M-1は大衆向け感動ポルノなのか?【M-1グランプリ2021】

M-1グランプリというブランドは20年(4年間の熟成期間を含め)をかけて完成されてしまった。おそらくミルクボーイがたたき出した最高得点を破ることは今後無いと思われる。2020と2021の決勝進出者の得点に開きがあまり無い事がそれを物語っている。インターネットの普及は衰えることが無く、YouTubeも使いやすい物へと日々進化し続けている。M-1グランプリ公式も昨年からギャオと平行してYouTubeに動画をアップすることで予選から視聴者を巻き込んで大会を盛り上げ易くなった。無料でコンテンツが楽しめる様になることは視聴者にとっては有り難い事であるが、出場者としては大きな痛手であると考えられる。ネタバレを恐れず強いネタで勝ち進む必要がある。

今年は(結果として)非吉本所属が全体の半分を占める決勝となった。盲信的なお笑いファンとしては非常に感慨深いメンバーであっただろう。そして、見事優勝を勝ち取ったのはソニー所属の錦鯉。最年長、最長芸歴での勝利となった。他事務所での優勝はサンドウィッチマン(当時フラットファイヴ)以来の功績となる。現状のお笑い賞レースでは最も優勝の効力の強さを誇るM-1を獲った43、50の中年芸人が今年、どのように活躍をするのかが楽しみである。体調を崩さないことが何よりの願いだ。


等とここまでが偉そうな記事風に書いて見ました。以降は個人的な意見をまたもや偉そうに綴ります。ちなみにM-1後のこぼれ話などは「反省会」「打ち上げ」「やすとものいたって真剣です」「マヂラブANN0」「アナザーストーリー」しか見ていません。


以前、決勝の順位をnoteで予想しましたが、見事に全て外しました。ただ、ランジャタイの9位予想以外は笑神籤次第では当たっていた可能性も有り得ます。(などと強がっておく)


相変わらずM-1は初めの40分を煽りに使うゆとりのある番組です。開始20分くらいで「R-1ならもう捲いている」というツイートを目にし、笑いました。マヂカルラブリーのファンとしては、今回の演出は見物です。ただ、タイトルにも記していますが、この時点ですでに今大会で誰が優勝しようとなんとしてでも感動を作りだそうという意志を制作側からにじみ出ているように感じました。ただ。M-1の発案者である長谷川氏は感動することに力を入れていた印象が強いのでその意志を踏襲していると思えば納得も行きます。


審査員の登場シーンは割と格好良く、且つソーシャルディスタンスや生放送上のカメラワーク等の都合にマッチしていて良かったと思います。志らく氏がセンターなのは良いですね。落語家は真ん中にいないと収まりが悪いです。

司会は今田氏と上戸氏。相変わらず衰えを見せない上戸氏。そしてツイッターでは目にしませんでしたが、今回今田氏のMCがあまり調子良くなかった印象を受けました。時間が押していたのか各芸人とのやりとりが中途半端だったように感じます。


笑神籤をアスリートが引くという下りは、2019ではとてもテンポが悪く、2020で無くなったのかと思われましたが、今回復活。テンポは改善されていたので、今回通りであれば次回も続投で良い気がします。


【モグライダー】さそり座の女 ⑤(個人的順位)

ともしげ氏が空回ると考え最下位に予想していました。せり上がりで緊張した様子を強く見せており、恐らくネタも一部間違っていた様に感じましたが、歴代トップ最高点を叩き出しました。次点がナイツでその差は3点。年々点数がインフレしやすくなっている傾向がありますが、トップ、(世間的には)無名、非吉本、非正当派という点を考慮すると今大会の功労者はまさしくモグライダーだと思います。


【ランジャタイ】風猫 ⑥

「志らく氏が高く評価し、最下位にはならない」と予想しました。志らく氏が評価するという予想は当たりましたが、大会終了後も1週間程ランジャタイについてツイートする程沼に嵌まるとは想像はしませんでした。

何となく決勝に出るとツイッターが賑わうと予想していましたが、想像以上に将棋ロボのファンアートが多く、優勝と同じくらい価値のあることだと思います。ネクストブレイクと思われますが、アメトーークやロンドンハーツで跳ねていない様子を見ると大衆受けの道は険しい予感がします。返ってEテレなどの子ども番組の方がハマり役の様な気もします。

6位と評価していますが、今のところダントツでYouTubeを再生させていて、見れば見るほど面白い漫才なので結果として個人的に1位でした。優勝おめでとう。

そしてこちらも歴代最下位の中で最高得点だそうで。モグライダーの恩恵を受けた印象です。2番手ということもあり、暫定席にも座り、巨人のパネルを出すことも出来、運の良さを発揮したのではないでしょうか。

ネタ終わりの音声ミスも笑えるので良いと思います。(シミュレーションはしていたのであろうか)


【ゆにばーす】男女の友情 ⑧

インディアンスと出る順が逆だった場合、彼女らが優勝していた可能性もあったと思います。名人ももう少し気楽に漫才が出来たのではないでしょうか。どうしても国崎氏が巻き起こした空気を整える役割でとどまってしまった印象です。

本人も気にしているでしょうが、ネタバレに弱いネタなので、繰り返し見たいという意欲に繋がらないからかYouTubeの伸びが悪い気がします。本人にとっては舞台でやりやすいでしょうから良いのでしょうが。

記者会見で仰っていた通りの「ここから先は運」という言葉通りの結果となりました。来年も充分勝ち目はあると思います。


【ハライチ】癇癪 ⑨

敗者復活で印象悪いまま勝ち上がってしまいました。タイムオーバーに寛容な国民でした。

そして、なんと決勝でも大幅に4分を超えており、ラストイヤーだから吹っ切れている様な印象を受けました。もちろん悪印象です。

ネタも安直で、分かり易く、一辺倒、裏切りをあまり感じない。結果的に上沼氏がおかしいという状況を作らせてしまいました。腐り芸人()とは思えない程さわやかな敗退コメントをもって勇退。こんな事をするくらいなら出場しないで欲しかったし、金属バットを決勝で見たかった。


