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カブトボーグのにわかファンが「人造昆虫カブトボーグ V×V 20-2.0」展に行ってきた話

2024年で放映18周年を迎えるTVアニメ「人造昆虫カブトボーグVxV」のイベントが、大阪府守口市で6月1日(土)に開催されたので行ってきた。展示会は5月30日から6月4日まで開催されており、そのうち6月1日と2日にキャストのトークショーがあるとのこと。

イベントの存在を知ったのはX(旧Twitter)で、おすすめフィードに公式のポストが表示されたからだ。自宅のあるエリアから守口市までは結構近い。乗り継ぎはやや面倒だが、片道1時間で行ける。

特に「人造昆虫カブトボーグVxV」というアニメのキャストトークショーをやる機会なんてかなり限られてるだろうから、これは貴重だ!と思った。抽選で30名が参加できるとのことで、迷わず応募。

申し込んだ

申し込んでから2週間と少しが経って、京阪百貨店から返事が来た。

当たった

人生において抽選で当選したのは、ゲッサン創刊号の読者プレゼントでWii版呪怨のソフトを当てた時くらいしかない。だから、会社で上記の当選メールを受け取った時、スマホを持つ手が少し震えた。

しかし、当選に喜んだのも束の間、なんともいえない不安を覚えた。「人造昆虫カブトボーグVxV」というアニメは好きだけど、何話で誰が何々を言ってて……みたいな情報が記憶野に染み込むまで見返すほどの強火ファンではない。「フリーオプション回や神回が好きだなぁ」というのがあり、特定のエピソードは何度か見返しているのだが、52話全てのエピソードの詳細をはっきり覚えているわけではないのだ。自分は所詮にわかファンなのだ。そんな自分が30席のうちの1つを取ってしまっていいのか?

まぁ、でも当たったものは仕方ない。「人造昆虫カブトボーグVxV」の名台詞「俺はどっちでもいいけど」はこのためにある。なんかよくわからんけど楽しそうだという考え方は、幸せに生きる上で有効な戦略である。そんなわけで、6月1日まで楽しみに待つことにした。


イベント当日、13時30分頃に守口市に到着。本当は駅近くのラーメン屋で昼ごはんを食べようとしたが、下調べをしておらず、昼営業が14時終了だったことを現地で知り、諦めた。

2024年6月1日、京阪電車 守口市駅。

駅から外に出ると待ち構えていたのは、守口市のイメージキャラクターである「もり吉」の像。京阪守口市駅に来たのは2回目(約15年ぶり)なのだが、初めて見た。魔法少女のマスコットみたいなキャラだな。

結構モダンな造形のもり吉

どうにも駅前がごちゃついている。こういう雑な雰囲気はいかにも大阪のベッドタウンという感じ。

もり吉の横で水を吐く謎のシーライオン

実はカブトボーグ関連以外に守口市を訪れた目的がもう1つあり、それが駅前の写真を撮ることだった。京阪守口市駅前の広場は、京都アニメーションによってアニメ化もされた美少女ゲーム「Kanon」に登場する舞台のモデルなのである。

「Kanon」の風景。雪が積もっている。

比べてみると、遊歩道の階段も周囲の建物もほぼ同じ。ただし、「Kanon」は北海道を思わせる北国の街という舞台設定なので、劇中では雪が積もっている。対して初夏の京阪守口市駅には、雪なんて1ミリも降っていない。しかし、「Kanon」にはかなり思い入れがあるので、この風景を見ているだけで心にくるものがある。

当日に撮影した京阪守口市駅前。雪は積もっていない。

自分が離れたあと、別の男性がベンチの写真を撮っていた。きっと彼も「Kanon」のファンだったのだろう。

駅前のベンチ。「Kanon」冒頭で主人公が待ち合わせに使う。

写真を撮って満足したので、本題のイベント会場へ。京阪百貨店は駅の横に隣接している。

迫力がある。

会場は6階。竹カゴの展示販売やブランドのポップアップストアに混ざって、「人造昆虫カブトボーグVxV」というタイトルが混ざっているのは不思議な感覚だ。

店内には、おしゃれな親子コーデとグンゼのポップアップストアの告知に並び、「人造昆虫カブトボーグVxV」と「コブラ」のポスターが並んでいた。

地方の百貨店でしか噛み締められない雑味がある。

6階は子供服や玩具売場がメイン。

会場で展示されていたものはほとんどすべてが撮影禁止で、イベント会場自体の写真は撮影していいのかがわからなかったので、手元にはない。

百貨店のイベントスペースということで、フロアの隅に仕切られたセミオープンな場所があるのかなと思っていたら、イベントスペースはフロアのど真ん中。中央に6席✕5列=30人分の椅子があり、一つ高い壇上にキャスト用の椅子と机が置かれていたのだが、なぜか乳児・幼児向けの服売り場に挟まれるような場所にあった。同フロアには高齢者向けの杖や補聴器の売り場もあり、「なんですかこの一帯は……」とでもいうような目でイベントスペースを見ていたご老婦もいた。

