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業界団体での活動報告書

鍼灸業界団体の活動は多くの鍼灸師に伝わってないとの意見が散見されます。
私も同じように感じていました。
そこで去年の暮れに業団の人間として私がどのような活動をしたか個人的に報告書を書きました。

この報告書は業団外の親しい鍼灸師に送ったものです。
全て本音を曝け出してるとは言い難いですが、形だけの報告書では無く想いは込めているつもりです。

このnoteで不特定多数の方に見ていただくためには、先にいくつかの申し伝えを書いておかねばなりません。
まずこれは、mc sinq–cと言う人物が主観で書いたものです。
特定の人物、団体を示唆するものではありません。
かと言ってフィクションでもないです。

その辺を理解していただけたら幸いです。


活動報告

任期:20××年5月~20××年5月
【委員会活動】
○生涯研修委員会委員長(研修事業部)
生涯研修委員会とは生涯研修とは東洋療法試験財団に認定され業団で行った、研修(座学や臨床)、普及活動、奉仕活動、情報交換会などを単位化した制度。一定の単 位数を取得すれば認定証と業団のHP上に認定鍼灸師として掲載される。

・活動
委員長として活動。主に少人数での事務仕事が多く、他に単位管理のシステム、学術研修カードによる活動の参加をPCで管理。 委員長はそれらの統括として年間の業団や支部での活動を把握することが重要であり、認定の判断、認定証の作成などを行った。

・課題
そもそもこの研修制度が過去の役員が中心となって構築された古い制度であり、現代的とは言えない。この制度に関して熟知している役員も少なく、情報共有もスムーズとは言い難いため対症療法的な活動で終始してしまった。
それ以外にも、生涯研修認定を受けたとしても会員がそれをメリットとして感じる要素も少なく形骸化している

・改善案
構造的な問題があるため、新たなシステムを構築させなければならない。
既にシステム見直しのため役員間での話し合いもしており、前向きな方向で検討に入っている。
生涯研修認定の価値向上に関しては、現在あはきの広告規制の検討会において、広告可能な事柄に医師のような『認定専門医制度』を踏襲する案が検討されており、この流れによっては生涯研修制度の価値は飛躍的に高まることが予想される。
今後、大まかな認定鍼灸師というよりは『腰痛専門鍼灸師』や『美容専門鍼灸師』などの局所的な認定も考慮するのもありと言える

○健保委員会副委員長
健保委員会とはあはきの療養費取り扱いにかんする事項を取り扱っている。
他県師会との情報交換、健保組合との交渉、会員からの相談など療養費の普及と正しい知識を広めることを目的としている。

・活動
副委員長として委員長の補佐を行った。
今年から本格導入された受領委任払いに関して、この二年間は様々な組織と情報交換や交渉に費やされた。
委員長の下、混乱を避けるためにも導入前から対応策を計画しており導入後も比較的混乱が少なく済んだ印象。

・課題
受領委任払い導入により申請手続きが明らかに煩雑になった。これを契機に療養費の取り扱いを止める会員も出てきており、療養費の普及が後退した印象。そして各種保険組合の償還払いも増加しており、療養費の取り扱いが減少し始めている。
将来的に電子請求が主流となることが予想され審査料の収入が失われる可能性もありえる。

・改善案
既に実行されているが申請書に関して審査会にて訂正できる箇所は訂正しており、療養費の申請に関して会員非会員問わず鍼灸師からの相談も常時受け付けている。しかし、その事の周知がなされていないので健保委員会の活動の周知をして業団からの申請にメリットを持たせる。
健保組合の本部が東京には集中しており業団として受領委任払いへの参加を促す交渉を行い、それも内外に周知させる。
関係が良い厚労省と電子請求導入前にしっかり交渉をして、業団の存在感を出していかなければならない。

○臨床スポーツトレーナー研修会副委員長
臨床スポーツトレーナー研修委員会とは、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、伝統医療の国家資格を有するはり師・きゅう師ができる支援を目的に、子どもから高齢者まであまねく人々が生涯にわたってスポーツを、安全に楽しく活躍できる皆様を支えるボランティア活動実施のための研修事業を行っている。

・活動
委員長の下、公認スポーツトレーナー鍼灸師の認定となる講習会を開催して講師の調整や会場の交渉、参加者の募集などの活動を補佐。それ以外にも、スポーツボランティア委員会、東京オリパラ委員会とも連携して活動を行い、地域マラソンを中心としたスポーツボランティアなどのスタッフも兼任。

・課題
多くの委員会との合同作業もあり人手は十分だったが意見の集約に課題を残した。スポーツトレーナー研修制度のシステムに関しても場当たり的な箇所があり内外への理解が行き届いているとは言えないと感じる。その為に役員会での事業計画承認も時間がかかってしまい(余計な意見もあ り)、委員のモチベーションの低下に繋がった。
講習会でも不手際が散見され(自然災害に見舞われたと言え)、会員にスムー ズなサービスの提供が行われたように思えない

・改善案
生涯研修委員会と同じであり、システムの構造的な部分に欠陥があるため研修事業として統合的な見直しを進めなければならない。
委員長が替わったとしても滞りなく引き継ぎがなされるように現在、話し合いがもたれている。
場当たり的な対応でなく管理責任等の引き締めをはかり、システマティックに会員への対応が出来るよう改善することが重要。

