署名運動はタトゥーにもなる
「放っておいてほしい、騒いだって何も変わらないんだから」
それは本当に正しかった。
何度痴漢被害に遭っても、「ひと気のない道を歩くお前が悪い」「夜道を歩くお前が悪い」「ママチャリに乗っているお前が悪い」「脚を露出しているお前が悪い」
これは警察が言ってきたことなんだよ、と海外に発信すれば、どれだけの人が驚くものなのだろう。
この道を通らなければ習い事には行けないのに、放課後の習い事は冬なら行きの道さえ暗いのに、親が買い与えたママチャリなのに、制服は絶対にスカートの時代なのに。
心は何度も折れたけど、修復作業の過程で学びはあった。
夜道や人の少ない場所では人と目を合わせない、
どこかに向かうために急いでいるように見せるか、人と待ち合わせをしているように見せて、ターゲットにされている場合じゃない自分を演じる、
マスクと帽子で顔を隠せ、
脇を広げろ、少しでも身体を大きく見せろ、
スマホではなく小難しそうな本を読め、
もしくはライトを片手にガツガツ歩け、
生理であるならハッキリ伝えろ、
交番が近くにあればしばらく眺めろ、
道に迷ってる人に声をかけられたら丁寧に答えろ、
スポーティーな自転車に乗れ、
そしてスカートは二度と履くな。
周囲の優しい人たちを傷つけることなく、たった独りで自分の身を守る方法は、いくらでも編み出してきた。
ある程度の年齢まで来たらそれだけでターゲットから外れる。
最近ようやく明るい色の服を着たり、アクセサリーもたくさんつけるようになった。
ただ、ネックレスはどう悪用されるか分からないので避けることと、ゴツい指輪は趣味ではなくても念のために付けている。
最近はイヤーカフにハマり、集めて使って、毎日が楽しい。
「被害は受けているけど、前向きな意味で今の自分があるのはその人(加害者)のおかげでもある」
と本人が証言している所は見たことがあるが、第三者がこの部分を切り取っている所は見たことがない。
公表する人は公表すれば良いし、放っておいてほしい人は放っておいてほしいのだ。
過去は変わらないし、無駄なデジタルタトゥーが残るだけだから。
事務所を離れれば少なくとも自由に立件もできるはずだ、それでも何十人もの人が去っていった中で、彼らが声を上げないことにはちゃんと理由があると思っている。
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