物販・資料展示エリアは、通路を挟んでイベントスペースと隣接。そして、物販のレジはちょうどイベントスペースを挟んで物販エリアと逆の位置にあった。どういう動線なんだ。ちなみに物販レジは女児向けのサンリオグッズコーナーの一部を間借りするように設置されていた。

レジ前の通路には、一部グッズの棚があり、さらに「人造昆虫カブトボーグVxV」全話のタイトルと場面がずらりと掲示されていて、ファンが「あ、この話はー」などの会話を展開していた。

さほど広くもないスペースなので、20人ほどいるといっぱいになる。見たところ、来場客の7割ほどが女性で、しかも20代くらいの若い人も結構いた印象。放映から18年経っているわけなので、もしかしたら本放送を見た時に脳を焼かれた直撃世代も混じっていたのかもしれない。

会場で展示されていたのは全話の台本、キャラクターのビジュアル資料、背景や舞台の資料、絵コンテなど。珍しかったのは、手書きの劇伴スコアが展示されていたことだ。好きな作品の資料を間近で見ることができるというのはやはりワクワクする。

会場に設置されていたフォトスポットはこんな感じ。

フォトスポットには結構な行列ができていた。

フォトスポットには、同行者に撮影してもらいながら「これで私もシドニー・マンソンに!」と感極まっていた参加者がいて、本当にカブトボーグのファンはいるんだ!と感動した。人と人のつながりがおおむねインターネットに移行してしまったSNS時代、18年前に放映された作品のファンコミュニティを肌で感じることができて、やはり来てよかったと心の底から思った。

このフォトスポットの横には、キャラクターのビジュアル資料や背景資料のフルカラーコピーが収録されたバインダーが2冊、そして実際に手にとって遊べるカブトボーグが置かれていた。12話「過ぎ去りし日!チャコール・グレイ・フォルクローレ」で過去のロイド安藤がボーグバトルで必殺技を出した際、背後に出現する謎のブルース黒人の資料もあったので笑ってしまった。

ファンが熱心に資料集を読んでいる横で、別のファンがカブトボーグを手にとってチャージインしているのは最高のファン空間だったのではなかろうか。しかも、手に取っている人の多くがチャージを3回しかしていなかった。そこにいる全員が「人造昆虫カブトボーグVxV」のことしか考えていなかった。

(これをオタク特有の早口で説明すると、カブトボーグという玩具は「チャージ」という動作を行うことで一定時間自走するのだが、アニメ「人造昆虫カブトボーグVxV」内で行われるボーグバトルのほとんどでは、チャージを3回に限るというルールが適用されている)

グッズの物販では、ロイド安藤の店の缶バッジ、そして個人的なお気に入りキャラである松岡勝治Tシャツを購入した。松岡勝治の声を担当した三橋加奈子さん(右から2人目)が着ているTシャツである。ちなみに購入後、フロアにあるトイレの個室でこのTシャツに着替えた。自分が全くファンらしいアイテムを持っておらず、周囲の参加者がTシャツやバッジ、うちわなどを持っていたのを見てビビってしまったためである。

それと、自分が「人造昆虫カブトボーグVxV」にはまったきっかけのエピソードである第29話「危険地帯! ダークバトル・ソルジャーズ」に登場するミラクル・グッド・テイスト・ケンダイザーのTシャツとステッカーも買った。フリーオプションだろ?見せてやるぜ、技術大国の力を!

また、このあとに行われるトークショーの抄訳を含むイベントレポート本が会場で予約販売されていた。トークショーは6月1日と2日の二回開催なのだが、自分は都合があって1日目にしか参加できなかったので、2日目のトークショーの内容も知れるのはありがたいと思い、迷わず予約した。税込1100円(送料別)だった。


トークショーの開始15分くらい前から、百貨店のスタッフがトークショーの入場者に入場を呼びかけていたのだが、「トークショーに参加するボーガーの皆様」というような呼びかけをしていたのが面白かった。子供服売り場のど真ん中によくわからないアニメのイベントスペースができている、という環境のせいでやや肩身の狭い思いをしていたのだが、スタッフの遊び心のおかげで少し和らいだと思う。

トークショーの会場には、事前にメールで送られていたQRコードをスタッフに提示して入場した。椅子には1~30までの番号が振られていて、どうやら抽選で椅子が決まっているようだった。自分の椅子の番号は4番。なんと最前列のほぼ中央である。眼前2mほどのところにキャストの椅子と机があり、驚くほど近い。自分みたいなにわかファンがこんないい場所に座っていいのか?

