ボークを適用してはいけません
少々ややこしい話ですが、投手が明らかにボークとなる投球動作をしてもボークを適用してはいけない場合があります。
審判初心者の人ですとよく間違うケースのでしっかり覚えておくと良いと思います。
以下にボークを適用してボークとしての処置をする場合と、ボークを適用せずにプレイを生かす場合の事例をご紹介します。
◇ プレイを生かす(ボークを適用しない)
どのような場合にボークを適用しないかというと、ボークが宣告された後もプレイが続き、結果として走者も打者もひとつ以上進塁した場合です。
これは野球規則 6.02(a) ペナルティに規定されています。
(a)項各規定によってボークが宣告されたときは、ボールデッドとなり、各走者は、アウトにされるおそれなく、1個の塁が与えられる。
ただし、ボークにもかかわらず、打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に達し、かつ、他のすべての走者が少なくとも1個の塁を進んだときには、このペナルティの前段を適用しないで、プレイはボークと関係なく続けられる。
この規定で定めることがプレイを生かすということです。
逆な言い方をすると、走者と打者のうち一人でも進塁できなかった場合は
・プレイを取り消してボークを適用
・走者に一つの進塁を与えてプレイを再開
ということです。
以下に事例を挙げて説明しましょう。
【例1】ボークを適用しない:打者出塁、一塁走者は二塁到達
0アウト、走者一塁
打者に対しての投球時に投手がボークとなる動作をしました。
ここで審判員が「ザッツ・ア・ボーク」 をコールしますが、投手は投球を続けました。
打者はこの投球を打ちライト前ヒットとなりました。
この間に打者は一塁へ、一塁走者は二塁へと進みました。
この場合、打者は出塁し一塁走者も二塁へ進んでいるので、ボークは取り消され、そのまま次打者が打席に立ち試合を続けます。
特段の理由がなければ(選手や監督からタイムを要求されたなど)タイムをかけて試合を中断することもありません。
【例2】ボークを適用:打者一塁アウト、一塁走者は二塁到達
0アウト、走者一塁
打者に対しての投球時に投手がボークとなる動作をしました。
ここで審判員が「ザッツ・ア・ボーク」 をコールしますが、投手は投球を続けました。
打者はこの投球を打って浅いライトゴロとなり、打者は一塁アウト。
その間に一塁走者は二塁へと進みました。
この場合、一塁走者は二塁へ進みましたが、打者は出塁できていませんのでボークを適用します。
プレイが落ち着いたところで審判員はタイムをかけ、一塁走者はボークにより二塁へ進め、0アウト走者二塁、ボーク発生時のボールカウントから打者に打ち直しをさせます。
【例3】ボークを適用しない:打者デッドボール、一塁走者は二塁
0アウト、走者一塁
打者に対しての投球時に投手がボークとなる動作をしました。
ここで審判員が「ザッツ・ア・ボーク」 をコールしますが、投手は投球を続けたところ投球が打者に当たりました。
審判員はその場でヒットバイピッチを宣告し、打者に一塁、一塁走者に二塁を与えます。
この場合、打者はヒットバイピッチで一塁を得て一塁走者も押し出される形で二塁に進むのでボークは取り消されます。
0アウト、走者一二塁で次打者が打席に入りプレイを再開します。
【例4】ボークを適用:打者デッドボール打ち直し、二塁走者は三塁へ
0アウト、走者二塁
打者に対しての投球時に投手がボークとなる動作をしました。
ここで審判員が「ザッツ・ア・ボーク」 をコールしますが、投手は投球を続けたところ投球が打者に当たりました。
審判員はその場でタイムをかけボークを適用し二塁走者に三塁を与えます。
この場合、打者はヒットバイピッチで一塁へ進めても二塁走者は進塁できません。
従ってヒットバイピッチが取り消されてボークを適用、0アウト走者三塁、打者はボーク発生時のボールカウントから打ち直しです。
【例5】ボークを適用しない:打者デッドボール、一塁走者は二塁へ
0アウト、走者一塁
打者に対しての投球時に投手がボークとなる動作をしました。
ここで審判員が「ザッツ・ア・ボーク」 をコールしますが、投手は投球を続けたところ打者はこれを打撃してピッチャーゴロとなりました。
投手は二塁フォースアウトを狙って二塁へ送球しましたが悪送球。
この間に一塁走者は三塁へ走りますが三塁への送球でタッチアウトとなりました。
打者は一塁へ進み、一塁走者も二塁を得ているので審判員はボークを適用せず、1アウト走者一塁で試合を続けます。
この場合、打者走者が一塁に達し、一塁走者が二塁に達した時点でボークは取り消されます。
つまり、打者も走者も全員が一つの進塁を果たしているのでボークは適用しないということです。
その後走者がアウトになるかもしれない危険を承知で三塁へ進むことは認められるので、三塁でのプレイは取り消されることはなく、このアウトは正規のプレイとして有効です。
また、攻撃側監督に選択権もありませんので、三塁アウトを理由にしてボークを適用するということもできません。
【例6】ボークを適用しない:打者ヒットで二塁アウト、二塁走者は三塁へ
2アウト走者二塁
2アウト走者二塁の時に打者に対しての投球時に投手がボークとなる動作をしました。
ここで審判員が「ザッツ・ア・ボーク」 をコールしますが、投手は投球を続けたところ打者はこれを打撃して右中間を抜けるヒットとなりました。
この間に二塁走者は本塁へ生還、打者走者は二塁へ行けると判断して一塁に触れて一気に二塁へ走りました。
打者走者は二塁でアウトとなりました。
この場合、打者走者は一塁を得ていること、また二塁走者もひとつ以上進塁しています。
従ってボークを適用せず、プレイを生かします。
そのため、二塁での打者走者はアウトで3アウトチェンジ。
二塁走者の本塁生還はタイムプレイですので、二塁での打者走者アウトよりも本塁到達の方が早ければ得点、本塁到達よりも二塁のアウトが早ければ
このプレイでの得点はありません。
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