青山凌

思いつくまま短編小説。息抜きと暇つぶしにぜひどうぞ😉美しい写真とイラストをお借りしてば…

青山凌

思いつくまま短編小説。息抜きと暇つぶしにぜひどうぞ😉美しい写真とイラストをお借りしてばかりの投稿です😻いいね頂けるととってもよろこびます😻😻

マガジン

  • 21世紀の資本主義とわたし

    "資本主義"っていう世の中と、そんな世の中を毎日普通に暮らしているわたし達の何気ない風景を短編小説にしました。

  • この恋は僕だけの

    恋愛短編集。

  • 季節に追い越されちゃう

    創作をめぐる物語

記事一覧

スターバックス同盟

「山井さぁ……」 と、彼女は正面で同じく黙々と作業に勤しむ彼に話しかける。話しかけられた方の彼はPCのディスプレイから目を離さずブラインドタッチも休めずに、答える…

青山凌
3年前
8

終わりの街

物心ついた頃から街はゆっくりと終わりへと向かっていた。 太陽はいつも午後4時の場所で赤く燃え、街一帯を焼いていた。その赤だけが不釣り合いなくらいに眩くて、長く伸…

青山凌
3年前
4

初恋の亡霊

浴室の鏡の向こう。サテンのワンピースを脱ぎ落とした私は、赤いネイルの爪先で新しい首筋の痕を咎めるように撫ぜた。傷が一つ付いたその肌を「真っ白で綺麗」と熱っぽく褒…

青山凌
3年前
2

piece of cake

「さて」 と、わたしは諦めてノートパソコンを一旦閉ざして、向かいに座る夫へと、向き直る。 「お疲れ様」 おそらく夫は、今日の分の日課が無事終了したのだと思ったの…

青山凌
3年前
3

うちの妹にはKindle Paperwhiteがよく似合う

今年も妹の誕生日がやって来たぞ。ということで、生誕15年目のお祝いとして、最近本好きを目指しているらしい妹へ、Kindle Paperwhiteを贈ることにした。そそっかしい彼女…

青山凌
3年前
3

人生はグルメを巡る

店先の赤提灯は営業中の目印。今宵初めて煤けた濃紺の暖簾をくぐった。いつも少しだけ開いた引き戸から垣間見ていた、魅惑の異世界。近所の小さなおでん屋は全七席程のこぢ…

青山凌
3年前
3

都会の駅で

スーツケースを引く僕の進む道に沿って、キャスターが滑らかに轍を鳴らす。深夜に近づくにつれ、街の気配が変化していく。ゆっくりと。広い広い駅のコンコース。家路につく…

青山凌
3年前
6

ゲーム実況Part1

ゲーム狂いの悪友は数ヶ月前からYouTubeに動画を投稿している。口が悪くて態度もデカい。でもエイムが抜群にいいので、流行りのFPSやTPSのスーパープレイ集と短い解説動画…

青山凌
3年前
1

恋の燃え殻

もしも。もしもの話。 あれは5年前のこと。新しいバイト先でよく面倒を見てくれた先輩の話。 書店員に似つかわしくない彼が、天井近くまで伸びる書棚へ丁寧に建築書を収…

青山凌
3年前
5

腐ってもメランコリーは蜜の味

安いチェーンの居酒屋で、狭いテーブル席にすし詰めになって、脚を崩すにも崩せずにどうにかマシな態勢を探していた。いかにも腐女子な女子大生と、同じく地味属性の大学生…

青山凌
3年前
8

sensuality

首筋に溶けた香水の残り香が流れ落ちていく。熱いシャワーが余計に身体を火照らせる。浴室の蒸した空気に、やるせなく溢れた溜め息が混ざって、頭の中では短い妄想の断片が…

青山凌
3年前
2

いつかパリに行ってみたいっていう時のいつかって、いつ?

