハーンについての資料は現存しているものが少ないらしく謎に包まれている部分も多いですが、「冒険教育の父」とされている人物です。)第二次世界大戦下において、ハーンの教育理念はナチスによる弾圧の対象となりました。そこでハーンは、イギリスへ亡命をし、そこで教育活動をつづけました。その中で誕生したのがOutward Bound Schoolなのです。
OBSが設立されることとなった背景には、若者の「生きる力」の低下が指摘されたことがあります。第二次世界大戦下において、イギリスの商船がドイツ軍の攻撃を受けることが度々ありました。その際に、生還するクルーは、体力のある若者よりも年老いたクルーのほうが多かったのです。ハーンはこの原因が
・困難な状況に立ち向かう力
・困難な状況に打ち勝てるだけの経験値
・経験に裏打ちされた確かな技術や知識
などにあると分析しました。ここから、ハーンは困難な状況に打ち勝ち生き抜くための教育が必要だと考え、1941年にイギリスで世界初のOutward Bound Schoolが開校されたのです。
教育理念
全世界に存在する拠点にすべて共通して掲げているものとして
「奉仕、努力、不屈」(To Serve To Strive not To Yield )というものがあります。これらに代表されるOBSの理念は、ハーンにとって初めての教育実践の場となったドイツのザーレム校で掲げられたザーレム7か条が元になっていると考えられます。
(ザーレム7か条)
1. 子ども達に自己発見の機会を与えること
2. 成功と失敗のどちらも経験させること
3. 社会のために無私の機会を与えること
4. 静寂の時間を与えること
5. 想像力を育むこと
6. 競技をさせることは重要であるが、それが支配的にならないこと
7. 裕福で力強い子供たちを特権と言う気力をなえさせるものから
解放すること
なんでOBSに行こうと思ったのか?
一番大きな理由は、「OBSの知名度の無さ」とOBSの活動内容に惹かれたことです。
まず、知名度の無さについて書きます。僕が普段学んでいる大学の機関ではOBSは、認知されています。しかし、日本でOutward Bound と言っても、おそらくほとんどの人は分からないのではないでしょうか。わかる人は、日本国民の1%にも満たないんじゃないか??と思っています。そして、知っていても体験したことがない人もとても多いです。僕がともに学ぶ学生たちも、全員がOBSのことは知っていますが実際に体験したことがある学生はほとんどいません。価値が認められているのに知らない人が多い・知っていても体験しに行く人は少ないということに、大きなチャンスを感じました。現に、これはプログラムが終わってからあながち間違ってもいなかったということを実感しました(これはこのシリーズの最後に書きたいと思います)。
次に、その活動内容についてです。「奉仕・努力・不屈」という理念からも想像できる通り、活動の負荷のレベルはかなりハードです。身体的、精神的に相当追い込まれます。それは調べれば調べるだけわかりました。僕は、このプログラムを受けるまでキャンプをしたこともなかったのですが、初めてのテント泊は大雨の白馬岳でした。そんな状況でも構わず野営をします。僕の仲間たちが参加をしない理由も多くがこの活動のハードさだそうです。ただ、僕はこのハードさにどうしようもなく惹かれてしまったのです。冒険教育の指導者をしている僕ですが、実は中学高校での運動部特有の理不尽さや体育会系の雰囲気が大好物なのです笑。大学に入ってからのある種”生ぬるい”生活を変えられるんじゃないか?という期待もありました。
もちろん、「貯金が15万円たまった」「夏休みは本業のプログラムがOFFシーズンになる」などの現実的な理由もありました。(ちなみに15万円あった貯金は、このプログラムに参加するために10万円を支出したのち、600円まで減りました笑。)
今回の記事で、OBSのことや、僕の価値観なんかがお判りいただけたのではないかなと思います。ここからどんなことが起きて、どんなことを考え、何を得て帰ってきたのか、当時の手記を見て思い出しながら綴っていきます!