周りを見ると、カブトボーグ関連のグッズを身につけたりTシャツを着たりしているファンがやはりたくさんいた。中には当日会場で販売されていなかったガルフストリーム笹本のTシャツを着た人もおり、かなり気合の入ったファンなのだなということがわかる。しかも、ガルフストリーム笹本のマスクっぽいのを被っていたので、完全にガルフストリーム笹本推しなのだろう。

さらに、気がつくと自分の周囲に同じマスクを被ったファンが3人ほどおり、思わず「囲まれてる…」とつぶやいてしまった。でも、同時に「自分の周りには同じ作品を好きな人がいるんだ」という安心感もあって、最前列に座っていることへの緊張が少しずつ薄れていった。ありがとう、ガルフストリーム笹本。

トークショーは予定通りに始まった。トークショーを見れるのは30人だけ……と思いきや、セミオープンなスペースなので、通路と物販スペースに集まった人も普通にトークショーを見ることができた。イベント主催である京阪百貨店の人が説明するには、もともと普通にオープンなトークショーにするつもりだったが、万が一の混雑によるトラブルを避けるために30名抽選にして、当日は普通に後ろから見られるようにしていたとのこと。「普通に見れることがバレちゃいましたね」というようなことを言っていた。

トークショーに登壇したキャストは知桐京子さん、三橋加奈子さん、前田剛さん、松山鷹志さん。司会進行はプロデューサーの山崎立士さんだった。

トークショーの内容は文字起こししないようにということだったので、残念ながらここにまとめることはできない。ただし、いくつか個人的に好きなポイントがあったので、文脈を無視してメモを記載する。

・天野河流星(知桐京子さん)「優勝したぜー!っていいたい」
・ロイド安藤(前田剛さん)「メルカリで高く売れるんデェス」
・松岡勝治(三橋加奈子さん)「国民年金、払いましたよ」
・ビッグバン(松山鷹志さん)「素パスタをつまみにビールを飲んでる」

それと、実は当選メールに「トークショーの参加者には当日キャストへの質問をすることが可能」とあったので事前に送っていたのだが、現地で実際に読み上げられた。ペンネームをアニメ本編が好きな人にはわかるネタにしておいたので、司会進行の山崎さんがペンネームを読み上げた時、会場が受けたのは少し気持ちよかった。また、「会場に来てますか?」と聞かれたので恐る恐る手をあげたところ、三橋さんに「おそろいのTシャツ着てるー!」と言われたのは少しうれしかった。以上、オタク的ミーハーな感想。

キャストの方々は演じたのが18年前なので、さすがに作品の記憶もかなりおぼろげなのだが、18年間も作品を追い続けたファン、しかもこんな大阪の片隅で開催されるイベントに駆けつける人たちというのはやはり全52話の内容をことごとく把握しているような高レベルなファンが多い。キャストが「◯◯って感じの話があって」という話をすると、会場にいたほぼ全員が「ああ、あれね」というようにブンブンと首を縦に振っていた。また、キャストが「確か、✕✕っていう展開の話で……」と消えかかった記憶をもとに話すと、すぐ近くにいたガルフストリーム笹本マスクのファンが「それは△△のストーリーで……」と助け舟を出し、キャスト4人が「それだ!」となる場面が複数回あったのが印象的だった。


トークショー自体はおよそ40~50分ほど。話を聞いているだけだったが、非常に面白い内容で、終わるのがあっという間に感じた。キャストのトークショーはやはりファンコミュニティとある程度近い方が、臨場感があっていいかもしれない。もちろん近すぎるのもそれはそれで問題なのだが、自分が属しているファンコミュニティが生きているし生かされているというライブ感は、「自分はこの作品を好きでいいんだ」と思える。あくまでも自分だけの感想なのだけれど。

自分は基本的に気に入った作品を何度も繰り返して見る人間で、「人造昆虫カブトボーグVxV」というアニメはいつ見ても笑える作品なのでお気に入りなのだが、それでも好きという気持ちをリチャージしないとどうしても「思い出して見たくなる瞬間」が少しずつ減っていってしまう。こういうイベントが開催されると、また「思い出して見たくなる瞬間」が増えてくるので、可能であればまたこういうイベントに参加したいなと思った。月並みな感想ですが。

ちなみに、トークショーのあと、キャストの方とボーグバトルができるというファンにとっては最高過ぎるイベントがあったのだが、別用があったので泣く泣く現地を離脱。京阪百貨店を離れる前に、上のフロアにある回転寿司屋で日本酒を飲みながら寿司をつまんだ。帰りの電車の中で少しでも余韻にひたろうと、スマートフォンのdアニメで「人造昆虫カブトボーグVxV」を視聴した。

お客様の中に最強のボーグバトラーはいらっしゃいますか?

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