見出し画像

投手のお作法

高校生になると滅多に見ることはありませんが、
少年野球、学童野球では何度も見かけるので、その都度監督やコーチに
指導をお願いしていることがあります。
投手のお作法についてです。
お作法と言っても野球規則に関わる部分でもあり、ボークの対象である動作も含まれますし、ボークではないけれども審判や走者を惑わす、或いは紛らわしい動作もありますので、これらのことを守るように、投手への指導を
お願いしたいところです。


◇ 投手板を跨いで立たない

プレイ中、投手が投手板を跨いで立ち、この姿勢で捕手を見ていたりサインを確認しているのを多く見かけます。
野球規則では、
・投手板に触れて捕手のサインを確認しなければならない
・投手板に触れずに投球に関連する動作をしてはいけない
と規定しています。
塁に走者がある時にこれに反する動作があればボークです。

野球規則 5.07(a) 正規の投球姿勢
野球規則 6.02(a)(7) ボーク:投手板に触れずに投球に関連する動作

セットポジションから軸足をはずした後は、一時的に投手板を跨ぐ形になりますが、ここから正規の手順を踏んでセットポジションの姿勢をとれば良いのですが、
正規の手順を踏まない投手もいますので、義務ではありませんが、
投手板の横に一度出てから改めて投手板に触れるようにするのが望ましい
のではないかと思います。
セットポジションの姿勢をとる前の状態(体の前で両手を合わせていない)
で軸足を投手板に乗せたり外したりを繰り返されると(違反やボークではないが)、審判にとっても走者にとっても非常に紛らわしい動作になる場合があるので、マナーとして気を付けて欲しいところです。

◇ セットポジションに入る前に

セットポジションに入る前は、殆どの投手は両手または片手を下に下げていると思います。
これは学童に多い間違った動作ですが、投手板に足を乗せる(触れる)前に、体の前で両手を合わせたまま投手板に軸足を乗せる投手がいます。
走者がある時にこれをするとボークですので、これは日頃から癖をつけてしまわないように指導をして欲しいところです。

この動作は、ボークを規定している13項目の 6.029(a)(1)の中で規定して
いて、5.07(a)(1)および(2)で定めている投球動作に違反したらボークであると規定しています。
で、5.07(a)(2)を見ると同項にはこう書かれています。
「投手は、セットポジションをとるに先立って、片方の手下に下ろして身体の横につけていなければならない。」
と定めています。

僕が審判をしている時に多く見かける動作として、投手のこのような動作があります。
右投げ投手が走者一塁の時に、投手板から軸足を外して一塁の方へ
振り向きます。
この時、投手は目だけで一塁走者をけん制していますが、送球する動作はしていません。
つまり、軸足だけは外したものの、手は体の前にあるか両手を合わせたままの姿勢です。
この姿勢から手を下げることなく再び軸足を投手板に置く動作をするわけですが、これがボークであるため、軸足が投手板に乗った(触れた)時点でボークを宣告します。

正しい動作としては、目だけで一塁走者をけん制して実際には送球をしていなくても送球のフリをしていなくても、投手板を外したのであれば、
一度手を体側に下げてから軸足を投手板に乗せ(触れ)、その姿勢からセットポジションの姿勢に入るということです。

◇ ボールをグローブから投げ手に持ち替える

これも見かけることの多い動作ですが、
グラブの中にボールを持って投手板の上に軸足を乗せるタイミング、
或いは捕手からのサインを確認した後で体の前で両手を合わせるようにしてグラブの中のボールを投げ手に持ち替える投手です。

野球規則を見る限り、投手板を踏んでいる状態から体の前でボールを持ち替えてはいけないという規定はありません。
しかし、審判からも走者からも、その持ち替える動作が『セットポジションに入った』 ように見えるのです。

非常に紛らわしい行為なのでできるだけ投手板に足を乗せる前の段階で投げ手にボールを持つか投手板に触れたら持ち替える動作をせずに体の前で両手を合わせてセットポジションの姿勢をとるように指導していただきたいと思います。

◇  投手板に触れて球審の『プレイ』を待つ

試合を開始する時、或いはファウルやタイムの後で試合を再開する時、必ず球審の『プレイ』 が宣告されてからボールインプレイであることは皆さん既にご承知のことと思います。

では、球審が 『プレイ』 を宣告するためには何が必要かということですが、守備側の選手(野手)が捕手を除く全員がフェアゾーンに位置していなければなりませんが、もうひとつの重要なこととして、投手がオンザラバーでなければいけません。
つまり、投手が投手板に軸足を乗せているか触れている状態でなければ、
球審はプレイを宣告することができないのです。

ですので、投手は投手板に触れずに、投手板を跨いで球審による『プレイ』
を待つのではなく、必ず投手板に触れて『プレイ』が宣告されるのを待たなければなりません。

時々見かけるのですが、投手が投手板を跨いで立っているのに球審が気付かずに『プレイ』を宣告してしまったような場合、
これに気付いた塁審がすぐに試合を止めて再度投手板に触れるところから試合を再開するということも出てきます。
(投手板に触れずにプレイが宣告されてプレイが発生してもそれは無効)

◇ 慣れていない投手への対応

小学生の試合、審判経験の少ない人が審判をする試合では、必ずしも投手の作法、投手のルールを厳格に守らない(守れない)場合があります。
特に選手の側もあまり投手を経験したことがないような場合に、野球規則を
厳格に適用してしまうと野球にならないなどということはごく当たり前のようにあります。
また、審判の側もあまり慣れていない人がやる場合には、厳格にしたくても
まだ野球規則に習熟していないのであれば厳格にしようがありません。

ですので、小学生(特に低学年)の場合は、選手の経験レベルや技量、
審判の経験度、習熟度に応じて投手への規則適用を柔軟にすれば良いと思います。
単に「ボークを適用しない」のではなく、その場はプレイを流しておいて、
イニングの合間に指導をするとか、試合後の反省打ち合わせをする時に
4審で話し合うなどを行い、次の試合、今後の試合に活かすようにすれば良いと思います。

ただ、学童野球、少年野球と言っても、チームによって実力の差はかなりありますので、例えば県大会に出場する、全国大会に出場するというような6年生のチームだったりすると小学生と言えどもかなりレベルは高いです。
そのような試合では、
「地域の大会ではボークをとられたことがなかったのに・・・」
ということが多くあります。
これは県大会、全国大会が厳しいのではなく、
ボークを指摘されなかった地域での大会の審判が緩かったのです。
そんなこともあるので、小学生だからこそ臨機応変に野球規則を適用すれば良いのですが、
選手やチームのレベルを考えて、適用すべき時にはしっかり適用するということも念頭において審判を務めたいと思います。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?