地域ブランドをデザインする
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅰ 第3回(2020年6月1日開催)雨上株式會社代表である平井俊旭さんの講演を聴講した記録を残します。
「雨上株式會社」代表 平井俊旭さんは、武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科卒、同研究室助手を経て、インテリアデザイン事務所(株)SUPER POTATOに勤務。その後に2001年(株)Smilesに入社し、創業期より「Soup Stock Tokyo」のブランドづくりに携わられていました。インテリアデザイナーとしての抜群の実力を持ちながら、デザイナーが異分野で何ができるかに挑戦して、「スープストック東京」の創業時から、経理(小口現金管理のアルバイト)をはじめ、デザインの全てを担当されていました。これまで一貫して、日本の地方にある価値を見つけ出し「人やお金を循環する仕組み」を作る仕事をされています。
Soup Stockのデザインワークにおいては、国産のFSC(森林認証)の木をどのように使うかにこだわり、フローリングの廃材の活用など、必ず国産の木材を使った店をつくっています。気にこだわりを持つ姿勢を全社的な取り組みとして植え付け、組織文化も含めてデザインされているなと感じました。
(参考)
https://shitte-erabo.net/ikasu/2497/
シンプルにデザインされて、どういう背景でスープをつくったのか?がわかりやすく伝えられたレシピ本
https://www.soup-stock-tokyo.com/story/recipeforyou/
そして、2014年スマイルズから一部出資を受ける形で、雨上株式會社を設立し独立。その後自らのブランドを、滋賀県高島市で立ち上げて、地域のデザインを実践しています。高島市を選んだのは、「都市部に近いけれど、まだまだ手付かずの場所」を探していた時に、知人を通じてたまたま出会ったとのこと。そして、その多様な地域資源のブランディングを図り、交流人口や定住人口の増加を目指す活動をされています。
そもそも認知度がとても低い状態からスタート。「高島市って〇〇なところだよね!」という共通のイメージを持ってもらい、高島市のファンになってもらう、ブランディングには長期的に大きな構想を持つことが大事だということ。
地域ブランディングのプロジェクトで特に重視したことは以下の5つだという。
1. 小さく数多く続ける→HPとFBで連載記事を掲載する
2. 同じ視点で見て話す→リアルであること、コンサルVS住民ではなく、住民と住民としての視点で
3. 共感のネットワークを創る→ハンカチ理論(全員が均等に引っ張るのではなく、真ん中をつまんで持ち上げる)
4. 集めて編集する→魅力の最大化、外からの視点で「中の人の当たり前」のバイアスを壊す
5. いろいろな手段を重ねる→同じテーマを異なるメディアで伝える
現在は、次世代漬物「10% I am」という発酵食のブランドの立ち上げて、腸内環境を活性化させる、菌にとっていい環境を作ることをテーマにしている。
https://10iam.shop/
今回の講演を聞いて特に印象的だったのは、ブランドに対する考え方。
ブランドとは、顧客からの信頼を得ている商品やサービスのイメージの総和であるということ。他者が感じていること、伝える工夫/ストーリー性、コンセプトやクオリティ、デザイン性/感性に訴えるフックが必要不可欠で、その代表的な事例として高野山を挙げていたのが印象的でした。地域デザイン、プロデュースしていくためには、長期的な視点を持ったブランディングへの取り組みが最も大事だという点で、デザイナーとして領域を決めず、トータルにプロデュースしていく姿勢がしっかり生かされているなと、とても学びの多い講演でした。
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