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実写「岸辺露伴は動かない」はなぜ成功したか 映画公開記念

 漫画の実写映画やドラマは基本的に駄作だ。ご多分にもれず2017年に公開された「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」も酷い評価を受けた。面白かったのは、公開前から既に十分叩かれていて、公開後に失敗と聞いても誰も驚かなかったことだろう。
 
しかし、その後に2020年から2022年の大晦日にNHKから全8話放送されたドラマ「岸辺露伴は動かない」は思いの外好評で、ついには「岸辺露伴はルーヴルに行く」の映画公開が決まった。これほど高い評価を得ている実写ドラマもなかなかないだろう。

そもそも「岸辺露伴は動かない」は荒木飛呂彦作「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作品として、作中で絶大な人気を誇った岸辺露伴を主人公にした短編集を中心に、そのご出版された小説やジョジョの本編からのストーリーを厳選し、実写化したものだ。初年度から圧倒的な支持を得て3年連続の放送に繋がった。成功の鍵はどこにあったのだろうか?

1、本編ではなくスピンオフの実写化であった
 多くの漫画実写が失敗するのは、単純にストーリーを知ってるからというのが大きな理由としてあるだろう。ストーリーに忠実になればなるほど面白味はなくなり、かといって原作から外れるても少なからずの批判が来る。このジレンマを見事に破ったのがこの作品であると言えよう。敢えて知名度の低いスピンオフ作品を選んだことが肝だった。岸辺露伴もジョジョも非常で有名でありながら、ストーリー自体はコアなファン以外は知らなかったのだから、それだけで価値があった。普通、実写ものはストーリーは捨てて、それ以外のところで如何に新しい価値を創出して原作の劣化版になるのを防ぐかが重要であるが、この作品では、原作に忠実に作るだけでも十分に価値があったのだ。

2、独自ストーリーと世界観の創出
 原作の「岸辺露伴は動かない」は短編集であり、不思議な世界観ではあることは共通してるが、一話一話は独立していた。しかし、ドラマ中では、一年ごとにテーマを定めそれについての話を様々なところから持ってきてリメイクしている。そしてこれが巧妙なのだ。特に2021年に放送された、「ザ・ラン」「背中の正面」「六壁坂」の三作品は見事で、「坂」をテーマにホラータッチで深い作品を作り上げた。前述した新しい価値の創出を見事に達成したのである。

3、スタンド表現の不使用とホラー路線
 スタンドを明確に表現しなかったこともプラスに働いた。全体としてのリアリティを向上させつつ、岸辺露伴という男のイカれ具合も際立たせた。ホラータッチでの作品だったのでそれらが上手く引き立てあって最高の作品になったのだ。個人的には主演の高橋一生も成功に一役買っただろう。見事な演技力で空間に適応し、違和感を感じさせなかった。

今回映画化された「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」は、原作は、荒木による同名のフルカラーコミック。2009年、かのフランスのルーヴル美術館が展開する「BD(バンド・デシネ)プロジェクト」の第5弾として発表された作品だ(単行本はフランス語版が2010年、日本語版が2011年に刊行された)。公開に向けて、胸を踊らせて待つばかりである。


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