株の持ち合い

奥村宏「株価のからくり」は、戦後昭和の日本がいかに「株の持ち合い」をしていたのか、その構造を解き明かした名著。高校生のころ読んだかな。奥村氏は株の持ち合いを批判してこの本を書いているのだけれど、今のようにハゲタカによいように蝕まれている日本企業を見ると、持ち合いも見直したくなる。

戦後、日本企業はGHQの指令により、財閥解体というのが行われた。三菱とか三井とか、巨大財閥が日本経済を支配する構造はよろしくない、ということで、バラバラに。しかしソ連や中国などの共産圏が勢力を伸ばす中、現実的な手段を取らなければ、ということで、財閥解体は中途半端に終わった。

銀行が核となり、再び昔の財閥仲間の企業が手を組むようになった。その時使われた手法が、株の持ち合い。A電機の株をB自動車、C銀行が持ち、B自動車の株はA電機やC銀行が、というように、互いに株を持ち合った。このため、発行株の大部分がグループ企業に所有される形に。

これにより、いくつかの効果が得られた。同じグループの企業が株の大半を持っており、そうした仲間はめったなことで株を売らない。しかも経営に口出ししない。だから、経営者は株主にあまり遠慮することなく、長期スパンで経営を考えることができた。

また、大部分の株を企業同士で持ち合うから、株がほとんど市場に出なくなった。わずかな数の株がたまに売りに出されるだけ。大企業の株は需要があるのに、供給が全然されないから株価は高値に。すると、株を持っている企業も株価が高い分、評価が高くなる。

株主総会を開いても、持ち合いしてくれている企業は経営に口出ししない。しかも、株の大部分を売らずに維持してくれているから、総会屋がのさばるのも防止しやすい。敵対的買収も難しい。経営者は安心して経営に専心することができた。

ところがどうも、この株の持ち合いというのが強すぎる日本の理由なんだな、とアメリカあたりに目をつけられて、国際ルールが厳しくなり、株の持ち合いを続けることが難しくなってきた。2000年代に入ると、これが加速した。

で、売りに出た株をハゲタカさんが買って、経営に口出しする「もの言う株主」が増えた。従業員をリストラし、給料を下げ、それで浮いた利益を株主に渡せ、という厚かましい株主が増えてきた。労働者を不幸にするタイプの株主が増えてしまった。

私は、株主であること自体は悪いことだとは思っていない。しかし、働く人の稼ぎを減らし、その分、株主である自分の利益にするように動くのはどうなのだろう。それをやったら働く人たちは消費を減らし、消費が減るから経済が冷え込む。

株主資本主義が進行し、働く人の給料を抑える構造が、日本でデフレスパイラルが長らく続いた一因でもあると思う。株主ばかり偏って儲ける構造は、日本全体で見てよろしくないように思う。

株主への配当を、従業員の給料増額の何%とする、というルールを設けてはどうだろう?というアイディアを頂いた。それは面白い。従業員の幸せが株主の幸せにもなる、というウィンウィンになる。これまでの株主資本主義とは話が違ってくる。

ハゲタカにいいように蝕まれるルールを放置するのはともかくよくない。何かしら、知恵が欲しい。そのためには、思い付きでよいからアイディアをともかく出すブレーンストーミングが必要だと思う。そのうえで、アイディアをブラッシュアップしたい。みなさんのお知恵を拝借したい。

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