「食と農の貧困」アクションでは、参議院選挙を前に各党に政策を提言しました。その回答を報告します。

この列島を覆う貧困の現実はいっそう深まり拡がっています。なかでも食をめぐる現状は深刻です。「食べられない」層が都市で拡がる一方で、食をつくる側でも、米価の暴落や生産資材の高騰で営農が立ち行かなくなり、耕作放棄・離農が増えています。


参院選挙を前に「食と農の貧困アクション」では、都市と農村に拡がる貧困の実態を踏まえながら、その解決に向けて各政党に政策を提言しました。自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、NHK党の6党から回答がありました。

提言は「基本的政策」と「緊急課題」の二つに分かれています。6項目の「基本政策」に対する各党への要請とそれに対する回答をお伝えします。あわせて、各党の回答に対する私たちの所見をお示しします。参院選挙で政党を選択する際の参考にしていただければうれしいです。

◎各党への要請

2022年6月8日
各党 政策担当者 様

「食と農の貧困アクション」からの提言に対するご見解表明のお願い

 連日の国政への取り組みに敬意を表します。
 さて、私ども「食と農の貧困アクション」は、コロナ禍で食べることに困難が発生していることを気遣い、自分たちが生産するコメと野菜を自分たちができる範囲で送ろうと足掛け3年取り組んできた農民・市民グループや、都市で仕事も住まいも失い、リアルな飢えに直面している人たちとともに活動している反貧困ネットワーク、外国からの移住者の人権と生存権確保のために動いているグループ、女性の貧困問題に取り組む仲間、大都市の貧困地帯で居住者とともに活動する人たちで構成しています。呼びかけ人は下記です。
 私どもは今次予定されている参議院議員選挙にあたりまして、別紙のように提言を表明し、各党の見解をお伺いしたいと思っています。つきましては、大変お忙しいことと存じますが、ご回答をお願い申し上げます。
ご返信については、6月22日(水)までに、下記の事務所宛の郵送または大野・市村へメールでお願いいたします。お問い合わせも大野または市村にお願いします。なお、提言をメール等でもお送りできますので、必要がありましたらご連絡をお願いします。

「食と農の貧困アクション」呼びかけ人(順不同)
天明伸浩(コメと野菜でつながる百姓と市民の会、新潟・百姓)
峯村正文(上越有機農業研究会、新潟・百姓)
川崎吉己(置賜百姓交流会、山形・百姓)
近藤康男(三里塚・地球的課題の実験村)
西沢江美子(秩父雑穀自由学校)
瀬戸大作(反貧困ネットワーク事務局長)
稲葉奈々子(移住者と連帯する全国ネットワーク貧困PT)
中村光男(一般社団法人あじいる)
高橋知里(特定非営利活動法人PARCIC)
中島由美子(全国一般労働組合東京南部委員長)
本田次男(きょうと夜まわりの会)
平賀 緑(京都橘大学教員)
大野和興(農業ジャーナリスト)
市村忠文(特定非営利活動法人日本消費者連盟運営委員)

◎「基本的政策」についての各政党からの回答

◆食と農の貧困アクションの提言 1.農業経営形態・生産する作目・畜種の実態に応じ、生産費及び所得を補償する価格支持制度を確立し、持続可能な農業生産を確保する。

自由民主党  その他: 全農産物の価格支持制度を導入した場合、需給事情や消費者のニーズが生産者に的確に 伝わりにくくなり、生産者の経営感覚の妨げとならないか、農業構造の固定化につなが り、消費者ニーズに応えられなくなるのではないか、内外価格差の要因となり、輸入増 加を招くのではないかなどの問題点があり、かえって持続可能な農業生産を阻害する恐 れがある。

公明党 その他: 生産費及び所得を補償する価格維持制度については、すでに、収入減少を補てんする保険制度やナラシ対策、酪農経営・野菜価格安定対策等の施策を実施しております。さらに、米の需給安定や自給率の低い穀物の本作化を支援する水田活用の直接支払交付金等の施策も推進しており、引き続き、これらの施策を充実させつつ、持続可能な農業生産を確保します。

