親の会で出会った人々




先日、不登校引きこもりの親の会、セシオネット親の会※1に以前参加されていたセイジ君 の親御さんからお手紙をいただきました。 
親の会に参加なさっていたころのことを思い出してのお手紙でした。
現在は大学を卒業して地方で働いているというセイジ君。中学の野球部の顧問の指導で傷つ き、学校から遠ざかってしまっていました。

親御さんは参加の度に暗い顔で「先が見えない。」とおっしゃっていました。でも、その度に 先輩の親御さんに「いつまでも続くものじゃないですよ。」「お母さんが明るい顔をしていれば 子どもも気分が軽くなってエネルギーがたまってきますよ。」など声をかけられ、少し明るい顔 で帰っていっていました。

そんなセイジ君、都立のチャレンジスクール※2に進学しました。 そして高校での部活で元気を取り戻すことができたのでした。「今では中学に指導に行ってい る。」という報告には皆驚きもし、また喜んだものでした。大学に進学したという報告の後は親 の会は卒業となっていました。

「いつになったら学校へ行くのだろう。」と焦る気持ちの中で、ほかのお母さんの言葉から 「このままセイジがずっと家にいてもいいじゃない。」と思えた瞬間があり、その時ちょっと焦 りを手放したそうです。「思い返すとそれ以降、徐々に息子も動き出したのです。」と振り返っ ておられました。

これこそ親の会の皆さんの力ですね。


やはりチャレンジスクールで高校生活を楽しんでいたユミさんの親御さんの言葉です。
私立中学で不登校になったユミさんはずっと学校に行けない理由を家族に訴えていたのだそ うです。
ところが自分も含め周囲の大人が皆「そんなことで行かないなて・・・。」と取り上げなか ったとか。

「だからあのころの娘は泣くしかできなかったんですね。」としみじみと思い返して おられました。
親はついつい自分の経験から子どものことも判断してしまうものですね。


時々母親に手を出したり、イライラして壁に穴をあけたりする中学生。
親の会でそのことを話すと、今は大学生活を謳歌しているユキオ君のお母さんが「うちもそ うでした。でも、今思い返すと自分も手を出していたし、そんな時は自分も息子の話をちゃん ときいていなかった。引き金は私が引いてしまった時もありました。」と冷静に振り返って話し てくれます。

実はこのユキオ君のお親御さんも、参加したての頃は毎回涙を流していたのです。それで も、子どもの様子がだんだん上向いてくるとどんどん落ち着いてきました。そして表情も明る くなり、自分の経験から的確なアドバイスもしてくれていました。
そんな様子を見ると親御さ ん自身の成長を感じざるを得ません。


参加者は人の経験談をきいてふっと冷静になったり、「何とかなるかも。」と希望が持てたり。 そんなことの繰り返しで徐々に落ち着いて明るい顔になっていくのでした。

そのほかにも忘れられない人々との出会いの数々。その一つ一つが私にとっての宝物となっ てきたのです。

※1 セシオネット親の会:高田馬場で毎週第3土曜日午後2時から5時ごろまで開催の不登 校・ひきこもりの親御さんの会。現在は高田馬場の当事務所で開催している。 参加は自由で一回 500 円。興味のある方はどなたでもどうぞ。
※2 都立チャレンジスクール:主に小・中学校で不登校を経験した生徒や高校中退生のため の主に3部制の都立の高等学校。現在は都内に6校ある。

(文中ではプライバシー保護の観点から仮名とし、内容も少し変えてあります。

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