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夏 第224回 『魅惑の魂』第2巻第2部第67回

 しかし翌朝にはマルクは考えていた。彼にはもう不安は消えていた。周りの言葉には、からかいすら感じていた。(彼の中の恐怖心を消すために、からかっていたのでないか) …自分が怖れていたことを見せてしまったことが、自分にたいして腹立たしかった。あの馬鹿なオデットに感化され、自分を弱さの面に出してしまったことを、怨みにすら思っていた。そうして…  (彼に彼女の笑い声が聞こえて、健康に満ち溢れたように通っていくの見ていた) …彼は彼女のその健康さえ恨んでいた。彼女は多くのもの持っていた。彼は彼女が羨ましくてならなくて、屈辱さえ感じていた。
 全快してからあとの彼には、しばらく悔しさが残っていた。従妹の眼に自分を弱さを明白あからさま にしてしまったと思うからだった。彼はほんとうに怖かったのだった。それを思い出すと悔しくてならなかった。彼女はそれを見たのだった。あのときの感激が消えた後も、オデットはそれを思い出すと楽しくてならなかった。もう威張ることもできない、臆病で子どもぽい彼を、見つけたのだった。そんな彼が、彼女はとても好きになっていた。だが彼は、彼女を許すことができなかった。

つづく

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