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びんばっちゃまと妖精さん黒山町編2-4

1985年ドクが造ったデロリアンは時速88マイルに達すると、発電装置へ電力が供給され、時速180マイルの高速で1955年の世界へ飛んで行った。

森山ノリユキさんは、この映画を何度も何度も繰り返し観てはタイムマシーンの完成を夢見ていました。


その日 森山さんは2人の若者と並んで立っていました。
2キロにも及ぶ参道が玄界灘に向かって真っ直ぐに延びている宮地嶽神社の鳥居の前に。
宮地嶽神社には息長足比売命が主祭神として祀られています。「何事にも打ち勝つ開運の神」として信仰されています。

2ヶ月前のこと

Innyakore•Pana開発研究所第2会議室
「森山さん、初めまして。私は開発チームのリーダーをしております大樹です。
大樹五郎です。
先輩、この度はご協力いただきありがとうございます!」
五郎さんは大きな瞳を輝かせて森山さんと力強く握手しました。
 会議室には研究者達が集まっていました。そして彼等はこう呼ばれています。

< Innyakore•Pana電機の13人>
大樹・五郎
アリーサ・さくや
イダガ・恭平
ショウジ・ルーカス
ジャネット・ヘックション
@・モモタロウ
ユーキ・173
クレバー・天津飯
シマンチュ・ケンタオ
ジュリーナ・ウタスキー
ミンミン・バンブラン
ルミー・モリシャン
リッチャンズ・マリー

 目前に迫った夢の実現に、心の震えを覚える13人でした。

五郎さんが言いました。「森山さんと共に時空を飛ぶ者を紹介します」

(連れがいると言うことか?)

「随行するのは、ミンミン・バンブランとショージ・ルーカスの2人です」

ミンミン・バンブランは、大樹五郎から是非開発に加わって欲しいとの要請を受けてフランスの研究所から参加しました。
そして、時空移動先で万が一トラブルが発生した際の法的措置対応担当として、法律に明るい最年少のショージ・ルーカスが選抜されたのでした。

「こちらへどうぞ ご説明します。」
「マシンはこちらです」

(えっ⁉︎   これ⁉︎    ママチャリ⁇ )

「驚かれましたか? ははははは そうです ママチャリです。
 もちろん特殊なエンジンを搭載しています。このエンジンはパイロットがペダルを漕ぐことによって時速280kmの速度になります。
280kmで助走を続け、徐々に加速され、時速320kmに達した時、時空の穴に入る事が可能になります。」

『で、そのタイミングは……』

「我々が滑走路と呼んでいる宮地嶽神社の参道は玄界灘の海に向かって真っ直ぐに延びています。
その参道の端から海に飛び出した先に、時空の穴が開くはずです。」

『もし、時空の穴が開かなかった場合は……海に落ちるのですか?』

「あ、はい。その可能性はあります。その為に海上には救助用のボートを用意します。安心して落ちて下さい。」

(安心して落ちて…と、言われてもなあ)

「それから大切なことが1つ、速度計の針が320を指した時、自転車のベルを鳴らして下さい。」

(ベル? ママチャリのベルを鳴らす???)

 五郎は過去の実験中に一度だけ時空の穴が開いた瞬間を思い出していました。
過去に何度も時速320kmまで加速させても時空の穴は開かなかったのです。
ある日の実験中、飛び出しに失敗して海に転落しかけた時、一瞬だけ海の上に黒い雲のようなモヤの塊が出現したことがありました。
それはすぐに消失してしまいました。
その時、五郎は閃いたのです(あれは、時空の穴に違いない!)

今までと何が違うのか一つ一つ検証を重ねました。
しかし、理由は分かりませんでした。

検証を始めて数ヶ月後、ユウキ173は友人のアイリーンと玄界灘沿いを散歩しながら暗い水面を眺めていました。
「あの時、チャリの前輪が地面を蹴った瞬間、何かの音がしたんだ。 でも何の音だったのか思い出せない」 ユウキ173は独り言を言った。

『チャリなら普通に考えてベルの音ではなかろうか?』
アイリーンはニヤリと笑って言いました。

「そうか、時空の穴を開くにはスピードだけじゃダメなんだ!着火剤だ!
ベルはトリガーなんだ!」

2025年2月2日夕方
森山さんはミンミンとショウジと共に銀のママチャリのペダルに足をかけ思い切り漕ぎ出しました。

リンリン リンリン リンリン


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