見出し画像

既存薬の効果の確認 安全性や開発時間短縮で意義 2020年3月22日 19時30分 新型コロナウイルスに対して、ぜんそくの治療薬が効果がある可能性を突き止めた研究者がNHKのインタビューに応じ、「安全だと分かっている薬を使えば、開発にかかる時間の短縮になるうえ、薬の適用を変えるだけなので医師も使いやすい」と述べ、既存の薬の効果を確かめる意義を強調しました。

新型コロナウイルスに対するワクチンの開発には1年以上かかるとされ、特効薬もないことから、世界各地で既存の薬が使えるかどうか調べる取り組みが行われています。 このうち、日本国内からは、免疫の働きを抑えるステロイドを吸入するタイプのぜんそく治療薬、「オルベスコ」、一般名「シクレソニド」という薬を患者に投与したあと、症状が改善したケースが報告されていて、この薬に効果がある可能性を突き止めた国立感染症研究所の松山州徳室長がNHKのインタビューに応じました。 松山室長によりますと、国立感染症研究所では、コロナウイルスの一種による感染症で、中東などで広がったMERSに効く薬を探そうと、2年前からおよそ1200種類の薬の候補物質をウイルスに感染させた細胞に投与する実験を進め、「オルベスコ」が効果がある可能性を見いだしていたということです。 同様の実験を新型コロナウイルスに感染させた細胞でも行ったところ、細胞の中のウイルスは、100分の1程度にまで減ったということで、ウイルスの増殖を抑えることを実験で確認できたとしています。 松山室長は、ウイルスの増殖を抑えると同時に炎症を抑える効果があると見ています。 松山室長は「MERSはいまだに中東で感染が続いているうえ、コロナウイルスの病気はほかにもあるので研究を続けていた。薬の開発や安全性の確認には時間がかかるため、新たに開発すると間に合わない。人に投与しても安全だと分かっている薬は、薬の適用を変えるだけなので医師も使いやすい」と述べ、新たな感染症に対して既存の薬の効果を確かめる意義を強調しました。 一方、国の研究班ではオルベスコを含めた複数の既存の薬が、新型コロナウイルスに効果があるかどうか、患者に投与した際のデータを集めて分析することにしています。 研究班の班長で愛知医科大学の森島恒雄客員教授は「薬を使った治療法が決まってくれば、肺炎の重症化を防ぎ、集中治療、医療の崩壊を防ぐことができる。今月終わりから来月初めごろにはある程度、薬のデータがそろってきて、きちんと評価できると考えている」と話しています。 ぜんそく薬投与した医師は期待 神奈川県松田町にある神奈川県立足柄上病院では、これまでに新型コロナウイルスに感染した患者、10人に対して治療を行ってきました。 このうち、先月クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染した患者3人は、いずれも高齢で、搬送されてきた当初から肺炎になっているなど症状が重く、ベッドから起き上がるのもやっとという状態で、中国などで投与の報告があったエイズの発症を抑える薬を試しても症状は改善しなかったということです。 こうした中で、病院で患者を診ていた総合診療科の岩渕敬介医長は、先月中旬に開かれた新型コロナウイルスへの治療を検討する会議に出席し、国立感染症研究所からぜんそく薬の「オルベスコ」が効く可能性があるという報告を聞き、これまでに長年使われている薬で副作用が少ないことから患者の同意を得たうえで投与することを決めました。 投与したあとはいずれの患者も2日ほどで肺炎などの症状が改善し、中には日課の体操ができるほどに体調が戻る人もいたということです。 岩渕医長は「当初は、とんでもない感染症を診ているのではないかと感じ、必死に診療していた。本当にこの薬が効いたのか分からないが、つらい戦いだったので救われたと思った。人工呼吸器などを必要とする患者は普通の病院ではなかなか診ることができないので、こうした薬を早期に使って重症化が防げるのであれば、非常に意味があると思う」と話しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?