立憲民主党  賛成/検討可能: 農業者戸別所得補償制度を復活し、持続可能な再生産を確保すべき。また収入保険制度については、農業者戸別所得補償制度と一体となって真に農業者の経営の安定に資するよう、制度の対象となる農業者の範囲等について検討していくべき。

国民民主党  賛成/検討可能

日本共産党  賛成:「食と農の貧困」の「農」に関していえば、多くの作物・畜種で農業者の所得があまりにも少なく、大多数が農業では暮らしていけないことにあります。生産費及び所得を補償する価格支持制度の確立は、「豊かな食や農」の出発点であり、国政がなによりも力を入れるべき課題です。

NHK党 反対: 農外所得が増している現実もあります。


◆食と農の貧困アクションの提言 2.全国一律の最低賃金制度を確立し、早急に時給1500円を実現、雇用形態・国籍・性差・年齢に関わりなく公平に適用する。

自由民主党  反対: 地域毎の各種指標の差を考慮せず、全国一律の最低賃金とすることは、かえって雇用が 失われるおそれがあることから、慎重な検討が必要です。 最低賃金について、まずは、「できる限り早期に、全国加重平均 1,000 円以上」となる ことを目指すこととしており、1,000 円到達後も、引上げに取り組んでいきます。なお、 地域別最低賃金は、原則として、すべての労働者とその使用者に対して適用されます。

公明党  その他: 最低賃金を急激に引き上げれば、急激なコスト増に耐えられなくなった経営者は給与の削減やリストラといった対応を余儀なくされ、倒産や失業者の増加を引き起こす恐れがあります。例えば、韓国では、2018年1月に一気に16%の引き上げを実施した結果、多くの中小・小規模事業者が廃業に追い込まれ、雇用も減少し、本来、最低賃金の引き上げで救おうとした方々の職が失われました。一方、徐々に水準を引き上げてきたイギリスでは雇用への悪影響は出ておらず、経済の実情に合わせた引き上げ方を採ることが重要です。公明党は、最低賃金を年率3%以上を目途として着実に引き上げ、2020年代前半には全国加重平均で1,000円超に、2020年代半ばには半数以上の都道府県で1,000円以上へと引き上げ、地域間格差を是正することをめざします。

立憲民主党  その他: 時給1,500円を将来的な目標に、中小零細企業を中心に公的助成をしながら、最低賃金を段階的に引き上げます。

国民民主党  その他: 最低賃金を引き上げ、「全国どこでも時給 1150 円以上」を早期に実現します。そのための中小企業支援を強化します。最低賃金は着実な引上げを図ると同時に、実現可能な水準を模索することが肝要です。

日本共産党  賛成: 全労連の最低生計費調査では、地方では住居費が安くとも交通費は高いなどで、生活費は全国どこでもほとんど同じことが明らかになっています。地域最低賃金821円の鹿児島市の生計費1584円に対し、地域最賃1041円の東京都北区は生計費1664円です。最近の物価高騰も考えれば、全国一律(だれでもどこでも)最賃1500円は最低限必要です。最賃格差のために県境を越えた労働力移動が発生し、地方経済にも深刻な影響を与えています。最低賃金の引き上げにあたっては、社会保険料の事業主負担分軽減など、赤字の中小企業にも実効性ある支援が行えるように、大企業に減税しすぎて増えた内部留保に時限課税して5年間で10兆円の財源を生み出します。全国一律1500円で賃金の底上げを図れば、個人消費を拡大し、賃上げと成長が好循環する「やさしく強い経済」をつくれます。

NHK党  反対: 特定最低賃金も存在し、金額の一律にこだわるべきではないと思います。また、障害者、使用期間中、職業訓練中、軽易労働、断続的労働は減額の特例があり、それによって雇用が即されることもあります。


