マガジンのカバー画像

長編連載小説「クラリセージの調べ」

59
「澪標」鈴木澪の妊活編です。
運営しているクリエイター

#LGBT

連載小説「クラリセージの調べ」3-9

※ 治療シーンは一例です。治療については、専門医にご相談ください。  朝日がほんのりと差…

may_citrus
4か月前
73

連載小説「クラリセージの調べ」3-10

 雲間から覗く午後の陽は、午前の疲労を吸収したように濁っている 。濃度を増した沈黙を破る…

may_citrus
4か月前
66

連載小説「クラリセージの調べ」4-3

 スクリーンのなかで、上品な身なりの英国人の男女が、モーツァルトの音楽に合わせて優雅に踊…

may_citrus
4か月前
83

連載小説「クラリセージの調べ」4-7

「どういうこと……?」  例え話なのか、事実なのかわからないまま、瑠璃子の赤らんだ瞳を凝…

may_citrus
3か月前
82

連載小説「クラリセージの調べ」4-10

 帰ると言い張る私を心配し、すずくんがケーキショップに併設するカフェに連れてきてくれた。…

may_citrus
3か月前
71

連載小説「クラリセージの調べ」5-5

 瑠璃子とすずくんの意見が聞きたいので、新しくできたスペインレストランに集まってもらった…

may_citrus
2か月前
72

連載小説「クラリセージの調べ」5-7

 残暑が落ちつき、風が爽やかになると、私は年末に迫る看護学校の入試への焦りから、母屋の手伝いと距離を置いた。9月に皇太郎くんの幼稚園が始まり、絹さんと義父母が赤ちゃんを中心に回る生活リズムに慣れ始めたことがそれを可能にした。  夫を父親にしてあげたい思いはあり、移植に踏み切るべきだとわかっている。だが、夫と裕美の密会現場、市川家への複雑な感情と瑠璃子の警告が幾重にも絡み合い、逡巡を続けている。治療に気持ちを向けようとしても、何年も授かれず精魂尽きたとき、自分に何が残るかと想