ダッシュボードを使う時の注意点

意思決定に寄与しないならばダッシュボードを見るだけ時間の無駄

大前提として、分析を行うためにデータを収集する目的は意思決定にあり、目的無きデータ分析は無駄である。ダッシュボードは収集するデータの一部であるので、やはり意思決定に繋がらないならば意味がない。

いらないダッシュボードを作らないようにしようとするのが一番であるが、必要だと思って作ったダッシュボードも使い方を間違えれば無駄になるどころか機会損失を招く。そこで、今回はダッシュボードの使い方に焦点をあてる。

ダッシュボードを見る時の注意点

自分の意思決定に繋がる粒度や単位なのかに注意する

全社の売上や全国の感染者数のダッシュボードは、大半の人の意思決定には役に立たない。規模が大きければ多い程、自分の行動には結びつけられない。数兆ある売上が1%変わったことがわかるダッシュボードを見ても今日の仕事の役に立つことはまずない。役に立たないデータを見ることをデータドリブンとは言わない。

ダッシュボードを見るときは自分の意思決定に役立つ粒度や単位でのデータになっているかに注意する。なっていなければ別のデータを探す。

基礎知識として知っておきたいからとあえて見たり、雑学だとわかっているならばともかく、自覚がないと時間を浪費しているだけになる。

事実を見るだけで済ませない

上がった下がった、他と比較したら違ったという事実だけでは何もできない。意思決定とは未来の行動を決めることである。なので以下のようなことを「何の意思決定なのか」に合わせて取捨選択し、考えていくことが必要だ。

  • 「何が」おきたのか

  • 「なぜ」起きたか

  • 「どれぐらい」のインパクトがあるのか

  • 「これから」どうなるのか

多くのダッシュボードが予測を提供していないのに成立しているのは、実は見ている当人がダッシュボードのデータからトレンドを見出してそのまま続くだろうと予測したり、何かが起きているのではないかを見極めているのである。それを思いついたときだけ行うのではなく、明確に意識しよう。

そんなことまで考えている時間もスキルもない(特に時間)、と思う人も多いだろう。だからこそ、その部分を補完するために分析者が存在しているのだ。これは別の話なので分析者とうまく付き合う方法は別の機会に記事にしよう。

閾値と具体的な行動と責任者を決める

ダッシュボードを見て行動に繋げるには、次の3つが必要だ。

  • 閾値

  • 具体的な行動

  • 責任者

1.閾値

閾値は施策を行うことを決定するに当たり行われているはずの、利益や効果の予測から決めるものであり、後から決めるものではない。先に決めないと都合が悪ければ変えてしまったりその時の気分だけで判断することになる。参考:効果測定をやめよう

いろいろな事情でまずは試してみて様子を見ながら対応していく場合でも「値が大きく上がったら(下がったら)」ではなく大雑把でもいいので具体的な値を置くこと。でないと「見ているだけ」になる。

2.具体的な行動

「何かする」だけだと値が変わったことは確認してもそこで止まる。閾値とセットで決めておく必要がある。

3.責任者

言うまでもないが誰もボールを持っていなければ何も動かない。

最低限の指標で我慢する

「施策を行うことを決定するに当たり行われているはずの、利益や効果の予測」がいつもあるわけではない。それ以外でもデータが必要だと思うことは当然ある。基礎知識や基礎統計、あるいは事前調査がそうだ。例えば以下のような時に求められる。

  • やらなければならないこと(規制や新法への対応、政治的理由など)への対応による影響が、思わぬところで発生していないか確認しておきたい

  • いままで見ていなかった指標だがどうなっているのかひとまず様子を知りたい

  • 失敗しても致命的ではないのでまずはやってみた施策の効果を測ってみたい

  • 新しく追加されたデータの概要を知っておきたい

データはいくらでも作れてしまうので、以下のような考え方で望むのがいいだろう。

  • 既存のデータで済ませる

  • 1つか2つの指標に絞る

  • 多少精度が悪くても我慢する

もし上記のようなデータでは不十分で新しくデータを作る場合は最低限の工数で収めるようにするべきだ。特にダッシュボードの作成を別の人が担っている場合、気軽な依頼が実はとんでもない負担を引き起こしている可能性もある。ダッシュボードも含まれる「データ抽出の依頼のやり方」は重要なスキルなのでこちらもまた別にまとめる。

なお、明確に目的があって意思決定に必要だと思うのであればいくらでも依頼してかまわない。実現の可否を調べ、スケジュールの調整をするのはダッシュボードを作る側の仕事だ。

見た目の派手さや綺麗さ、軽さにだまされない

ダッシュボードの見た目が良かったり使いやすかったりすると質も高く感じることがある。しかし、ダッシュボードの質の評価は提供しているデータの質を最優先に考えなければならない。つまり、意思決定の役に立ったかだ。

ただし、どれぐらい役に立たったかの定量化は非常に困難であり、その評価に時間を費やすのは多くの場合得策ではない。

見やすさや使いやすさはダッシュボードの要素としてプラスアルファであり、データの質が悪ければ意味がない、という意識を持っておくこと大事だ。

使いづらさを放置しない

見た目だけのダッシュボードはだめだが、あまりに使いづらいダッシュボードも同じようにだめだ。そういうものだとあきらめて耐え忍ぶのではなく使いづらさを感じたらすぐに対策を考えよう。

ダッシュボードを別の人に作ってもらっているならば問い合わせよう。作り手は状況を把握していないことも多いため、より早く対応してもらうためには問題を特定する手助けになるデータを渡すと良い。

  • 問題や気になる点は何か

  • その問題はすべのダッシュボードに共通するのか、特定のダッシュボードで何か起きているのか

  • 重いのはいつか。慢性的か特定の曜日や時間のタイミングで重くなるのか

  • どうなっていたらうれしいのか

など具体的に伝えると問題が特定しやすくなり解決への糸口が見つけやすくなる。

何かした気になることを恐れる

ダッシュボードで集計軸や指標をあれこれ変えてたくさんのデータを見て議論するのは楽しいが何も残らない。グラフはアピールには使いやすいので評価には繋がっても意思決定には繋がらない。

だからこそ、データを「知ること」のために使うのであれば自制が必要なのだと思うのだが、気づくと誰かと盛り上がってしまっては後悔するのであった。

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