○鍼灸普及委員会副委員長
鍼灸普及委員会とは鍼灸師を含む国民への鍼灸の良さを伝えるための委員会。

・活動
委員長の下、国民への普及よりも鍼灸師間の交流を中心に活動。 学生交流会の開催、鍼灸専門学校との連携(協力会員制度)、若手鍼灸師の懇親会、医道の日本などの関係者との連携など。

・課題
業団に若手鍼灸師を増やすための努力をしてきたが、個と公の利益のバランスが両者共に取れず現状では積極的な勧誘は難しい。活動に関して上記の件も重なり徐々に失速、メンバーのモチベーションの低下が懸念される。
専門学校との連携は一定の成果を上げてはいるが活動としては及第点であり、専門学校の資源を上手く活用できていない。
若手役員は他にも多くのタスクを抱えており、鍼灸普及委員会の活動だけに注視することが困難な様子。

・改善案
若い鍼灸師の入会は業団にとって重要であるが現状では受け入れる土壌が出来ているとは言えないため、受け入れる土壌を作る必要がある。
来期から交流会の年間開催回数を4→2に減らして短期集中的に価値のある学生交流会を目指す。
学校や関係者との連携は若手役員のみで広げるには限度があり、他の委員会との連携によってタスクを分散化させたい。

【提言&提案】

○他県鍼灸師会の会費の割引き
東京オリンピックなどの開催により東京での講習会の参加や活動への関心は高まっているが、ほとんどの事業で会員か共催県師会会員でしか恩恵を享受出来てないため、会員を増加させるためにも他県に住み働く鍼灸師へ門戸を広げるため提言。
副会長の提案により総会を通して定款が改訂されS会員制度が制定され た。

○業団による鍼灸祭り
若手役員との話し合いによって計画書を作成、役員会の承認を得て予算がつく。しかしながら業団の全国大会との連携なども執行部から加味されたため複雑化してしまい、活動は暗礁に乗り上げ事業は凍結となる。

○鍼灸師によるeスポーツの参入
新たな分野での開拓を模索するため、今後、拡大が期待されるeスポーツ分 野に関して、鍼灸師の参入を促進させるため活動。
eスポーツ関係者との繋がりは構築したが役員会へ提案するには材料が不足 現在進行形でeスポーツに関わる鍼灸師と個人的にイベントの開催を企画中。

○他団体との連携促進
会員への勧誘と共に様々な団体との交渉や協力を模索。
いくつかの団体と個人的な友誼を結び業団との具体的な連携を構築中。

○若手役員、若手会員との連携の強化
若手同士、付かず離れずな関係性が出来ており、現状ギリギリ業務を遂行しているが今後具体的に業団を変えるにあたっては現状の関係性だけでは困難と感じる。
業団への意識が高い若手鍼灸師を中心に、関係性の強化をはかるための講習を模索中。

○鍼灸師政治連盟の活性化
二年間の任期中に多くの政治イベントに関わってきたが、鍼灸業界の政治力は他の業界団体と比べて明らかに弱い。多くの原因が考えられるが、現状での改善点は政治連盟の活動を鍼灸師に周
知させること。
それを含めて、鍼灸師の政治に関する意識の調査をするためネットで上アンケートを実施。
275名の回答をいただき、これを機会に政治連盟の活動を活性化させたい。

○産業鍼灸師設立委員会
鍼灸師最大の懸念である受療率の低下を反転させるため、国策である企業の健康経営促進事業への参入を促す、産業鍼灸師の制定を目的とする。
役員になる以前からの個人的な活動であり、この二年間で最も訴えかけていた事業である。
二年の間では目新しく先行きが不透明なこの事業への理解は進めるには困難と思われたが産業鍼灸の機運があがる企画と重なり土壇場で理事会にて承認 、予算がつき委員会が設立された。

【総括】
個人治療院の院長として組織活動とは無縁の人生であったが業団の役員となり良くも悪くも組織の洗礼を受けた二年と言える。
どこの組織も同じような課題である新旧のバランスの難しさがあるが、どこの組織よりも役員になる『うま味』は業団には無いといえる

多くの優秀な鍼灸師も過去に鍼灸業界の課題に取り組んで来たであろうが、組織内での関係性によって疲弊し、失望し、去っていく姿は想像に難くない。
私もこの二年、役員を辞めようかと思ったことが数え切れないほどある。
しかしながら、同時に多くの事を学べたことも事実であり、他の役員達と根気よくコミュニケーションを取れば関係を改善していける

産業鍼灸師設立委員会はその証左であり、多くの責任や意見が飛び交う業界団体で未知の新事業に飛び込もうとする姿勢は業界をより良くしたい想いがあることを感じ取れた。

そもそも個人の活動には限界があり、他業種に比べて業団の力が弱い鍼灸業界には業団が力をつけなければ多くのチャンスを失い、業種そのものが壊滅してしまう。
この危機感を会員非会員問わず多くの鍼灸師は共有していると二年の間に感じ取れてはいるので、そこからどうやって意志の統一を図ればよいか一歩一歩進めながら考えていく必要がある。

今回の報告書のように、まずは活動している実態を鍼灸師達に伝えて活動への共感の輪を広げていくのが大事と考えている。

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