◆食と農の貧困アクションの提言 3.非正規雇用を廃止し、無期雇用を原則とする。

自由民主党  反対: 平成 24 年の労働契約法改正時の労働政策審議会において、合理的理由のない有期契約 を禁止する入口規制は、①合理的理由の該当性の紛争を招くとともに、②雇用機会を減 少させる等の指摘があり、導入に至らなかったものと承知しています。

公明党  その他: 2021年4月に中小企業へ適用が拡大した「同一労働同一賃金」に基づき、非正規雇用の処遇改善を推進するとともに、正社員化への支援を推進します。

立憲民主党  その他: 雇用は「無期・直接・フルタイム」を基本原則とします。派遣法の見直しなどにより、原則として、希望すれば正規雇用で働ける社会を取り戻します。非正規雇用については、臨時的・一時的なものであるべきことを明確化し、入り口規制(雇い入れ要件)の導入と出口規制(更新期間や回数要件など)の改善を図ります。

国民民主党  その他: 非正規雇用については、臨時的・一時的なものであるべきことを明確化し、入り口規制(雇い入れ要件)の導入と出口規制(更新期間や回数要件など)の改善を図ります。また同一労働同一賃金を徹底するとともに、社会保険の適用や差別禁止の徹底により安心を確保します。

 日本共産党  賛成: 非正規雇用労働者は、正規労働者の6割弱という低賃金に加えて、短期・細切れの雇用契約の更新をくり返し、つねに雇用不安をかかえて働いており、コロナ危機でも真っ先に解雇・雇止めの対象とされました。無期雇用を原則とし、同一価値労働同一賃金と均等待遇の原則を法律に明記し、非正規雇用の経営にとってのメリットをなくし、労働契約に無期転換権を明記させ、非正規雇用の正規化をすすめます。日本共産党は、正社員=無期雇用が当たり前の社会をめざして、パート・有期雇用労働者均等待遇法の制定を提案しています。有期雇用については、臨時的・一時的業務、合理的な理由がある場合に限定するとともに、非正規労働者であることを理由とする差別を禁止します。

NHK党  反対: 労働形態の多様化や労働者の流動化は時代の趨勢だと思います。併せて、雇用形態も多様化しています。日本に見られる強い解雇規制は維持するべきだと考えますが、正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトなど必要とされる雇用形態を選択できることも労使にとって重要で、個々の能力よる処遇があることも当然のことだと考えます。


◆食と農の貧困アクションの提言 4.女性に過重な負担を強いている不安定雇用、男女賃金格差を解消する。

自由民主党  検討可能: 誰もが納得した待遇のもとで希望に応じて働くことができるよう、同一労働同一賃金の 徹底等による非正規雇用労働者の待遇改善や、キャリアアップ助成金等による正社員へ の転換等の支援を進めます。 また、労働者 300 人超の事業主に対して、男性の賃金に対する女性の賃金の割合の開示 を義務付け、7月に施行することとしています。

公明党  賛成: 関連する党の政策より抜粋。
○デジタル人材不足はわが国の課題といわれる一方で、コロナ禍により女性の雇用状況の悪化は深刻です。デジタル職は非肉体労働で勤務場所の制約も少なく女性に向いている職種であることから、女性をデジタル人材として育成し、テレワーク就労・起業に結びつける「女性デジタル人材育成プラン」を推進します。これにより、就労に直結するデジタルスキルが習得できる公的職業訓練等の充実、デジタルスキルを身に付けた女性が就労できるよう柔軟な就労環境の整備、所得の高い就労促進など取り組みを加速します。
○管理職・役員の女性比率を向上させ、男女の賃金格差を是正するとともに、さまざまな課題・ 困難を抱える女性に寄り添った支援など地域における女性活躍に資する取り組みの一層の充実を図ります。
○女性特有の悩みやリスクに対応するオンライン相談、女性の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテックの推進、生理休暇制度の取得促進、学校・公共施設での生理用品の無償提供などを進めます。あわせて更年期障害の実態調査を踏まえ、職場における配慮や休暇制度など支援策を講じます。
○各企業における女性活躍の状況や男女間の賃金格差の実態を「見える化」し、男女間賃金格差の是正、女性のさらなる活躍促進に取り組みます。また、ハラスメント対策等の女性議員を増やすために有効な取り組み、周知を進めるとともに、いわゆるクォータ制についての議論を進め、政治分野における女性の参画を推進します。

