見出し画像

トリチウム含む水の処分 立地自治体から国の進め方に異論 2020年4月14日 0時32分 東京電力福島第一原子力発電所で増え続けているトリチウムなどの放射性物質を含む水の処分方法について、国は13日、原発の立地自治体などから意見を聞く会を開きましたが、風評対策など具体策が示されていないなどの意見が出され、国の進め方に対して異論が相次ぎました。

トリチウムなどを含む水の処分をめぐってはことし2月、国の小委員会が基準以下に薄めて海か大気中に放出する方法が現実的だとする報告書をまとめ、政府は地元などから意見を聞いたうえで最終決定するとしています。 13日は先週に続いて福島県内で2回目の意見を聞く会が開かれ、原発がある地元自治体のトップがテレビ会議で意見を述べました。 このうち福島第一原発が立地する双葉町の伊澤町長は「国と東京電力は風評被害への具体的な対策を明示し、丁寧に説明することが必要だ」などと述べました。 また同じく立地自治体の大熊町の吉田町長も「これ以上なりわいを侵されては、ふるさとで暮らすことができない。具体的に風評対策などを見いだしてほしい」などと話し、対応を求めました。 このほか周辺自治体のトップからも、住民に依然疑問や不安があり説明が不足しているとか、人口が減る中、定住促進策なども示すべきだといった意見のほか、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、国民的な議論に発展できるか疑問だといった指摘も出され、政府の説明のしかたや進め方に異論が相次ぎました。 国は、次回は福島県外の関係者から意見を聞く場を検討しているとしています。 松本経産副大臣「どこかで一定の結論をえないといけない」 地元の意見を聞く2回目の会のあと、松本経済産業副大臣が報道陣の取材に応じ、次回の会合は福島県外の関係者から意見を聞く場を想定しているとしたうえで、県内の人から改めて意見を聞くかどうかについては今後検討するとしました。 また、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、処理水の問題が国民的議論になるか疑問があるとの指摘が自治体の中から出されたことについて、「関係者からそうした意見が出されたことを重く受け止める一方で、タンクの容量の問題や廃炉のための敷地確保の必要性があり、どこかで一定の結論をえないといけない状況がある。いつまでも結論を先延ばしにできないという、スケジュール観とのバランスを見ながら考えていく」と述べました。 双葉町長「国は対策を明確に示すべき」 福島第一原発が立地する双葉町の伊澤史朗町長は、処分が問題となっている水について、「いったんは核燃料に触れた水であることを、現実として受け止めてほしい。『処理すれば放射性物質の濃度は下がる』と一方的に示しても、不安は解消しない」と述べました。 そのうえで、「国と東京電力が風評被害への具体的な対策を明示し、国内外のあらゆる場面で丁寧に説明することが必要だ」と述べましたが、処分への賛否は明らかにしませんでした。 このあとの取材に対しては「小委員会や公聴会など、さまざまな場面で課題が指摘されてきたが、それに対して国がどういう対策をするのか明確に示すべきだ。それがないままに処分方法について意見を聞かれても、答えようがない」と述べ、国の議論の進め方に疑問を示しました。 大熊町長「海か大気中か 簡単には選べぬ」 福島第一原発が立地する大熊町の吉田淳町長は「海への放出と大気中への放出による被ばくの影響が小さいという説明は理解できても、経済的、社会的な影響を考えると、どちらかを選ぶということは簡単にはできない」と述べました。 そのうえで、「風評を懸念する声の裏には、これ以上なりわいを侵されてはふるさとで暮らすことはできないという思いがある。これまでの事故対応や風評対策の経験を踏まえて、具体的な対策を見いだしてほしい」と述べました。 「感染拡大の中 国民的議論は難しい」指摘も 地元の意見を聞く2回目の会の開催について、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、国民的な関心事として議論を進めることが難しいとの指摘が専門家から出されています。 経済産業省の小委員会の委員を務めた福島大学の小山良太教授は、「意見を聞く会は、処理水の処分方法や時期についてこれをもとに国民的議論にするというのが1つの趣旨だが、緊急事態宣言が出るような状況下では、報道の情報量も少なく、どんな意見だったのかほとんど話題になっていないのが現状。国民が理解する時間がないような時は、延期するなり、別の方法を考えるなりした方がいいと思う。意見を述べる関係者も新型コロナウイルスへの対応に忙殺されるなか、今の段階で何年か先に処理水をどう処分すべきか考えるのは難しいのではないか」と話しています。 また意見集約の方法については「テレビ会議で関係者が意見を述べるだけでは、報告書の問題点や賛成反対を述べるにとどまり、その背景に何があるのかひざ詰めで議論をしながら聞き出し、関係者で共有していく状況にはなりづらい」と述べたうえで、意見を聞く対象についても、「最初は各組織の代表でもいいが、いろんな世代やこれから何十年もこの場で働く人、消費地で生活している人、近隣の諸外国などからも事前に意見を聞いていておかないと政治判断をするための材料として足らないのではないか」と話し、現状の進め方について課題を指摘しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?