「英語よりもフランス語のほうが耳に馴染むっていうか、抵抗感ないよね」 というまた唐突な一言から、今日も会話が始まる。とある会社の昼休み。アラサーアラフォーあたり…

青山凌
4年前
8

もういない未来の自分と、わたし

こんばんは。もうすっかりこんな時間です。おそろしいことに、新しいiPhoneをAppleストアで買うだけでこんなに手間取ってしまうなんて。わたしは予定就寝時間があと1時間に…

青山凌
4年前
8
スターバックス同盟

スターバックス同盟

「山井さぁ……」

と、彼女は正面で同じく黙々と作業に勤しむ彼に話しかける。話しかけられた方の彼はPCのディスプレイから目を離さずブラインドタッチも休めずに、答える。

「何」

「ちょっと聞いてもいい?文法」

「条件は?」

「数学の宿題、写させてあげるよ」

「……分かった、じゃあ10分だけ」

と、彼はようやく手元の作業を一旦休止し、彼女へと顔を向ける。やや痩せ型で小柄めの黒髪の彼は、ごく

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終わりの街

終わりの街

物心ついた頃から街はゆっくりと終わりへと向かっていた。

太陽はいつも午後4時の場所で赤く燃え、街一帯を焼いていた。その赤だけが不釣り合いなくらいに眩くて、長く伸びる影の黒と相まって、どこか世界のおしまいを予感させていた。家路へ帰り行く人々の群れが、砂と小石混じりのざらざらとした地面に連なって乾いた足音を鳴らす。労働者の影はいつもどこか寂しい。皆一様に顔がなく、無機質な足取りで溜息と別れを口にする

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初恋の亡霊

浴室の鏡の向こう。サテンのワンピースを脱ぎ落とした私は、赤いネイルの爪先で新しい首筋の痕を咎めるように撫ぜた。傷が一つ付いたその肌を「真っ白で綺麗」と熱っぽく褒めそやす彼の艶めかしい声色がずっと耳の奥で反響している。アルコールと疲労とが、気怠く身体に纏わり付く。汗が髪を湿らせて、額を這う粒はやがて泣いた後みたいにアイラインを濡らして滲ませる。僅かに震える心臓で、私は私を見つめた。魅力的な私。奴隷の

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piece of cake

「さて」

と、わたしは諦めてノートパソコンを一旦閉ざして、向かいに座る夫へと、向き直る。

「お疲れ様」

おそらく夫は、今日の分の日課が無事終了したのだと思ったのだろう。しかし残念ながらわたしが発したのは、そんな一区切りの「さて」ではなかった。お疲れ様に至るには、まだ前途は多難である。さて……。

「まだ終わってません。今日の更新分」

「そうか。じゃあプレお疲れ様」

かれこれ半月程は続けた

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うちの妹にはKindle Paperwhiteがよく似合う

うちの妹にはKindle Paperwhiteがよく似合う

今年も妹の誕生日がやって来たぞ。ということで、生誕15年目のお祝いとして、最近本好きを目指しているらしい妹へ、Kindle Paperwhiteを贈ることにした。そそっかしい彼女のために専用カバーもつけてやるべきかとも思ったが、凡庸な大学生男子が選んだデザインものの何かが華の女子高生を満足させられる自信はまるでないので、後日好きなものを買い足してやるということにした。妹は一週間前くらいからやたら「

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人生はグルメを巡る

人生はグルメを巡る

店先の赤提灯は営業中の目印。今宵初めて煤けた濃紺の暖簾をくぐった。いつも少しだけ開いた引き戸から垣間見ていた、魅惑の異世界。近所の小さなおでん屋は全七席程のこぢんまりとしたカウンターで大将の仕事場を囲っている。

とりあえず生で。

狭い空間に昭和の匂いがこれでもかと詰まっている。流れる歌謡曲に時代を懐かしむ。僕の幼少期は誰かの青春時代。見知らぬ隣の客に鳥刺しを勧められた。四十半ば程の彼と、牛の生

