2019年私的ベストBOOKS

この1年に手に入れた本の中で、とくに印象に残った本、得るものの多であった本、お値打ち感のあった本など、備忘録的に。
(必ずしも刊行が2019年ばかりではありませんが)

開かれた対話と未来

オープンダイアローグの理論的主導者ヤーコ・セイックラと、未来語りダイアローグの開発者トム・アーンキルの共著。監訳は斎藤環。
他者の視点と自分の視点は絶対に相いれない。対話とは、相手を自分の意図へと誘導し変化させようとすることではなく、「自分とは違う他者」の「他者性(違うこと)」を歓迎し尊重すること。
人生を生き抜くただ1つの方法は、自立した個人と個人の対話を続けていくことだけ。(本書)

濃霧の中の方向感覚

臨床哲学者が紙誌に綴った思索の記録。こちらも「あとがきに代えて」は「対話の可能性」と題されている。
人と人のあいだには、性と性のあいだには、人と人以外の生きもののあいだには、どれほど声を、身ぶりを尽くしても、伝わらないことがある。思いとは違うことが伝わってしまうこともある。〈対話〉は、そのように共通の足場をもたない者のあいだで、たがいに分かりあおうとして試みられる。そのとき、理解しあえるはずだという前提に立てば、理解しあえずに終わったとき、「ともにいられる」場所は閉じられる。けれども、理解しあえなくてあたりまえだという前提に立てば、「ともにいられる」場所はもうすこし開かれる。(あとがきに代えて)

エドゥアール・マネ

西洋絵画史の中で、マネの存在は特別なものである。
なぜなら、マネの作品は西洋絵画の多様な伝統を吸収し、これらを素材として組み替えて、それまでにない新しいタイプの絵画を作り出し、後世に多大なる影響、インパクトを与えたからである。古典的な西洋絵画の流れがマネの中に集約される一方で、マネから始まる近現代絵画はいまだにマネが切り開いた圏域を蛇行していると言ってもよい。(はじめに)

東アジア仏教史

アジアのプレゼンスが大きくなっている。このことは、そこに流れ通う思想の理解を要請する。
仏教はインドで生まれ、中国に伝わり、百済を経て東の日本にまで至ったという日本人の常識は、「天竺(インド)→震旦(中国)→本朝(日本)」という「三国仏法伝通」の図式に百済を加えたものにすぎず、これでは仏教史の実態はとらえられない。(本書)

台北・歴史建築探訪 日本が遺した建築遺産を歩く

日本が台湾を統治した1895年から1945年の50年間は、日本の近代建築が一気呵成に発展し、帝国主義のもとである意味の爛熟を迎えた時期に重なる。
そして、日本ではこうした歴史的遺産の建物が次々に壊されていく一方、台湾では多くが大切に保存され、その建築的価値を残したままリノベーションされて活用されている。
これまで35冊もの台湾に関するガイドブックを出してきた台湾在住の著者の、文字どおりの「力作」。著名な大建築はもちろん、名もなき遺構や民家などにも目を向け、多くの古老や引揚者、遺族を訪ねて証言を集めてきた。
台湾に残る建築遺産を見ることは、台湾を知るばかりでなく、「日本」を知ることでもある。(はじめに)

新しい料理の教科書

食卓で慣れ親しんできた料理とその調理法。そのイロハだと信じ込まれ、巷間に流布しているものが、単なる迷信であったり、食材の進化によって今では意味がないどころか逆効果でさえあったりする。
料理の考え方もアップデートしてもいいんじゃないか、と僕は思います。
そのために必要なのは科学的な考え方、科学的に料理を理解すればベストのつくり方がわかります。(はじめに)
個人的に実践してみて一番感激したのは「超絶ハンバーグ」だ。

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