見出し画像

猫又鬼の子(オリジナル短編小説)

猫又鬼

猫又鬼…それはかつて『妖怪闇夜大合戦』にて
妖怪達が争った時代に生まれた異種族
人に化け、裁きを下す妖怪

時代が移るにつれて猫又鬼は居なくなり、もはや絶滅してしまった。
….だが、ある悪魔が少女に妖怪へ変わるまでは

それは春がもう去ろうとしてた時期だった
その少女が生まれる日の数時間前の出来事…..

?「…」

お腹にいる生命は眠ったまま、だが水の音の中からある声が生命に聞こえた。

??「…..ぃ….ぉ…….!」

まるで何かを訴えているような叫び声
しかし遠く感じるように聞きとれないようだ

?「….?」

生命は眼を開き、前を見た。だが辺り全ては真っ暗闇に包まれていた まだ、誰かの叫び声が聞こえていた

??「お…..い…..!….人…間…!」


今度は少し距離が近づいた
生命は声を頼りに耳を傾け、その声の主を探す

??「起きろ!人間の子‼︎」

その声が完全に聞こえた瞬間、辺りの景色が一瞬に変わった。生命は戸惑っていた
さっきまで真っ暗闇の中にいた景色が突然空と水面の景色にガラリと変わったからだ
生命は声の主を探して辺りを見たが見つからない
だが、後ろからその主の声が急に聞こえた

??「やっと反応してくれたか…はぁ…はぁ…今のままだと全てが理解出来ないだろうからなぁ…はぁ…..はぁ….知識を送ってやるよ…」

その声の主は首を抑えて呼吸を整えながら説明した 声の主が左腕を前にかざし左手の内から水色の光の球が出来た。ある程度の大きさになったら生命の頭へと空中にふわふわ動いて頭の中へ消えていった、その瞬間に生命の知識が豊富に芽生えた。

?「…その首は大丈夫なの?」

第一声は声の主…いや、彼への心配だった
首を抑えている彼は少し眼を丸めて固まったが
直ぐに笑いに変わった

??「..ククッ、フフフ…第一声がそれかよ….フフッ…..だが….悪くないな、俺はもう死んだんだ…痛みなんかねぇーよ」

?「そうなんだ…それで、生まれる前の私に何か御用があるの?悪魔のお兄さん」

??「ああ…そうだったな…..単刀直入に言うと…『お前と契約』をしに来たんだよ。人間の子」

悪魔の彼は指をパチンッ!と鳴らし、古びた紙とカラスの羽ペンが出現した。
彼は悪戯に微笑む少年みたいな顔で生命に問いかけた

??「この契約書はお前の幸せを代価に新たな人格を生み出し、俺とお前に新たな力を得るものだ。どうだ?契約書にサインをするか?」

生命は少し考える素振りを見せて直ぐに答えを出した

?「…サインするわ、私の中ではこっちの方が楽しそうだしね」

??「アーハッハッハ!!!」

?「そんなに笑う?!別に可笑しくないと思うのだけれど…」

悪魔の彼は大笑いをし、その後咽せて咳き込むが
笑いながら生命に言う

??「ゲホッ!ゲホッ…い、いや…そんな理由で契約した人間なんてお前くらいだからなぁ…ハハッ」

?「そ、そうなの?普通だと思うけどぉ…」

??「普通じゃねぇーよ!ハハハッ!つくづく面白い奴だなぁ!お前はぁ」

?「そ、そう?」

??「そうだから言ってんじゃねぇーか(笑)」

悪魔の彼は大笑いし、生命は契約書にサインをした。契約書とカラスの羽ペンは消えて生命の身体から天使の輪っかと白い羽が生えた。

??「ククッ…では、新たな人格を作ろうではないか。俺達のな?」

?「それは良いけど…名前、教えてよ。貴方の名前」

??「俺の名前?…もうこれで三回目の転生だ、正直名前はどうでもいいんだよ」

?「なら、私がこれからの名前を付けてあげる。
…『裏』なんてどう?」

??「『裏』…見た目的に俺が悪魔だからそう付けたのか?」

?「そうだけど…悪い?」

また悪魔の彼は大笑いし、生命へ近づく
悪魔の彼はまた悪戯少年の笑みを浮かべて
生命の眼を合わせながら言った

裏「いや、気に入った。俺が『裏』ならお前は『表』だな」

表「…そうだね、私が貴方の『表』であり私にとっての『裏』なんだから。これから宜しくね?裏」

裏「ああ、此方こそ宜しくな。表」

二人は握手をする。お互い前から信頼をしている笑顔を浮かべながら

裏「さて…新たな人格を作ろう、俺達のな」

表「そうね、楽しみだわ」

裏「そうだな…では始めようか!」

裏は赤い魔法陣を発動し、表は彼の隣に立つ
頭から裏の声が聞こえた。

裏[…手を握れ]

表「…握ったわよ」

裏「よし…なら、行くぞ

我ら、新たな生命作り
一心同体 我らの身体消えるまで共に在る
契約の名の元に降臨せん!
出でよ!新たな人格者よ‼︎」

魔法陣と光と共に新たな人格者が生まれた
その生命は猫又と鬼が合わさった小さな赤ん坊の姿だった

裏「…これが俺達のか」

表「それにしても、貴方の要素が多いわね」

裏「確かに、でも性格はお前みたいだろうな」

新たな人格の生命はふわふわと空へと消えて行った そのまま星になるかのように。

表「…これから私達、どうするの?暇になるよ」

裏「ああ、そこは大丈夫だ。これからお前と俺はある世界で管理者として生きるからな、勿論さっきのアイツもいつからかなるさ」

表「そうなんだ…いつかは会えるんだね」

裏「ああ、その時まで楽しく待とうじゃないか」

表「うん…そうだね…」


end

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?