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都会の駅で

都会の駅で

スーツケースを引く僕の進む道に沿って、キャスターが滑らかに轍を鳴らす。深夜に近づくにつれ、街の気配が変化していく。ゆっくりと。広い広い駅のコンコース。家路につく人々は寝静まり、やがて旅人達が集い出す。どこへ向かうんだい?行き先は自由。無数の目的地をかざす電光掲示板は「ようこそ」「いってらっしゃい」「よい旅を」といつだって僕らを誘っている。

履きつぶしたスニーカーのつま先は早くも知らない土地の方角

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ゲーム実況Part1

ゲーム実況Part1

ゲーム狂いの悪友は数ヶ月前からYouTubeに動画を投稿している。口が悪くて態度もデカい。でもエイムが抜群にいいので、流行りのFPSやTPSのスーパープレイ集と短い解説動画を立て続けに投稿すると、すぐ右肩上がりにフォロワーが増えていった。賛否両論ありつつも、歯に衣着せぬ物言いがわりと人気の秘訣らしい。友人は言う。

「この、ここの箇所をマーカーみたいに囲って矢印つけたいんだけど、クソみたいにムズい

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恋の燃え殻

もしも。もしもの話。

あれは5年前のこと。新しいバイト先でよく面倒を見てくれた先輩の話。

書店員に似つかわしくない彼が、天井近くまで伸びる書棚へ丁寧に建築書を収める姿が好きだった。彼と同じ担当部門で、彼のもとで働けるのは単純に嬉しくて。4つの年の差はまるで魔法みたいに私を魅了した。手の届かない年上の先輩。目の前にいるのに高嶺の花みたい。絶対に埋められない深い深い溝の向こうで、彼は優しく微笑んで

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腐ってもメランコリーは蜜の味

腐ってもメランコリーは蜜の味

安いチェーンの居酒屋で、狭いテーブル席にすし詰めになって、脚を崩すにも崩せずにどうにかマシな態勢を探していた。いかにも腐女子な女子大生と、同じく地味属性の大学生男子とに挟まれて、正面にはニート上がりのフリーター。どうせこいつは来月には辞めてる。メモもロクに取れないから店長から早くも見限られている。それでも、こんな飲み会になんか参加しようってんだから、肝が座っているもんだ……と僕は早くも最悪な席順に

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sensuality

首筋に溶けた香水の残り香が流れ落ちていく。熱いシャワーが余計に身体を火照らせる。浴室の蒸した空気に、やるせなく溢れた溜め息が混ざって、頭の中では短い妄想の断片が短く白飛びして入り乱れる。今更幾ら考えても理想の関係なんてもう何も思い浮かばなくて。どれもこれも手慰み。便利で既視感のある設定で今日も何度か普通の恋愛ごっこをして、それでもかなり単純に気持ち良くなって、自分じゃないどこかの誰かに、赤の他人に

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いつかパリに行ってみたいっていう時のいつかって、いつ?

いつかパリに行ってみたいっていう時のいつかって、いつ?

「英語よりもフランス語のほうが耳に馴染むっていうか、抵抗感ないよね」

というまた唐突な一言から、今日も会話が始まる。とある会社の昼休み。アラサーアラフォーあたりの女性4人のグループで、毎日あれやこれやと日替わりで話題が飛び交う。今日はどうやら語学のお話らしい。カップ麺とおにぎりを交互にほうばりながら、事の発端である彼女は続ける。ちなみに彼女曰く、「英語は"はうわーゆー、あいむふぁいんせんきゅー"

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もういない未来の自分と、わたし

もういない未来の自分と、わたし

こんばんは。もうすっかりこんな時間です。おそろしいことに、新しいiPhoneをAppleストアで買うだけでこんなに手間取ってしまうなんて。わたしは予定就寝時間があと1時間に迫る中、それでも筆を取るのです。今のご時世、筆は取らずとも文字は打てるし、なにより打った矢先に世の中へ発信できちゃうのですから、大したものですね。筆も紙もいらない、これで最後に読み手がいてくれれば、わたしも立派な物書きですね。う

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