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【愛車#1】TOYOTA 86 GT(ZN6/2015年式)

「楽しい車って何?」

 夏の水泳の試合からの帰り道、助手席に乗せていたチームメイトと車の話になって聞かれた一言。
 今まで自分にとって初めての車であるこの「86」が、最高の車であることを疑っていなかったが、なかなか深い問いだなと感じ、改めて考えてみたいと思った。

車好きの始まり

 愛知県名古屋市で生まれ、両親共に車好き。珍しい車とすれ違うたびにその車種を聞いて教えてもらったり、ジュースのおまけでついてきたフェアレディZのミニカーを、意味もなく好んでいた。2006年、名古屋駅前にトヨタのビルであるミッドランドスクエアが聳え立ち、当時その近くで仕事をしていた父が、ビル内のレクサスのショールームでパンフレットをもらってきた。確かレクサスISのパンフレットだったかと思うが、それが自分の中で車への情熱が燃え上がった瞬間だった。
 高校3年生で初めてパソコンを買ってもらった時、デスクトップの画像を、当時発表されたFerrari 488 Spiderにしていた。青色のカラーが印象的で、今も色褪せないデザインだと思う。その影響から、最初に買う車はなんとなく青にすると決めていた。

Ferrari 488 Spider

いざ運転席へ

 高校3年生の冬、大学受験が終わった翌日から自動車学校(愛知県的には「車校」)に通った。受験が終わったら即車校だろ、というのが我が家の自然な流れだった。結局受験には落ちて浪人することになるのだが、高校の卒業式の時はすでに仮免だったし、3月中に免許を取得することができた。今思えば浪人、大学、就職とその後の期間に車校に行くような時間はなかったので、あの時通っておいて大正解だった。  
 30万円の現金を抱えて受付に申し込みに行ったこと、最初は半クラが下手でクラッチ焼いて教習車を壊したこと、担当の教官が「ひとみ」という元ヤンの女性でめちゃくちゃ怖くて、路上教習で一般車を追い抜こうとしてクソ怒られたことなど、思い出に残る車校だった。

86との出会い

 大学4年生になり、車が欲しい気持ちが抑えられなくなった。当時は東京に住んでいたので車なんて必要ないし、駐車場も地方のアパートの家賃と同じくらいの値段なのだが、そんなことは関係なかった。それなりの会社に内定をもらえたこと、就職したらお金を返していくことを条件に両親からお金を借りる約束をし、初期費用と当分の維持費を貯めるため、夏休みに週5でアルバイトをした。結果2ヶ月で50万円ほど稼ぎ、夏休みの最後に、家族でスイス旅行に行くまさに前々日、中古車検索サイトに目を引く青色の86が目に留まった。

当時のスクリーンショット


 いわゆるディーラーの認定中古車でほぼ新車の状態、オプションパーツや自分が必須と思っていたトランクスポイラーもついている最高の1台だった。前のオーナーがなぜこの車を手放したか理解できなかったが、光より速い速度でそのディーラーに電話した。旅行に備えて自分は東京から名古屋に戻っていたが、そのディーラーはちょうど名古屋市の近くの刈谷市にあった。翌日、店に着いた1時間後には契約のハンコを押していた。「納車まで1週間ほどかかりますが…」と担当の方の言葉に被せるように「大丈夫です。ちょうど明日から1週間旅行なので」と答えていた。
 旅行から帰った翌日の朝、ディーラーの方が自宅まで迎えに来てくださった。そのまま先週出会ったばかりの86と再会し、初めての自分の車を手に入れた。

素晴らしい人生

 そこからはや5年。86の楽しさを例えると「ランニングシューズ」と言えると思う。普通の車がスニーカーだとすると、86は軽くて走りやすくて地面を掴むランニングシューズだ。

86のイメージに近いのはNIKE Rival Fly 2

 まずは軽さでいうと、86の車重は1230kgしかない。エンジンこそ180馬力だが、この軽さゆえに停止からの加速、高速道路での追い抜きなど不満は一切なく、刺激的な音もちゃんと後ろから響いてくる。
 そして軽いランニングシューズでは地面のアスファルトの感覚がよりリアルに足裏に伝わってくるが、86にもまさに同じことが言える。ハンドルは普通の車よりかなりダイレクトで、路面の状況やタイヤの感覚が手に取るようにわかるし、着座の姿勢やシートのホールド感が車の挙動を自分に伝えてくる。
 その結果、この車の楽しさが表現される。思い通りに走り、曲がり、時に自分の予想以上の気持ちよさで動く。自分と機械に心のつながりが生まれ、「愛車」というにふさわしい存在となる。一度も故障はしたことがないし、日本車としてのアイデンティティ含め、最高の一台だと思う。

お別れの時

 こんなに好きな86だったが、2023年の12月、お別れすることにした。自身の生活スタイルの変化や今後家族が増えることを想定した場合、86の素晴らしさを活かしきれないと判断した。好きで好きで好きすぎるからこそ、86の幸せを願っての別れを決意し、次に進むことに決めた。次の車のイメージは「NIKE Zoom Fly 5」、厚底で、快適で、フルマラソンに耐えうる快適性がある一台。

NIKE Zoom Fly 5

 今後の人生で何度も車を乗り換えるであろうが、この86のことは忘れないと思う。学生だった自分に自由を与え、妻との思い出の器になってくれた86。 次のオーナーさんも素晴らしい方なので、その下で素晴らしい活躍をして欲しいと思う。
自分にとって人生で最初の愛車、TOYOTA 86。
軽く、楽しく、最高の車、86。
5年間本当にありがとう。


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