曇天
朝から駆け込みの救急。
初めての緊急走行だった。
段差を優しく抜けるように、アクセルは急アクセルにならないように、ブレーキは入れる時も抜く時も優しく…
エンジンブレーキを使って走らなきゃ…
そんなことを考えながら走っていると全てを忘れられる。
嬉しかったこと、嫌なこと、全て。
自分は昔からそうだった。
ひとつの物事に集中すると他の物事など、目もくれず時間を忘れてのめり込んだ。
その結果が今の自分を作っている。
資格を取れたのも、希望通りの就職を出来たのもそのおかげだと思っている。
こう書くと肯定に捉えられるように見えるが決してそんなことはない。
このせいで、数多くの問題を引き起こし、周りの人に多大な迷惑をかけてきた。
謝っても謝りきれないものも数多くある。
雨の中の腹痛による救急。既往歴に癌がある病者。
救急を呼んだから以上は全て救急適応症例だ。
自分の気持ちを表す様に、外は大粒の雨。しかも降り止まない。
不思議とこういう時に限って、空と気持ちが一体化する。
涙が出ない分、空が泣いてくれているのだろう。
涙が地域に伝播している様にも感じる。
せめて、少しだけでも話が出来たら…
そんな淡い考えはとうに否定されているという事を分かっているはずなのに…
何故か悪あがきしてしまう。
こんなにプライベートで気持ちが揺らぎ、焦ったのはいつぶりだろうか。
そんな自分が悔しく思う。
冷静な考えをしてなければ、自分が自分でなくなってしまい訳が分からなくなるから。
焦ったところでいい方に転がった試しがない。
せめて、今日ぐらいは泣かせて欲しい。
赤の他人とは言え、人間的にもそして資格者としても尊敬している人だから。
そんな事を考えながら、また悪あがきやいい方法を模索している自分がいる。
きっと晴れる。虹が出る。
そういう風に思わなきゃおかしくなるから。
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