立憲民主党  賛成/検討可能: 派遣法の見直しなどにより、原則として、希望すれば正規雇用で働ける社会を取り戻します。・女性の賃金水準は男性の水準の7割台にとどまり、賃金格差が大きく開いたままです。また、同じ価値の仕事でも、非正規雇用などを理由に賃金が低くなることが多く、不公平です。こうした処遇の改善を目指し、まずは立憲民主党が提出した「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部を改正する法律」(同一価値労働同一賃金関係)を制定します。法律には、合理的と認められない待遇の相違を禁止すること、事業主の説明義務の対象に合理的と認められない待遇の禁止等に反するものではないと判断した理由等を追加すること、待遇格差の是正は正規雇用の待遇を低下させるのではなく、非正規雇用の待遇の改善によって行われるようにすること等を盛り込み、現行の同一労働同一賃金の法制度の不備を改めます。その上で、ILO第100号条約の遵守徹底を図るため、職務にふさわしい待遇を設定するための職務の価値の評価方法の調査研究等を進め、同一事業主の下だけでなく、産業間・地域間・企業規模間においても同じ価値の仕事をすれば同等の賃金が支払われることを確保し、処遇格差の是正が図られるよう、「同一価値労働同一賃金(均等待遇)」の法定化を目指します。

国民民主党  賛成/検討可能

日本共産党  賛成: 男女の賃金格差は、年収で240万円、生涯賃金で1億円にものぼります。正社員でくらべても女性の賃金は男性の7割、非正規・不安定雇用では4割です。女性の人格的自立の土台である経済的自立はもちろん、退職金や年金の低さなど、生涯にわたり大きな影響を与えています。この解消は、ジェンダー指数世界120位という不平等社会を是正する上での土台だと考えます。男女の賃金格差解消の上でも、非正規から正規への転換をすすめることは不可欠です。わが国も批准しているILO条約「同一価値労働・同一報酬」(100号)にもとづき、格差解消の取り組みをすすめます。同一価値労働同一賃金をはじめ、均等待遇、間接差別禁止を、労働基準法、男女雇用機会均等法、パート労働法、労働者派遣法などに明記し、労働行政が監督・指導できるようにします。男女賃金格差の状況の把握・公開が、この7月から一定の企業に義務づけられますが、これは日本共産党が国会で繰り返し求めてきたものです。国としても男女賃金格差の実態を把握し、是正の行動計画を策定するべきです。

NHK党 賛成: 賃金の男女差の解消は重要なことだと考えます。しかし、女性の中には昇進や責任ある役割を望まない人も多く見られることも事実です。


◆食と農の貧困アクションの提言 5.仮放免を含むすべての移住者及びその家族の生存権・基本的人権を尊重し、日本国籍保有者と同等の諸権利、公的サービス・社会保障を適用する。

自由民主党  その他: 外国人に対する日本国籍保有者との同等の諸権利、公的サービス及び社会保障の適用に ついては、その性質や、内容、目的等によって適用の可否等が異なることから、各所管 省庁等において法令等に基づいて適切に対応しているものと承知しています。 なお、退去強制が確定した外国人については、速やかに日本から退去することが原則と なっております。

