生産性向上のマクロ政策について

 何の話でもそうだが、生産性向上の話においても、マクロの議論とミクロの議論を混同しないことが大切だ。

①実質賃金の上昇のためには生産性向上が不可欠だ。
②生産性向上とは、例えばITを活用して作業を効率化したり、5S活動によって現場を改善することである。
③だから作業の効率化や5S活動を推進し、中小企業の生産性向上を推進する政策が有効だ。

 このような話は一見違和感なく読めるかもしれない。そして国や自治体の政策もこのような説明をしがちだ。わかりやすいから。しかし本当だろうか?
 ①の実質賃金の上昇のためには生産性向上が不可欠だというのは真実だが、国や地域の統計上のマクロの話だ。企業の生産性向上はミクロの話だ。国や地域での生産性と企業の生産性の話は全く次元の違う話である。
 マクロの生産性向上においては、人、物、金といった全体の経営資源を生産性の低いビジネスから生産性の高いビジネスにシフトして行くことが、生産性向上の本丸だ。個々の企業の生産性を向上することとはイコールではない。

 マクロの生産性向上の本丸は現場改善などではなく、①挑戦、②構造改革、この2つに尽きる。これらはコインの裏表でもある。
 ①挑戦については、近年、前向きに変わってきたと思う。直接金融の環境なども改善しているし、何より起業に対して新しい考え方を持つ若い人が増えてきたように感じる。
 ②構造改革については、人口増加、経済成長時代のシステムを引きずっている雇用制度、教育制度、社会保障制度を変えていくことが必要だ。誰でも考え付く程度のことで、改善すべき点は山ほどあるのだが、既得権にメスを入れることになり痛みを伴うので簡単には進まない。この話を突き詰めると、個人主義と集団主義という明治維新以来変わらぬ日本の価値観の対立軸に行き着く。
 きっと日本では個人主義的な方向性の構造改革はできない。日本型のハイブリッドなあり方を考えて行かなければいけないと思うようになった今日この頃

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