注釈

はじめてのポストの時に言及した通り、脚注が好物。

そして埋込を使ってみたかった。
前回の話に注釈をつけてみたかった。

正式な権利って誰が持っていたのでしょう

クリトストファーの受け継いだもの

銀河鉄道の夜という作品があります。私たちが読んでいる作品は第四稿に相当する最終形。最初の宮澤賢治全集(文圃堂)では、まだ最終形ではありませんでした。
イーグル印原稿用紙を使用した他の作品からは、創作時期が、また書き込みの推敲の跡などから、今日の形に至る改訂歴が詳らかになっています。多くの研究者、文学者(高村光太郎など)が関わることができたのは、好きにしていい、と言われたとはいえ、遺稿を託された弟の清六氏によるところが大きいと考えられています。校本・新校本が出た後でも、新しい発見によって新しいものが生まれ続けています。
トールキンの場合は、子息のクリストファー氏が深く関わっています。単なる遺産の受領者の一人ではなく、束教授の存命のころから、よき批判者であり、推敲や、等高線地図の作成などに関わり、死没後はシルマリルの公刊に向けて資料を整理、編集していましたので。

故人の文章を遺す作業

したがって、私たちは人の営為によってできないのであれば、(というのも、そのような機会は、私たちの力では無理であるから)、この弱くて、はかない存在の一片を、文学的業績によって残そうと執心するのです。 そして、私たちは、長く生きることができないのですから、私たちが少なくとも生きてきたという証を後世に伝えたいのです。

プリニウス書簡集 カニニウス・ルフスへ
※https://www.bartleby.com/lit-hub/hc/
bartlebyのオックスフォード・クラシック
Pliny the Younger (A.D. 62?–c.A.D. 113). Letters.
適当抄訳

引用も使ってみたかった。
上は、小プリニウスの手紙。

クリストファーは、功名心よりも、父の文章を完成させることに心血を注いでいたように感じます。
その長子であるサイモンは、クリストファーの指輪物語の映像化の態度に対立的で、映像化に賛意を示していました。クリストファーと永久的な絶交になる、とも言っていました。ついつい、祖父の大作で儲けようという功利主義的な目で見てしまいがち(私だけか)、サイモンはサイモンで、祖父の作品をより多くの人にしてもらいたかったのかもしれない。
ゲーム・オブ~、とかハリポタの成功をみれば、そういう気持ちも育つのかもしれない。親族一人一人にとっても、作品がどう残されるのがよいのか、異なる例といえるのではないか、と思った。
※2012年、2人は和解したことをサイモンが語っている。
※シルマリルがライセンス獲得に至らなかったのはLotrの時のクリストファーの考え「トールキン財団は映画との特定の関連を避けることが最善である」が活きていたからなのかな。

指輪物語のもう一つの側面

件のポリコレ問題、に対応する注釈

指輪物語は忘れがちだけど…でもある。

ポリコレの前に。
ハイファンタジーと言われている作品ですけれど、トールキンの述懐のくだりのメタフィクション部分はローファンタジーと言えますよね。
写本である、『西境(ウェストマーチ)の赤表紙本』をトールキンが西方語から英語に翻訳した作品であり、ヨーロッパと比定される地域の伝承らしき物語で、土地や神話的伝承との連続性の上に、上古の古い言語から、現代語とその古語を使用して翻訳されたものですから。

ベオウルフ

トールキンが翻訳したもので、今世紀になって公刊されたものに『ベオウルフ』があります。
元になった写本の来歴が、物語のように複雑です。
ウェストウィック(西の村)教会写本に、ある時点でベオウルフが含まれるノーウェル写本と一つに綴じられました。
これをロバート・コトン卿が購入し、私蔵図書館の皇帝ウィテリウスの胸像があった本棚の 15 番目の写本 (XV) として最初の棚 (A)に配架され、Cotton MS Vitellius A XVと呼ばれています。
さらにこれを収集したトルケリンの残した写本に収蔵された『ベオウルフ』をトールキンも翻訳しました。
妄想ですけれど、何人もの手によって書き連ねられ、トールキンの手に渡った赤表紙本と似ているな、と。
※赤表紙本の由来は『マビノギオン』を収めていることで知られるウェールズとの境(Welsh Marches)のヘルゲストの赤本であると言われている。

本筋に触れる前に、長すぎであることに気づく

次に作中本の一つである『Golden Book of Tavrobel』について書こうと思っていました。HoMMシリーズのThe Book of Lost Tales: Part Twoに記載されているイングウェやエルフワインの話の古いバージョンで、ルサニーの島がブリテン島になったよ、って話。
昨年11月に154の手紙が追加されたトールキンの手紙の最新版も触れねば、と思ったけど…長すぎますよね。
どの国の神話への接続を考えていたか、どの緯度に都市があるかを言及しようと試みようと思ったのですが…
人種の前に、どこの物語であるかがわかる例示をしたかったのですけれど。

というわけで『The History of Middle-earth』全12巻と『The Letters of J.R.R. Tolkien』(Revised and Expanded edition ハーパーコリンズ社から2023 年11月 9 日に発行されました。1.5倍に増えてお得です)の販促記事を終えます。ほんとうにごめんなさい。


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