公明党  その他: 日本で生まれ育ち、納税の義務等を果たしている永住外国人については、地方参政権など、日本国籍保有者と同等の諸権利を付与するべきと考えます。仮放免中など在留資格のない外国人は、人道的な配慮が必要とされる場合に、法務大臣の判断で特別に在留許可がなされ、多くの方は公的サービス等の適用対象になります。外国人の方の実情に合わせて、適切に対応できるようさらに議論を重ねていきます。

立憲民主党  賛成

国民民主党  その他:: 社会保障制度は日本国民にとって非常に重要なものです。在留資格や住民登録の有無にかかわらず在住外国籍住人全ての加入を認めるべきという質問は、質問自体が不適切と考えます。現在でも日本での医療保険利用を目的とした訪日、在住のケースも見受けられることから、早急な実態把握と改善策を講じることが必要です。

日本共産党  賛成: 仮放免を含め、すべての移住者とその家族の基本的人権を保障する秩序ある受入れと、日本社会に定着し、共生していける総合的施策が必要です。

NHK党  反対: 移民と外国人労働者は区別するべきで移民政策には反対です。


◆食と農の貧困アクションの提言 6.生活困窮者への手厚い食料支援を農業・食料政策の重要な柱として制度化する。

自由民主党  その他: 生活困窮者の支援の在り方については、農業・食料政策としてではなく、社会福祉の問 題として議論すべきです。

公明党  その他: 政府が本年4月に決定した「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」には、公明党の主張により、「生活困窮者等支援民間団体活動助成事業を拡充し、孤独・孤立に陥る危険性の高い生活困窮者等に対し、食料の提供等の支援活動を行うNPO法人等の取組を支援する」ことが盛り込まれました。引き続き、生活困窮者等への食料支援を推進します。

立憲民主党  賛成/検討可能: サプライチェーン全体の連携により食品の廃棄を抑制し、フードバンクなどを通じて生活困窮世帯への支援や「子ども食堂」などの福祉分野での活用を進める取り組みを支援します。

国民民主党  その他: 消費税減税やガソリン減税など「家計減税」で家計の消費力を高めます。燃料価格などの高騰から家計を守るため10万円の「インフレ手当」を給付します。

日本共産党  賛成: コロナ危機と物価高騰で食料を買えない生活困窮者が増えています。食料支援を政府の農業・食料政策の柱に据えることは、生活困窮者に生存権を保障するとともに、それを通じて農産物の安定した需要先を確保し、生産者の経営支援にもなります。

NHK党 反対: 生活困窮者への制度は既に存在しますし、憲法第25条生存権を保証されています。


【設問に対するわたしたちの所見】


【設問1】自民党の回答は、生産者の存在を無視し、自由放任というカビが生えた政策思想に貫かれたものとしか思えません。公明党は現状追認。いずれも現在、農業・農民がおかれている破滅的状況への認識が全く感じられません。立憲民主党の回答にも現状を変えるという意志が見えない。「生産費及び所得を補償する」という」意味を理解していないのではないかと思います。日本共産党を除き、農業政策を体系的に考えようという意志が見られないのは残念というしかありません。

【設問2】現在深刻化している日本の貧困の根底にあるのは低賃金と働く権利を認めない劣悪な労働条件にあります。後者については次項で述べるとして、ここでは低賃金について述べます。回答を拝見すると、与党の自公、野党第一党の立憲は、最賃については段階的引き上げを主張していますが、いまでさえ必要生計費に満たない最賃に、物価高騰が襲っている現在、こうしたこま切れの対策では、働くものの貧困化をますます進め、個人消費の減退によって経済そのものもいっそう低迷することは明らかです。いま政治がまずやらなければならないことは、日本の低賃金構造を思い切って打破することだと思います。また、いま農民を苦しめている低農産物価格は、低賃金構造によって規定されています。その意味で、農民は最賃引き上げを自分のこととして考えています。
 また、いま市民が困っている問題に医療費、教育費、家賃があります。社会政策としてこれらにかかる経費を下げる政策をとるべきです。働くもの自らの再生産を可能にする最賃と合わせ、暮らしの基盤を支える医療、教育、住居費への公的支援は、いまやグルーバルスタンダードであることを付記します。

