じゃぱねっとアドカレ企画のアレ
やぁみんな来てくれましたか!
クソデカ感情をアホみたいに抱えた僕に付き合ってくれて本当にありがとうございます。
アドカレでは推しとの妄想SSでも書くので読んでってください(ここでもクソデカ感情をぶつける顔)(限界オタクの形相)。
『陽が沈むまで』
夏は陽が長い。ちっとも傾かない。傾いてもずっと昼のままだ。
僕は夏が嫌いだった。
あのジリジリ照る太陽は地球に恨みでもあるのだろうか、人類を焼肉にしてしまうくらい照りやがる。
それだったらば、秋の方が好きだ。手が届かないくらいに空が高く思えるから。
授業が終わり、特に何もする事のなかった僕は、教室から外を眺めていた。日中は暑いので日が暮れてから帰りたいのだ。
下校時間をとうに過ぎている。すると、どうなるか。
教師らが戸締り確認をしに来る。しかも誰が来るか分からない。そう、ランダムなのである。脳筋体育教師なんかが来てしまうともう勘弁なのであった。
いつまでいるんだ、さっさと帰れ。
それがお決まりの言葉であった。誰であっても。
聞き飽きていた。僕だって好きで残っているわけではないのだ。無論、教師も好きで見回っているわけではないのだろうが。
帰ったって、誰もいないのだ。何も無いのだ。だったら此処で、誰かが来るのを待っていた方が良い。
──どうせまた今日も苦手な世界史の先生が来るんだろうな、あの人ネチネチしているからな。
ふぅ、と息を吐いた。これが冬なら煙草の真似でも出来るのだが。
すとすと、すとすと。
この時間にしてはあまり聞かない、珍しい足音が此方へ向かってきているのを僕は感じた。毎度毎度の事なので、足音の主が分かるようになっていた。が、それにしても今日は誰だろうか。
僕は身構えた。また言われる。
足音が止まる。ドアが開く、か?
とんとん。
思わずドアを凝視した。どの教師も大概ノックなんかしない。
なかなかドアを開けようとしない。それにしても誰だろう、視線を上げると、見慣れた顔。
その人はにっこりと笑うと、漸くドアを開けて入ってきたのだった。
「──先生、」
足音の主は、古文の先生だった。
先生は、帰れとは言わなかった。
かと言って他愛の無い話をするわけでもなくて、ぽつりぽつりと互いに交わす程度だった。
先生の顔は、見れない。吸い込まれそうな慈愛の目の色をしているから。
授業中もその慈愛を、僕を含む生徒らに向けている。だからその時目が合いそうになると、僕は決まって目を逸らしていた。
でも今は違う。先生の向ける対象は僕しかいない。目を合わせるしかないのだが、そういうわけにもいかない。かと言って、あからさまに目を逸らすわけにもいかなくて。
だから、先生の背広の、肩の辺りをじっと見ている。
胸ポケットには、ペンが差さっている。
視線だけ上にやってみる。目が合うのだろうか。
──合わなかった。先生は窓の外を眺めていた。
放課後の青空が、先生の眼鏡に映っている。夏は嫌いだが、この空の青さをこうして近くで見られるなら、嫌いではない。
「──四ノ宮くん、」
一瞬だった。青色が照る眼鏡越しの目が、僕を捉えた。
ばちん。目が合った音がするなら、きっとそんな音なのだろう──心臓も一瞬だけ止まった気さえした。
「はい」
上擦った声しか出ない。あまりにも情けない声が恥ずかしく、俯いた。
だがその俯く直前に、僕は見た……優しく笑む目を。
夏も悪くないのだろう。
僕は、四ノ宮航丞。来年二年生になる。
放課後に 向かい合っても 下向いて
ずっと見ている 息する肩を
了
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