【真空ジェシカ】一日市長 ③

普通に面白かったけど、過去ネタに比べるとやや弱い印象。準決勝の配信を見ていないから比べ様がないのだけれど、笑いどころを逃すことは無かったけれど客の心まではつかめなかった印象。ツカミの「カウントダウンTV」がやや不発に感じた。

オズワルドレーンで後2年は連続決勝行けそうなので大期待です。IPPONグランプリとかにも出て欲しいな。二人とも大喜利が強いのが広まって欲しい。


【オズワルド】友達 ②

面白かった。が、昨年からの変化は余り感じない。おそらくこれが認知度や実績によるウケ量の加算なのだと思われる。

ネタが枯渇したらしいので、来年も決勝に上がれるか不安なところ。

準決勝まで這い上がれば敗者復活は確実に手にできるでしょう。

準々だとほぼ確実にワイルドカード。


【ロングコートダディ】ワニになりたい ①

個人的に1番面白かったです。審査員に指摘されていたとおりコントから抜けずに漫才が終わっていたのは、マヂカルラブリーが考察していた「どこまでが漫才か」にやや抵触。各審査員があと1点ずつ入れていればファイナルに進めたと思うと面白かっただけに不憫。

っていうか生まれ変わったらワニになりたいって何だよ。って思うと笑いの余韻が長い。


【錦鯉】合コン ④

私も同じく「穴は掘らないよ」が伏線だと思っていて頭の片隅に起き続けてしまった。この下りが墓穴を掘っていたという皮肉。個人的には昨年のパチンコの方が爆発していた印象。そして松本氏は若くしてブレイクして女には困っていなかっただろうから合コンの経験はなかったのではないだろうか。


【インディアンス】中身の無いギャグの羅列 ⑩

オチだけ思わず笑ってしまいました。悔しい。

それ以外は全部頭に入って来ませんでした。ただ、これぞ大衆向けの“お笑い”なんだと思います。インディアンスを面白いと感じないけれど、これを面白がる人の感性を疑うことはしません。こういう陽気なごり押しのギャグで楽しめるならそれは幸せだと思います。ただ、その人生ってお笑いを見なくても日々笑えて楽しい物なのだと考えています。


【もも】欲しい物 ⑦

前半の「ずれてます?」「ずれてますよね?」の掛け合いがテンポの悪さを作っていると感じました。お互いの容姿をなじり合うという設定は「ずれてる」というワードを出すまでもなく客に伝わると思います。

そしてよくよく見ると2人ともあんまりずれてない顔なんですよね。来年は違うフォーマットのしゃべくり漫才が見たいと思いました。


M-1の決勝が10組になってから客が疲れるのか10番手が不利になっている印象があります。



【インディアンス】もはや何をやっていたのか覚えていない ③

もう中のところだけちょっと笑いました。悔しい。

上沼氏はどんな出来でも彼らに入れると思っていました。巨人も入れると思っていたのですが、以外でしたね。


【錦鯉】サルを捕まえたい ①

最終決戦で放尿をすると優勝できるというジンクスが生まれていそうです。

前半結構痛々しかったのですが、森に逃げた時の諭すようなツッコミからバナナの天丼、老人を寝かせる伏線回収まで完璧な流れで笑いました。

もう少し割れるかと思いましたが、7票中5票獲得というのは荒れない塩梅の結果で良いと思います。


【オズワルド】割り込み ②

ゆにばーすと同じく、錦鯉が荒らした空気を整えるどころか飲まれてしまった印象です。後半の同時に喋るくだりが全く上手くいってなかったのが致命的でした。

巨人からの1票は大きいと思います。これのおかげで2位になることができました。


ラストはおじさんの涙につられて涙を流す審査員のおじさん2名。こうして感動に包まれて放送が終わったわけです。



制作の意図では一番感動を演出しやすい組が優勝出来て一安心だったのではないでしょうか。アナザーストーリーも作りやすかったと思います。2020のアナザーストーリーにも結構な尺を使っていた覚えがありますが、さすがの芸歴、まだまだ映像は沢山ありましたね。

個人的には優勝の瞬間、高揚はしましたが、感動はしませんでした。お笑いは楽しむものだという価値観を強く持っているので。アナザーストーリーも舞台裏の表情や予選の努力などをだらだら見せてくれればそれで良いのだけれど、変に感動路線にする必要はなく、せっかく大会で楽しんだのにちょっと水を差された気分でもあります。純粋に漫才の面白さだけを前面に押し出して欲しいものです。


反省会は小藪氏のMCのテンションの低さ、漫才師への関心の薄さが目立ちました。パネラーと同じくらい漫才に熱のある方にお願いをしたいところです。


打ち上げもやはり鎌鼬は労う器では無い様に感じました。2大会連続で9位になっており、その後も順位が振るわず、上京後しばらく停滞した後に大ブレイクというキャリアのある千鳥だからこそ成立していた企画。KOCを獲り、M-1でも松本氏から1票獲得し2位でM-1人生の幕を下ろした鎌鼬には少し不釣り合いであったと思います。来年はマヂカルラブリーとかどうでしょう。優勝後の1年、そして今年の1年で寄り野田氏の真面目な性格が認知されて、お笑いに対する誠実な姿勢も評価されて行きませんかね。


とりあえず、錦鯉さんおめでとうございます。

他6016組もお疲れ様でした。

来年も楽しみにしています。

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