【設問3】この問題は、人間の普遍的権利である「働く権利」に関わる問題です。いま、この国の市民は「働く権利」の代わりに「失職する自由」を押し付けられています。これに対して自民党は10年前に労働審議会を持ち出して有期雇用制を擁護、時代錯誤ぶりを発揮しています。非正規雇用は経済的貧困として現れますが、それは教育の貧困をもたらし、貧困を将来世代に引き継ぐという意味では、保守政党としては極めて深刻に受け止めなければならないことであるが、そうした認識が見られないのは、きわめて深刻。
 公明党は「正社員化への支援」、立憲は「原則として、希望すれば正規雇用」、国民は「非正規雇用については、臨時的・一時的なものであるべき」と、非正規雇用に異議を唱えていますが、明確に否定する言葉はなく、一定の必要性を認めている印象を受けます。大企業の側は政治のこうした姿勢を利用して低賃金と働く条件の劣悪化を作り出し、莫大な内部留保を作り出していますが、日本共産党を除き、それへの言及がないところに、いまの政治の姿勢があらわれています。

【設問4】やはり女性を意識しなければならないということで、各党ともそれなりに前向きの方向を出しいるのは、なんとなくほほえましい感じではありますが、付け焼き刃の感がないでもない。公明党の、デジタル分野こそ女性の活躍の場という見当違いのリキミ、立憲の「原則として、希望すれば正規雇用で働ける社会を取り戻します」といった言葉を読むと、大丈夫かなあ、という気がしないでもありません。本気度が疑われる。同時にいえるのは、各党に前向きの姿勢をとらせた背景には、女性の運動があることを示していることです。当事者の運動が現状を変える力になることを教えてくれ、希望が生まれます。

【設問5】移住者の問題は普遍的な人権問題であるという認識が自公には欠けているのが印象的です。
また国民民主党の「在留資格や住民登録の有無にかかわらず在住外国籍住人全ての加入を認めるべきという質問は、質問自体が不適切と考えます。現在でも日本での医療保険利用を目的とした訪日、在住のケースも見受けられることから、早急な実態把握と改善策を講じることが必要です。」という認識自体が、差別と排外主義そのものです。ここで言及されている「医療保険利用も目的の来日」という事実は確認されておらず、うわさをもとにした少数事例をもとに政治が排外主義をあおる古語に恐怖を覚えます

【設問6】この提案の大事な点は、困窮者への食糧支援は善意やチャリティではなく、「食べる」ことは基本的人権であり、そのために一人も食べられない人を出さないために、国の農業・食料政策の基本として位置づけ、制度化すべきだという点です。「生存権の問題」と指摘した日本共産党を除き、どの党もこの問題をチャリティで片付けようとしているのが、気になります。いま必要なのは、ムラとマチの双方を包摂した政策です。農と食・農と食の貧困を政策として一体としてとらえ、一貫した・包括的なものとすることの重要性を指摘しておきます。
 食料危機がくるという危機感のもとで、国の自給論や食料安保論、食料主権論などいろいろ出ていますが、多くは国家をベースとした論議で、一人一人の「食べる権利」「食へのアクセス権」にまで下ろして政策論を組み立てるには至っていません。各党の回答はその反映でもあるかと思います。その意味では、私たち運動側の力不足の反映でもあります。
 付け加えますと、食の貧困は住の貧困の裏返しでもあります。生のコメや野菜を手に入れても、調理できなければ(調理する設備と場所、時間がなければ)無駄になってしまいます。手を加えなくても食べられるものしか食べられない、という食をめぐるもうひとつの貧困(安全性、質)の問題に突き当たります。連鎖し、連環し、重層化する貧困の中の「食と農の貧困」をどうとらえるか、公的な制度化をどう図るかもまた、運動側の課題です。

以下各党のから寄せられた回答全文を政党別に添付します。


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