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ポルトガルで処方された痩せ薬

 先日ネットニュースを見ていたら、体内の脂肪を排出して体型をスッキリさせるという薬が日本で手に入るようになったそうだ。そういえば、ポルトガルで似た様な薬を飲んで苦戦した経験があるので、その話を一つ。但し、これは20年も前のことで、日本での新薬とは全く別物である・・・念の為。

 ビール大好き人間にとってポルトガルは楽園、ビールが飲料水より安いかほぼ同等、日本からの出張者が夕食時にミネラルウォーターを頼もうものなら皆でビールを勧めることは当たり前、当時は会社の昼食時にも冷蔵庫にある小瓶のビール1本なら許されていた。

 更に言えば、硬水の水道水の替わりにビールを飲むポルトガル人も多く、飲食店で日本の様に泡たっぷりで提供されようものなら、泡などいらぬと一悶着が起きても不思議ではないお国柄。泡無しのグラス上面スレスレまでのビールが飲めるポルトガルが懐かしい。

 もっと余談だが、ドイツのレストランではグラスの上部に線が引いてある処も多く、その位置までビールが入ってなければ注ぎ足しを要求できるとか。なんと言っても日本の生ビールは泡が多すぎると思いませんか?

 本題へ戻って・・・、昼でも夜でも状況が許せばビールを楽しみ、新鮮な魚介類が豊富でシンプルだが美味い料理と焼きたての香り立つパ(オ)ンをオリーブオイルにたっぷりと浸して食し、数えきれない銘柄のワインを試すという生活を続けているうちに、体型の劇的変化もさることながら生活習慣病を示す数値がどんどん悪くなって来た。

 年に一度の定期健康診断はイギリスで受けるのだが、その検査結果をもってクリニックで対応を相談すると、体内から脂肪を排出できる薬の服用を勧められた。化学物質は嫌だと言うと、主成分は牡蠣の貝殻だから大丈夫との事で先ずは試してみることに。

 飲み始めて数日すると便の出方が少しスムースになったかなって感じ、水洗後に少々黒っぽい濃いオレンジ色の脂分が便器に残っているのが気になったが、食生活を大きく変更することなくコレステロールなどの数値が改善されるのなら簡単でいいなと思いしばらく続けていた。

 会社から1時間半くらい運転してリスボンの自宅に戻る金曜日、昼食で食べたモノのせいなのか、下腹が若干張った感じがしたが気にせず、仕事を終えて帰宅する前にトイレへ寄って、ちょっと勢いよく用をたしたその瞬間、後ろから何かがびゅっと出た。

 えっ!何? 慌てて個室に入ってズボンを下ろして確認したら、例の濃いオレンジ色の脂が出ているではないか❢ 

 オイ オイ オイ、なんてこった
❢ 

 仕方なくトイレットぺーパーを丸めて挟み込んで応急処置、更に、車のシートを汚さない様にミネラルウォーターをパッケージしているゴワゴワのプラスチックシートを拝借してお尻の下に敷いて自宅へいざ出発。

 高速道路までの曲がりくねった一般道、自分の名が付いたコーナー(注:別の投稿をご参照ください)を無事抜けて、先の交差点が赤なのでいつもの感じでブレーキを踏んだら、またもや”しも”の方でじわっといやーな感じ。

 またかよ❢  しかし、ここで確かめるわけにもいかず、高速道路に乗ってしまえば交差点もないから大丈夫だろうと運転続行。

 出発して1時間くらい経過した高速道路上、なんだか”しも”の方がまたもやホンワカと暖かい、じわじわと脂分が染み出しているような気がして我慢できずサービスエリアへ入り、トイレへ飛び込んだ。

 恐る恐る確認したら案の定、またもや濃いオレンジ色が❢ 

 なりふり構わず、トイレットペーパーを引き出して何重にも折りたたんでズボンの中に入れて、ずれない様にちょっと前かがみにそっと歩いて車へ。

 幸いにしてその後は、更なる大きな脂漏れもなく無事に自宅へ辿り着き、試練の金曜日は終わった。しかしながら、この日以降の生活には若干の変化が・・・

 トイレ以外ではむやみに下腹にチカラを入れるのは避けて、パ(オ)ンを浸したりサラダにもかけるオリーブオイルを極力使わないといった食生活の見直し、長距離ドライブの前日はこの薬を飲まない等々、細かな心配りをしてその後は日本に戻るまで深刻な脂漏れに見舞われることはなかった。

 本来の目的である、生活習慣病に関しては劇的な改善があったわけではないが、それ以上悪化することもなかったので良しとしよう。日本で入手できるというその薬、興味津々ではあるが、試す勇気は湧き出て来ない。


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