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HPVワクチンと子宮頸がんリスク


HPV vaccination and the risk of invasive cervical cancer
NewEngl J Med 2020 Oct 1;383(14):1340-1348.
方法:スウェーデン全国統計で2006年から2017年まで、10~30歳の167万人の女性を追跡。ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種と子宮頸がんにかかるリスクを評価。
結果:子宮頸がんと診断された女性は、4価HPVワクチンを接種した群では19人、接種しなかった群では538人。31歳までの子宮頸がんの累積発生率は、ワクチン接種群の女性では10万人あたり47例、ワクチンを受けていない女性では10万人あたり94例。様々な条件を揃え、接種時の年齢で調整すると、子宮頸がんの発症リスクは、17歳以前にワクチン接種を受けた女性は、受けない人より0.12と9割近く少なく、17~30歳でワクチン接種を受けた女性でも0.47と半分近くの発症率でした。
ここからは補足です。
 表のオレンジのラインはワクチンを打たなかった女性の子宮頸がんの発生率、水色の破線は17歳から30歳でワクチンを打った女性の発生率、緑の点線は17歳までにワクチンを打った人の発生率です。特に17歳までの早期にワクチンを打つことで、子宮頸がんにかかるリスクを大きく抑えられることが分かります。
 今まで、ワクチンを打つとHPVの感染を抑えられることや、異形成という前がん病変を減らすことは知られてました。でも感染から発がんまでの期間が長いこともあり、実際に子宮頸がんの発生まで減らすという直接証拠は、強いデータが無かったのです。今回は大規模かつ長期に追跡することで、発がんを抑える効果をキレイに見ることができました。
 今の日本のHPVワクチンの接種率は1%以下と先進国では最低レベルです。副作用報道の影響が大きく、厚労省も「積極的な勧奨の差し控え」という状態を続けているためです。女性が子宮頸がとなる割合は132人/1万人、失神を含めた接種に伴う重い副反応は5人/1万人。でも大規模研究でもプラセボ群と有意な副反応の差はありません。
 すべてのワクチンにおいて接種のリスクは0ではありませんが、HPVワクチンに関しては、過剰に接種が控えられている現状があります。今回メリットがより明確になったと感じます。小6から高1の女子は無料で接種可能です。3回接種ですので、高1の9月までに打ち始めれば3回全部が無料で受けられます。定期の時期に打つことで、子宮頸がんの発生リスクはより確かに減らすことができます。
 まずはワクチンの存在を知ること。こんなワクチンがあるの知らなかった、と後悔されるのは辛い。
 当院でもHPVワクチン、積極的にオススメしてます!

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