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安倍首相の言う「政府の総力を結集」って何? 日本の「全自動PCR検査システム」なぜ導入されず? 製造メーカーも首を捻る。 PSSは遺伝子検査装置を新型コロナウイルス検出装置として拡販、欧州はすでに採用している。

「保健所の業務過多や検体採取の体制などに課題があるのは事実だから早急に強化していきたい」  番組に出演した安倍首相。視聴者から、新型コロナウイルス対策をめぐるPCR検査の遅れを問われた際、こう答えていたが、PCR検査の体制拡充を求める声はここ数カ月間、ずっと出ていたはず。今になって「早急に強化」なんて、あまりに遅すぎると言わざるを得ない。 「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の尾身茂副座長も、緊急事態宣言の延長について開かれた4日の会見で、PCR検査の遅れを釈明。韓国やシンガポールはSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の経験があっためにPCR検査の体制が確立していた――みたいな説明をしていたが、責任逃れの言い訳としか聞こえない。  韓国や欧米諸国のように日本ではなぜ、いまだにPCR検査が増えないのか。本当に人員や技術の問題なのか。ところがそうじゃなかった。すでに日本でもPCR検査を増やす方法はいくらでもあったのだ。  例えば、DNA抽出装置や全自動遺伝子診断システムの開発などを手掛ける東証マザーズ上場の「プレシジョン・システム・サイエンス」(千葉県松戸市、PSS社)は現在、研究機関や病院で行われている手作業のPCR検査について、早く正確に判断できる「全自動PCR検査システム」を開発している。  手作業のPCR検査は、工程が煩雑のため、1検体当たり、判定に6時間ほどかかる。これに対し、「全自動PCR検査システム」は「2時間で(機器によって)8検体または12検体の判定が可能」(同社)という。つまり、大雑把に言って機器の稼働台数を増やせば、それだけ検査数が増えるわけだ。  PSS社がOEM供給した仏・エリテック社ブランドのシステムは、同国の医療現場で採用されており、新型コロナウイルスのPCR検査でも高い成果を上げているという。PSS社は功績が認められ、駐日フランス大使からシステム供給に対して礼状が届いたほどだ。  PSS社はまた、東京農工大とも連携し、新型コロナウイルスの迅速診断に向けた新たな「全自動PCR検査システム」を共同開発。3月時点で国に使用を認めるよう申請したというのだが、いまだに進展がないのが現状だ。フランスの医療現場で採用され、駐日フランス大使から礼状まで届くPCR検査システムがなぜ、日本で使用できないのか。  PSS社の田中英樹・取締役総務部長がこう言う。 「手作業によるPCR検査では、なかなか検体数も増えないでしょう。(なぜ、全自動PCR検査システムが使えないのか)分かりませんが、とにかく、早く今の状況を何とかしたい。とても歯がゆい思いをしています」  安倍首相は、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で「政府の総力を結集」と言っていたはず。ならば、あらゆる英知と技術を総動員する時ではないのか。

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