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長編連載小説「クラリセージの調べ」

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「澪標」鈴木澪の妊活編です。
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#妊活

連載小説「クラリセージの調べ」2-1

   結翔くんは、毎朝6時半に起床し、疾風のように身支度と朝食を済ませ、7時に家を出る。私…

may_citrus
6か月前
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連載小説「クラリセージの調べ」2-2

 キッチンの小窓から、幼稚園の制服を着た皇太郎くんが玄関に駆けて行くのが見える。車をオー…

may_citrus
6か月前
78

連載小説「クラリセージの調べ」3-1

 2週間後にようやく予約が取れた不妊治療外来は、待合室のソファが埋まるほど混みあっている…

may_citrus
5か月前
82

連載小説「クラリセージの調べ」3-2

 風呂掃除用のゴム靴を履き、バスタブと壁をシャワーで洗いながら、瑠璃子のことを考える。 …

may_citrus
5か月前
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連載小説「クラリセージの調べ」4-1

 結翔くんと私は、年始の挨拶のために、体温を測ってから、不織布のマスクをつけて私の実家を…

may_citrus
4か月前
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連載小説「クラリセージの調べ」4-4

 聞きなれた雀の声が一日の始まりを告げる。ベッドに横たわったまま、枕元に右手を伸ばす。一…

may_citrus
3か月前
83

連載小説「クラリセージの調べ」4-6

 私を心配した瑠璃子とすずくんが、美味しいものを食べようと誘ってくれたが、気が進まないまま時間が経ってしまった。外に出ると、幸せそうな親子が目に入ってしまうのが辛く、プチ引きこもり状態になっていた。  二人に会う気持ちになったのは、無事に次の生理が来て、三度目の人工授精を終えてからだった。  すずくんが予約してくれた料亭は、完全個室の店だった。廊下には、水仙や桜が飾られていて心が和む。お座敷に落ち着くと、高級旅館の夕食を待つように贅沢な気分になる。障子を通して注ぐ陽が明る