【中年学生日記 6】 大学入学

2021年4月末。

既に願書を提出していた自分はその合否の返信を待っていた。

通信制大学は受験はないとはいえ、何せお笑い芸人という特殊な職業、下手すると大学の品位を下げかねないと捉えられ、入学不可の烙印を押されてしまうことだって考えられなくもない。

顔を上げられないような恥ずかしい笑いをしてきたつもりはないが、品位が下がらないかと聞かれれば堂々と下がりませんとは決して言うことなどできない。

股間にタバスコをたらして警察犬から逃げ回ったこともあれば、肛門を蝋で塞いで便意と対決したこともある。

そんな心配は杞憂に終わり、ついに入学許可の通知書と学生証が自宅に届いた。

僕は38歳で大学生になった。

僕はその学生証をTwitterにあげ、大学生になりましたとつぶやいた。

瞬く間にバズっていく中、現役日大生からの反応もちらほら。

まずは落語研究会の生徒から、お笑いサークルに入りませんかと誘われた。

昨今、学生芸人と呼ばれ、大学お笑いサークル出身のプロの芸人もかなり増えた。

そんな令和のメインストリームである学生芸人という肩書きを芸歴20年オーバーの38歳が掲げられるかもしれないのは思ってもみないことだった。

聞けば大学芸会という、お笑いサークルがバチバチにやり合うイベントもあるそうなので、学生芸人となった今、どこかで出場できる機会を窺っていきたいと思う。

そして僕と同じ日大の通信制の方にもたくさんフォローしていただいた。

最初このフォローというのは冷やかし半分なのかな、などと思っていたがそうではなかった。

これは後になってからわかったことだが、通信制は通学制と比べてとても孤独である。

ある程度の手引きはあるものの、基本自分で卒業までの道筋を作らなければならないし、大学側の情報が少なかったり、説明不足な部分もあり、その部分での不安は常に付いてまわる。

そんな時の情報交換と心の拠り所をTwitterに頼る人が多いし、僕も今ではその内の一人だ。

だからアカウントに日大通信と書いてあれば同志発見と言わんばかりに即フォロー。

中にはどこよりも的確な情報を載せている方もいたりして、信頼を集めていたりする。

そして同時に不安からくる孤独を癒す場にもなっている。

きっと卒業するまで僕はどっぷりここに浸かるし頼ることにもなるだろう。

こうして日大に入学したことを公表し、後には引き下がれないようにした。

途中で辞めるとかっこ悪くなるようにしとけば、モチベーションが下がっても気持ちが折れるまでには至らないのではと考えた。

さあ、今晩から勉強をコツコツやって単位をガンガンに取っていくかと思った矢先に気づいた。

あれ、単位ってどうやって取るの。

あと教科書ないねんけど。

早速気持ちが折れかけた。



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