@20年後へ #XR創作大賞

--本日は2045-2046CX、ネクサスリーグDIVISION1男子、代々木大会にお越しいただきまして誠にありがとうございます。
このあと午後2時から渋谷ダークネスと筑波エクスぺリメンツによる試合を行います。
渋谷ダークネスのホームゲームとなります。試合開始まで暫くお待ちください。

会場アナウンスが新代々木体育館に響く。


旧時代のe-sportsで一山当てた選手が立ち上げた新しい事業、CX。
それはフルトラッキングをした選手6人対6人における、ロボットアッセンブル&タクティカルシューターである。
膨大なパーツの中から決められた時間で決められたコストの中、自分の身体を作り、カスタムした銃を使い3次元的な機動で縦横無尽に戦う。
ブースト要素もあり、遥か上空へ飛び上がったり、戦術要素が膨大にあり刺激的だった。
最初は子供の遊び扱いをされていたのだが、今では企業対抗戦、プロリーグの設立、個人ストリーマーの多数輩出、それ専門のアイドルまで産まれてオンライン配信ではプロスポーツ中継の花形になるといった様子である。
中でも渋谷ダークネスは変わったチームで、今でこそ全く珍しくないものの設立当初から監督を含めた全員がVTUBERという異色の集団だった。
私もまた、その中のプレイヤーとして存在していた。

一方の筑波エクスぺリメンツ。
創部は2030年、ホームは茨城県つくば市。科学の力だ、をコンセプトとしアスリートと技術の両立をモットーとし数々のタイトルを獲得し、数々の武器の弾速までしっかり覚えている超鉄人。
元五輪選手がチームのコーチに入り、今シーズン快進撃を続けているというニュースは話題になり久しい。

<--やれるかねぇ?>
<1on1のフィジカルじゃ無理っしょ、渋谷の方はみんなゲーマーなんだしさ>

視界の隅でオーバーレイをさせてある、公式配信。
運営の配慮でサポーターそれぞれに2チーム分のチャンネル分けがしてある、運営公式の実況配信のコメントが流れていった。
気分晴らしにそれを見ながら、渋谷チームのゲート傍に筐体に入っている新人1年目ーーそれが今の私だ。

一つ階級が下のリーグから這い上がってきたものの、プロの世界の強さに正直怯えてもいる。

「サポーターも好き勝手言ってくれて、どうすりゃいいのさ」
「やるっきゃないって、新人。ワシらがどうせ勝つしかないっしょ。それよりリフトオフまでもうちょいだから準備は出来てるかい?」
先輩が、声をかけてくれる。
「何度やっても、自分の顔が会場内でLEDでドアップになるのって慣れない。私もVTUBERだからってアイドルな訳じゃないんだから」
「いいじゃんよ。ワシも本業はエンジニアだって。ゲームプレイヤーになって、格好よく取り扱ってくれんのなんて夢みたいだし。副業さまさま、サイトでインタビューも載って登録者数も増えて万歳だよ。
ファンも付くしな。これで勝ったらシュラスコ連れてってやるから勝とうな。監督の指揮を信じて、やるっきゃないのよ」

シュラスコ……肉。
おいしい肉なんて、数ヶ月食べてない。
頑張らなきゃな。
そう決意をしたところで、大きなホーンの音が鳴った。



【これより、選手入場です!!!】

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